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量子力学系アニメの元祖「ノエイン もうひとりの君へ」

よくアニメには、「難解な作品」ってあるでしょ。
私が思うに、その「難解な作品」には3つのパターンがあると思うんだ。

①監督、または脚本家がヘタクソゆえ、ちゃんと視聴者に伝わるような表現をできず、そういう作り手の能力不足から結果的に難解になっている。

②監督の意図した演出として、「敢えて難解な語彙を使う」「直接的表現を省く」「情景だけで伝える」等により、もともと視聴者側の思索による補完を求める作風にしてある。

③作品が取り扱った題材がもともと難解であるがゆえ、アニメの尺の中ではその咀嚼にも限界があり、結果的に難解な作品とされてしまっている

まあ、①は論外だね。
②は比較的多いと思う。
特に古い世代の監督さんとか、いまどきの「ずっと子供の頃からアニメ見て育ちました」という世代と違って、実写映画を見て育った人たちっているでしょ?
それも特にゴダールとかの洗礼受けてる世代とか、アニメの中でもついついそういうのをやっちゃうのよ。
情弱は相手にしてないから、別に伝わらなくてもいいよ、という開き直りのスタンスだね・・。
そして③は、特にSFで多いと思う。
②は主に文系の難しさだとして、③は主に理系の難しさである。
もともと理系の話はややこしくてかなわんのだが、昔はせいぜい相対性理論が関の山だったのに、今じゃアニメの世界も量子理論がトレンドでしょ?
さすがにこれ、難しすぎるよ。
でもまぁ、アニメの人気ランキングを見る限り、「STEINS;GATE」あたりが上位にいることは正直凄いと思う
あの作品、かなりの理系知識がないと理解できない内容だと思うんだけど?
なのに人気ランキング上位って、アニオタすげー、と感心せざるを得ない。
この「STEINS;GATE」の制作は2011年。
私が知っている限りだと、TVアニメで本格的に量子理論を取り扱ったのは、2003年制作の「ダイバージェンスイヴ」が初めてじゃないだろうか。

これ、見たことある人いる?
キャラクターが萌え系だからついつい油断しちゃうけど、中身はゴリゴリのハードSFなんだ。
割と「トップを狙え」っぽい雰囲気なのよ。
導入は明るい青春モノで、話が進むにつれ、だんだんとシビアになっていく感じ。
だけど「ダイバージェンスイヴ」のその落差は、「トップを狙え」を遥かに凌いでいる。
しかも、色々要素がテンコ盛りなのよ。
謎の宇宙生命体とのバトルだとか、タイムリープだとか、パラレルワールドだとか、SFっぽいことはひと通りやってみました、という感じ。

こんなのと闘ったりとか・・

さらに友情、親子愛、お色気に至るまで盛り込んでおり、ある意味めっちゃお買い得な作品である。
なのに意外なほどSF考証がされており、ちゃんと真面目に作られている。
この作品のあらすじを分かりやすくまとめると、
ヒロインは、今まで自分が普通の人間だと思って生きてきたんだけど、実は涼宮ハルヒ的ポテンシャルを持つ存在なんだと自覚し、ラスボスが全宇宙をまるごと消滅させようとするもんだから、しようがないので頑張って歴史を作り直しちゃいました♡
という感じである。
なんか文章にすると全然真面目っぽくならないけど、これでもちゃんと量子理論がベースになってるからね。
個人的には、良作だと思う。

で、「ダイバージェンスイヴ」2期終了の翌年、さらに量子理論に踏み込んだSFアニメが出てきたのね。
「ノエイン もうひとりの君へ」
面白さでいえばこっちの方が上なので、まだ見てない人には視聴をお薦めしたい。
「STEINS;GATE」にも匹敵する、隠れ名作である。
まず、これもあらすじを説明しとくと、
ヒロインは、今まで自分が普通の人間だと思って生きてきたんだけど、実は涼宮ハルヒ的ポテンシャルを持つ存在なんだと自覚し、ラスボスが全宇宙をまるごと消滅させようとするもんだから、しようがないので頑張って最後はラスボスの心をへし折りました♡
という感じである。
そう、あらすじとして「ダイバージェンスイヴ」と「ノエイン」はよく似てるんだよね。
ただ舞台設定が全く異なっていて、「ダイバージェンスイヴ」は宇宙が舞台なのに対し、「ノエイン」は町内のご近所が舞台である。
ご近所に、宇宙人ならぬ、未来人がやってきたんだ。
絶望的な未来を救う為に。

