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「BLUE GENDER」これが地上波放送OKだったのか・・

今回はかなりマイナー作品となってしまうが、アニメ「ブルージェンダー」について書いてみたいと思う。
いわゆる、隠れ名作というやつですな。
制作は1999年。
この時代は「ノストラダムスの大予言」やらで終末論が妙に流行っており、その影響か、映画やアニメもポストアポカリプス系がやたら多く制作されたんだよね。
「ブルージェンダー」もそのひとつ。
制作会社はAICというところで、80年代、主にOVAで有名になったメーカーである。
作品は、「くりいむレモン」「メガゾーン23」「バブルガムクライシス」「吸血姫美夕」「天地無用」など、皆さんも一度ぐらい名の聞いたタイトルがあると思う。
やはりビデオ作品が主の会社ゆえ、その基本線はエロとグロである。
で、90年代「深夜アニメ」の黎明期、オトナ向けアニメを作れる会社はないか?という需要から、AICをはじめとする複数のOVAメーカーがTVアニメ界に進出したんだわ。
だけどさ、彼らはTVアニメを作らせても、やっぱOVAのクセが全然抜けないのよ。
基本、エロとグロになっちゃう。
皆さんも、たまに古い90年代アニメを見て、
えっ?こんなのTVで放送してOKだったの?倫理規定大丈夫だったの?
と感じるような作品に出会った経験があると思う。
それ、大体のパターン、AICですから(笑)。

「ブルージェンダー」(1999年)

たとえば、この作品でも「オトナ向けだなぁ」と感じる点があり、それは

ヒロインが処女じゃない


というところなんだ。
ヒロインの名はマリーン。
軍所属の女兵士で、キャラ的には「Fate」ヒロイン・セイバーっぽい感じのクール系美少女である。

ヒロイン・マリーン(cv桑島法子)

彼女には特定の恋人がいるわけじゃないが、でも兵士だけに明日は生きてるかも分からぬ身、ゆえに「生きてる実感を得る為」、男の同僚に誘われたら割とあっさりSEXするようなスタンスなんだわ。
案外、誰とでもする。
こういう設定、TVアニメの美少女ヒロインとしては珍しいよね・・。
でもまぁ、そんなのはあまり大したことでもないさ。
それより問題なのは、彼女が兵士として闘う相手の方である。

世界を滅亡させた謎の生命体・通称ブルー

はい、闘う相手というのは「ブルー」、それこそ王蟲みたいな謎のモンスターなんですよ。
この作品は99年放送だけど、これの2年前にポールバーホーベン監督作品の「スターシップトゥルーパーズ」というのがヒットしており、これの影響が大きいんじゃないかと思う。

「スターシップトゥルーパーズ」(1997年)

ある意味、虫って軍の単位としては最強かも。
個々に恐怖心がなく死を全く恐れないし、ただひたすら物量で圧倒する兵法は、たとえ武装で劣ろうが最終的にはほぼ確実に押し切ることができるし。
当然、こういうのは「マブラヴ」(2003年)にも大きな影響を与えただろう。
ただ日本アニメとしては、多分この「ブルージェンダー」が最初かと。
また、これがSFの設定としてなかなか凝ってるのよ。
「スターシップトゥルーパーズ」に出てくる虫は単にエイリアンだけど、「ブルージェンダー」の虫は「ある日、どこからともなく湧いてきた存在」ということになっている。
まぁ、メンドくさいのでネタバレしちゃうと、

ブルー(巨大蟲)=地球の免疫システム


ということだったんだが・・。

これ、SFではよく出てくる「ガイア理論」ってやつだね。
地球を一単位の巨大生命体(ガイア)と捉え、我々人類を含め、全ての生命体はガイアを構成する「細胞」である、と捉えるのよ。

分裂する細胞
虫っぽく見える精子細胞

細胞というのはそれ自体がひとつの生命体に見えるし、虫っぽくもあるよね。
そういや、細胞を擬人化したアニメ「はたらく細胞」ってやつもあったな。

「はたらく細胞」

「はたらく細胞」見て以来、ケガして出血するたび、つい血小板が愛しくて「がんばれ!」と傷に語りかけてしまう私・・。

でもさ、仮に地球上の生命体=地球の細胞だったとして、本来、細胞というものは「自分の意思」を持っちゃいけないよな?
それこそ虫と同様、一定のプロブラムのみに従う存在であるべきで、そこに独自の思考なんて入ってはいけないんだよ。
たとえば、体内に侵入した雑菌を殺すべき役割の白血球細胞が

