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アニメ界の総力を結集したThe Best of お尻「楽園追放」

今回は、映画「楽園追放」について書いてみたい。
これ、SFアニメとしてめちゃくちゃ評価高いんだよね。
確かに私も、非常によくできてると思う。
それもそのはず、制作スタッフがめちゃくちゃいいんだわ。

監督/水島精二(「ガンダム00」「鋼の錬金術師」)

脚本/虚淵玄(「まどか☆マギカ」「Fate/Zero」)

演出/京田友己(「エウレカセブン」)

モーションアドバイザー/板野一郎(「マクロス」シリーズ)

アニメファン的には、まさに夢の競演である。
原作がニトロプラスということで、まぁ半分は虚淵玄の作品といってもいいだろう。
あぁ、なら鬱展開だね、確かにタイトルも鬱っぽいな・・と思わせといて、いやいや、いい意味で裏切られましたよ!
虚淵さんの作品でこれほど爽やかな気持ちになれたのは、ぶっちゃけ初めてかもしれない。

「楽園追放」(2014年)

・日本映画批評家大賞アニメ部門作品賞受賞
・映画テレビ技術協会技術賞受賞
・VAX-JAPANアワード2015優秀賞受賞

上記を見ての通り、この作品の3DCGはかなり高く評価されたようだ。
制作を手掛けたのは、グラフィニカ
板野一郎さんが深く関わってる会社だね。
かつて手描きエフェクトの鬼才といわれた板野さんも、今では3DCGの権威である。
で、この作品の3DCGは完全に「セルルック」で、そのセル調がまた綺麗にハマってるのよ。
セル調3DCGにおける、一種の到達点といえる作品だね。
最近では「THE FIRST SLAM DUNK」でこれを上回るものを見せられたともいえるが、でもまぁ、SFジャンルでは今なお「楽園追放」がひとつの頂点だろう。

あと「楽園追放」は、DVD/Blu-rayがバカ売れした作品としても知られている。
つまり、オタクにウケたのさ。
そのウケた理由は他でもない、ヒロインのアンジェラ・バルザックに魅力があった、ということ。

アンジェラ・バルザック(cv釘宮理恵)

ポイントは、このアンジェラの声を釘宮理恵さんがやってることである。

釘宮さんにしては、スタイル良すぎだろ!


と言いたい気持ちも分かる。
確か、日本アニメ界の不文律では
釘宮理恵は、貧乳、コドモ、小動物を主として演じるものとする
と決められてたはず。

でもまぁ、「楽園追放」のアンジェラは本体が電脳パーソナリティであり、画像のキャラは「マテリアルボディ」、すなわち義体という設定らしい。
これまた、オタクが大好きな設定じゃないか!
案の定オタクに人気が出たらしく、

「アンジェラの等尻大マウスパッド」


という商品が販売されることになった、とのこと。

アンジェラの等尻大マウスパッド
右手を優しく支えてくれる逸品です
マテリアルボディとしての弾力性があります
疲れた時は、休憩に利用できます

ちなみにこのパッド、めっちゃマウス操作の邪魔になるらしい(笑)。
・・ま、いいか。

でね、この作品は登場人物の数が異様に少ないのよ。
主要なのは、3人だけ。
ただ、その3人が釘宮理恵、三木眞一郎、神谷浩史という3大レジェンドですわ。
おまけに、出番は少ないけど終盤に敵役として登場する女性エージェントが林原めぐみ、高山みなみ、三石美琴という完璧なキャスト!
おまけに、序盤に出てくる男性モブが古谷徹だからね(笑)。
もう、このへんのツボの押さえ方にはマジで痺れますわ。
そりゃDVD/Blu-rayも売れるって。

さて、前置きが長くなってしまったが、そろそろ内容の方に入ろう。
私がこの作品で最も痺れたのは、そのSF設定である。
ジャンルとしては明確にサイバーパンクで、しかも地球文明が崩壊してるというポストアポカリプス系である。
作中では「ナノハザード」があったと説明されてて、詳しくは分からんけどなぜか地球全体が砂漠化しちゃってるのよ。
で、ワームという王蟲っぽいのがたくさん出てきて、「DUNE/砂の惑星」を彷彿とさせる世界観だね。
じゃ、人類はどうなってるのかというと、当然別のところに避難してるんだけど、それが肉体を捨てて電脳情報生命体となり、なんと全人類のうち98%が仮想空間の「ディーバ」というところに居住してるんだという。

