『現代思想』という雑誌について——『現代思想』の『君たちはどう生きるか』特集を読む(0)
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現代思想の『君たちはどう生きるか』特集について、紹介しつつ、特集についての感想&映画についての感想を喋ったダイアログです。
0〜5の全6回の記事に分けてお届けします。
(今回は前提となる第0回! この記事だけでも読めます!)
第0回『現代思想』とは?(この記事です)
第1回 自己模倣する宮崎駿
第2回 鳥と飛行機
第3回 『君たち』小説版とジブリ映画版の比較
第4回 『さみしい夜にはペンを持て』を『君たち』と読み比べると現代のことがわかる!?
第5回 保守的な思想の終わり
八角 本題に入る前に、『現代思想』が、そもそもどういう雑誌か、から説明したほうがいいね。
しぶ そこからやるんですね。
八角 というのは、昔『ユリイカ』という雑誌で「涼宮ハルヒ特集」があってね。当時、高校生だったか大学生だったか忘れたけど、父が買ったその雑誌が家に置いてあって、「ハルヒじゃん!」と思って読んだんですけど、何が書いてあるか分からなかったってことがあったんですね。『君たち』特集でも、それと同じことがどこかで起きているかもしれないので。
しぶ なるほど。雑誌『現代思想』は、いま名前が出た『ユリイカ』と同じく、青土社という出版社が出している雑誌です。一番シンプルな説明としては、毎号、テーマというか特集があって、色々な人が寄稿した文章が載っているものですね。
八角 『現代思想』は、研究者が多い印象だったけど、この特集号を見ても、アーティストとか、能師の方とか、いろんな人が書いているんだね。
しぶ 確かに、いつも内容的には学問的なものが多いんだけどね。比較対象として、論文集や学会の機関誌とかを考えるとわかりやすいかも。なんでもいいけど、◯◯学会が、◯◯学に関する論文を集めた雑誌を出したりする場合は、研究者が、研究の文脈で参照することを目的に雑誌が作られているわけですね。
八角 そうだね。
しぶ それとは違って、『現代思想』はあくまでも出版社が作っている雑誌なので、つまり一般読者が、広い意味での「読み物」として読むことを想定して作られている。
八角 以前に新刊紹介として、「計算」特集(2023年7月号)を扱ったことがあったけど、えらい難しかったよね。『ユリイカ』にしても『現代思想』にしても、なんか難しいんですよ。
しぶ とはいえ、内容的に難しい場合でも、想定読者は研究者とかじゃなくて、一般読者だよね。そういう点では、岩波書店が出している『思想』も近いかもしれない。テイストは違うけど。『思想』の方がもっと学術っぽい雰囲気だけど、あれも実は出版社が出している雑誌ですね。
八角 出版社が出していると、何が違うんです?
しぶ 出版社が「今の時代、こういうことを考えていかないといけないですよね」と企画して、特集を組んで、そのテーマに合った書き手の人に頼んで書いてもらう。だから、内容的に難しめ・学問的であっても、研究の文脈で作られた論集とは違う。「今、こういうことが問題で、考えないといけないですよね」という視点で編集されている。
八角 なるほどね。『現代思想』は、かなり昔からあるんだよね。
しぶ 1973年創刊ですね。初期の特集テーマを眺めると、マルクス、フロイト、言語、貨幣……このあたり見ると「ザ・現代思想」って感じですね。創刊号は、中村雄二郎が寄稿していたり、デリダの論文が訳されていたり……。あ、第3号で蓮實重彦が登場してますね。
八角 初期は、柄谷行人・浅田彰とかも寄稿していた、つまりニューアカの系譜にも関係する雑誌なんですよね。
しぶ いま読むと、必ずしもそこまで歴史は意識されないと思うけど。今は、社会問題をそのまま扱うような特集も多い。2023年の特集を見ると「〈投資〉の時代」(2月)、「カルト化する教育」(4月)、「フェムテックを考える」(5月)、「裁判官とは何か」(8月)……。
八角 今はもう、オーセンティックなものは、あまり扱っていないのかな。
しぶ それはそれとして、共通のテーマに対して色々な分野の人に語ってもらうというのは読んでいて楽しいし、勉強になりますね。本1冊だけなのに、同じテーマの本を何十冊も横断読みしているような感覚になる。なんというか、いろんな役割を1人(?)で担ってる感じのある雑誌だよね。
八角 『君たち』特集はその中でも、「臨時増刊号」なんだよね。
しぶ そうそう。さっきの特集テーマからもわかるように、毎月のレギュラーの号は一般名詞で括られるようなものが多いんだけど、年に何冊か出る「臨時増刊号」は、「カフカ」(2024年1月)とか「平田篤胤」(2023年12月)とか、特定の人物や作品の特集も多い。より限定されたテーマに集中する感じで。今回扱う『君たち』特集も、そういう「臨時増刊号」です。
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