「ボク、むやみに殺生するのって、よくないと思うんですよね」


とか言い始めたら大変じゃん?
あと、卵子細胞が

「もう鬱陶しい!アンタら、寄ってこないで!お願いだから、ひとりにして!」


とか言って、引きこもり始めたら大変じゃん?
だから思うんだけど、もしガイア理論の通りに我々人類もまた地球の細胞だとしたら、我々が「自我」を持ってしまったというのは地球にとって困った事態なんじゃない?
細胞のくせに地球からのオーダーをなんら自覚せず、めっちゃフリーに活動してるもんね。
めっちゃ環境破壊してるし。
なるほど、旧約聖書創世記で「知恵の実」食ったアダム&イブに神がキレたのは、そういう意味か・・。

めっちゃキレてる神

で、この「ブルジェンダー」で描かれた、
地球の免疫システムが人類を駆逐し、その増殖を食い止めようとしてる
という設定、あながち的外れでもないと思うんだよ。
さすがに巨大蟲が大量に湧いてきて人類を捕食するってのは荒唐無稽だが、でもエイズウィルスとかエボラウイルスとか新型インフルエンザとか、克服しても克服しても絶えることなくヤバい病原菌が湧いてくるのは、そういうガイアの意思が働いてるのでは?と私は思うなぁ・・。

「ブルージェンダー」男主人公・ユウジ

さて、話を戻そう。
この「ブルージェンダー」において蟲がキモチ悪い!って人は一定数いると思うけど、私から言わせると、この作品の中で蟲なんてのはまだ全然マシな部類なのよ。

ぶっちゃけ、本作で蟲の何倍もキモチ悪いのが、主人公・ユウジである。


たまに「不快な主人公」というのは出てくるもんだが(「Re:ゼロ」のスバルとか)、数ある不快系の中でも本作のユウジはアニメ史上TOP3に入るほどの逸材である。
とにかく自分勝手で軽率な行動をとり、周りに迷惑かける奴の典型なんだ。
この物語の序盤は

ユウジが行動する⇒人が死ぬ⇒ユウジが行動する⇒人が死ぬ


ひたすらこのループで、気がつけば当初は7~8名ほどいたチームが、遂にはユウジとマリーンの2人きりになってしまうのね。

どんどん死んでいくメンバー
一応、本人も自分の迷惑っぷりを自覚し、落ち込んだりするんだが・・

無能なら無能らしく、ただおとなしくしとけばいいのに、懲りずにコイツはたまたま出会った少女に

「大丈夫、俺が必ず君を守るから」

とカッコつけて約束したりするんだよな~。
で、案の定だけど、そういうのがフラグとなり、

ユウジは、やられて身動きとれなくなってしまった
やられたユウジを見つめる少女

倒れてるユウジの目の前で、少女はパックリと蟲に食われます。


もうね、こんなのばっかりですよ。
私、この「ブルージェンダー」見て以来、モミアゲ長い男を見るたび、ワケもなく殺意を抱くようになりました。
ちなみにですけど、人間は蟲に食われたら、下の画のような肉ダンゴ状態にされてしまいます。

肉ダンゴ

でも、ご安心ください。
弱くてヘタレだったユウジも、物語の後半になると結構強くなるのよ。
ただし今度は、強さに対して異常に執着するようになって、しっかり闇落ちします。

しまいには、ヒロイン・マリーンを殺そうとするほどに自我を失うユウジ

もうね、勘弁してください・・。

とはいえ、こういう書き方をしてるとクソアニメだと思うでしょ?
いえいえ、トンデモない。

はっきり言うけど、これ、傑作SFですよ。


鬱アニメに見えて、実はそんなに後味悪くないし。
主人公・ユウジというストレスさえ克服できれば、作画も脚本も音楽も悪くないし、むしろめっちゃ面白い。
特にうまいなぁと思うのが、前半をユウジ主観、後半をマリーン主観という2部構成にしてる脚本さ。
特にマリーン主観に入ってからが秀逸で、一気にミステリー・サスペンス調になってくる。
AICアニメの中では、間違いなく上位に入る出来だと思う。
だからネックは、ユウジの不快さ、そこに尽きるのよ。
ひとつ視聴のコツとして、ユウジでなくマリーンを軸に見ればいいと思う。
マリーンはいいよぉ?
登場時は戦闘マシーンみたいだった子が、だんだん人間っぽい女子になっていく過程は、ホントにいい!

物語前半のマリーン
物語後半のマリーン

あと、この頃はまだ規制が緩かったのか、マリーンのカラミ描写もきっちりあります。
前半は単に性欲処理作業だったSEXが、終盤、ちゃんと気持ちの入ったSEXになってるあたりもなかなかいい!
軍隊育ちで裸を見られることに抵抗がないんだろう、脱ぎっぷりもめっちゃいい子です。

つまり、この作品はマリーンを味わって楽しむアニメだね。


重い話だから好き嫌いは分かれると思うが、「進撃の巨人」が好きな人なら結構イケると思う。
深夜アニメ黎明期って、ホントこういう隠れた名作多いんだよなぁ。
令和の今では見ることのできない表現もたくさんあるし、めっちゃお薦めですよ。


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