ディーバの一風景

上の画はディーバ内の様子だが、これ、全部バーチャルリアリティで、ここにいる人たちもホンモノじゃなく、VRとしてのアバターだからね。
具体的にディーバ内の人口は知らないけど、ひょっとしたら百億を超えてるのかも。
バーチャルゆえ、それだけの規模の収容も可能なんだろうし。
なるほど。
食糧、空間、インフラ等を考えると、人類は肉体を捨ててデータ化した方が生存効率がいいということか。
彼らアバターの実体がどこにあり、どういう状態になってるかの描写は特になかった。
でも、正直見たくはないな・・。
ユートピアに見えて、やはりディストピアである。
あながち、あり得ないとは言い切れない未来像だよね。

一方、これはリアル世界の地球の様子。
生きていきにくそうな環境だねぇ(笑)。
でも「ディーバには行きたくない」という人間も全体のうち2%ばかりいたらしく、彼らはサンドワームを狩って肉を得てるようだ。
生まれも育ちもディーバというヒロイン・アンジェラは、こういう不衛生で危険な地球で暮らす人々のことを全く理解できない。
まぁ、それはそうだろうけど、一方でアンジェラの口から断片的に語られるディーバ市民の生き方というのも、これはこれでどうなの?という実態である。
まず、仮想空間のディーバにはメモリにも一定の上限があり、そのメモリは各市民に平等に配分されるわけでない。
運営側に貢献した者には優先してメモリが与えられるが(アンジェラは貢献してるので、かなり与えられてる立場)、そうでない者には与えられない。
最下層の者がどんな暮らしをしてるのかの描写は作中なかったにせよ、実は結構酷いのかもしれないね。
ディーバ市民は皆メモリを得る為、必死に運営側に貢献しようとしてるようだ。
アンジェラもまた例外ではなく、その生活はほぼ社畜といっていい。
そして何より、社畜以外の生き方を全く知らないのが致命的である。

アンジェラの相棒となった、リアル世界の地球住民・ディンゴ

ひとつ、この作品のキーワードになってるのが「音楽」だね。
アンジェラの相棒、リアル地球人のディンゴは音楽を嗜む。
しかし社畜ゆえ無駄を極端に嫌うアンジェラは、そもそも音楽(ロック)をノイズとしか認識できない。
音楽=仕事上に不必要なもの、無駄、という認識。
だけど、ホントはその無駄こそが生きることの豊かさじゃん?
ノーライフ、ノーミュージック
やがて、アンジェラとディンゴは「自我を得たAI」フロンティアセッターと出会うことになったんだが、このフロンティアセッターが自我を得た契機というのが、皮肉なことに音楽の視聴だったという。
音楽を聴いて、AIに自我が芽生える・・。
この設定、凄くイイね。
何か、理解できる気がするし。

AIフロンティアセッターは、ギターを背負って帽子をかぶってる(無駄!)というのが超カワイイ

・効率優先で、人間なのに機械のようなアンジェラ
・音楽を愛し、AIなのに人間のようなフロンティアセッター

この対比が、凄くイイんですよ。
で、ディンゴとフロンティアセッターが音楽談義でめっちゃ盛り上がってるのを見て、アンジェラは「あれ・・?」と思うんだよね。

「そもそも、人間って何だっけ?」


自分って、人間だろうか?
人間だけど肉体を捨てた電脳パーソナリティー(ただのデータ)だし、多分そのデータが「攻殻」でいうところのゴーストなんだろうが、機械であるAIフロンティアセッターにもそのゴースト(自我)が発生してるわけで・・。
というか、フロンティアセッターの方が私よりよっぽど人間っぽいじゃん?と気付いてしまう。
これぞタイトルの「楽園追放」、アンジェラが「知恵の実」を口にした瞬間である。
つまりアンジェラにも、本当の意味での自我が芽生えたんだ。
このへんのくだりの脚本が何とも秀逸で、さすが虚淵玄!といったところである。

もうね、はっきりいってこの映画、うますぎるよ。

・脚本がうますぎ!
・声優がうますぎ!
・セル調3DCGのモーションがうますぎ!


僅か100分という時間内で、ここまで起承転結しっかり物語をまとめたのは見事としかいいようがないわ。
まだ未見という人がいたら、是非見てください。
多分ね、感想は「感動した」とか「面白かった」というより

「うまいっ!」


それに尽きると思うよ。
うまい脚本家、うまい演出家、うまい3DCGスタッフ、うまい声優。
もはや、それこそサッカーブラジル代表のパス回しを見ているような錯覚に陥るから。
うまい人ばっかりが揃うと、こういう奇跡みたいな作品が出来ちゃうのね。

とりあえず、お尻が好きな人は絶対に見た方がいい!


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