未来人のカラス(右)とフクロウ(左)
主人公のハルカ(右)と幼馴染みのユウ(左)

ヒロインのハルカ(小6)が可愛いんだよな~。
ハルカを愛でるだけでも、この作品には視聴価値があると思う。
で、ご近所を舞台にして、未来人たちによるハルカ争奪戦が繰り広げられる。
ハルカを連れ去ろうとする未来人vsハルカを守ろうとする未来人、という果てしないバトル。

なんか得体の知れない力を使う未来人

そもそも、こいつら何でこんな魔法みたいなことできるんだ?と思うだろうが、どうやら彼らは肉体を量子化してるらしい。
「肉体を量子化」の意味が分からんけど、もしそんなことができたとしたら、エライことですよ。
というのも、量子世界は我々が知る一般的な物理法則がほとんど通用しない世界らしいのね。
逆にいえば、こっちでは絶対不可能なことが、あっちの物理法則ではできる可能性もあるわけだし、そんな意味では魔法も実現しないとは必ずしも言い切れない。
まぁ、ふわっとしたファンタジー世界みたいなものとでも捉えてくれ。
ひょっとしたら、我々が死んだら行く「あの世」って、量子世界のことなのかもしれないね。
死=人間の量子化?
おかしな話さ。
我々の世界だって量子で構成されてるはずなのに、そのミクロの量子が幾重にも重なってマクロの物質世界になると、なぜか知らんがふわっとした要素が消えてしまうわけよ。
2+3=5
みたく、かっちりした世界になってしまう。
でも、量子世界は
2+3=5かも?・・いや、ちょっと違う、5ぐらい?大体2~8ぐらいの間ぐらいかも?いや、よく分からんけど、まぁええやん、おやすみzzz
ということになるんだ。
このテキトーさが世界をひとつに固定せず、パラレルワールド、多次元宇宙の発生にも繋がってるとされていて、そのへんは私にもよく分からんけど、まぁええやん、おやすみzzz

右はハルカの父親

ちなみにハルカの父親は量子物理学者らしく、次のような仮説を提唱してる人らしい。

「量子的な不確定世界を確定させる現象は、人間の特異な量子的構造が原因となる。
人の存在が全てを確定させ、人は時空が重ね合わさってできている、宇宙の根源であり、ネットワークの中心である」(第12話より)

めっちゃ難しいことを言うとる。
ようするにこれ、量子は観測すると確定する、という量子力学の例のあれのことを言ってるわけよ。
そこから派生して、人間がいるから宇宙(物質世界)は存在するんだよ、という考え方。
そんなワケねーだろ、とツッコみたい人もいるだろうが、割と量子物理学者にはこういう考え方をする人もいるんだ。
でもって、このてのアニメはパターンとして観測がひとつのカギになるんだが、「ノエイン」の場合は観測者=ハルカなのよ。
「STEINS;GATE」では観測者=オカリン、「涼宮ハルヒ」では観測者=涼宮ハルヒ。
何なの?
このてのアニメにおける、観測者は世界にひとりしかいませんルール。
こういうのってアニメに義務付けられた、ローカルルールなんだろうか?
さすがに、そういう仕組みじゃないと思うんだけどなぁ・・。

「ノエイン」では別宇宙に行く際は、こんな感じになります
臨死体験っぽいよね・・

しかし量子力学にはひとつ良いところがあって、それは科学でありながらも未知の領域があまりにも多く、だからこそ、どんな表現をしたところで誰もツッコめないのさ。
こういうのって、SF作品を作るクリエイターとしてはめっちゃ便利。
何でも「量子力学です」ということにさえしとけば、一応SFとして成立するからね。
ちょっとぐらい科学考証として無理があったとしても、「量子力学です」と言い切れば許されるだろう。
あと、ちょっとぐらいの作画崩壊をしても、「量子力学です」と言い切れば許されるだろう。
うん、まさに時代は量子力学だね。
私は個人的に、量子の優柔不断さや決断力のなさに、一種の親近感を覚えているよ。


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