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私は、宮崎駿の描く幼女が好きだ!

先週、金曜ロードショーで放送された「天空の城ラピュタ」についてだが、その視聴率は13.7%だったという。
たとえゴールデンタイムだろうと視聴率は一桁が当たり前のこのご時世に、13.7%という数値がどれほど規格外か、お分かりいただけるだろうか。
相変わらず強いな、ジブリ。

ではここで、今まで金曜ロードショーで放送されたジブリ作品のうち、特に放送回数が多いものの上位グループを、視聴率の数値(初回放送時のものと最新放送時のもの)と併せてご紹介しましょう。

【1位】20回
風の谷のナウシカ(初回16.5%、最新9.8%)

【2位】19回
天空の城ラピュタ(初回12.2%、最新13.7%)

【3位】18回
となりのトトロ(初回21.4%、最新13.4%)

【4位】17回
魔女の宅急便(初回24.4%、最新9.9%)

【同率6位】13回
紅の豚(初回20.9%、最新10.8%)
火垂るの墓(初回20.9%、最新6.7%)

【同率8位】12回
もののけ姫(初回35.1%、最新12.6%)
耳をすませば(初回18.5%、最新10.6%)

【9位】11回
千と千尋の神隠し(初回46.9%、最新12.9%)

上記以外のものは、全て放送回数が一桁となっています。
・・あ、ジブリじゃないけど、「カリオストロの城」は18回放送されてますのであしからず。
それにしても、「千と千尋の神隠し」の初回視聴率46.9%「もののけ姫」の35.1%、このへんは凄いね!
紅白歌合戦じゃあるまいし、普通あり得ない数値だろ。
ある意味、このへんの時代がジブリの最盛期だったのかもしれん。

しかしまぁ、「ラピュタ」は19回も放送して19回目の視聴率が13.7%って、この数値は初見の人も多少は含むだろうが、大体はリピーターだろ?
何より凄いのは、それだけの視聴回数に耐えうる作品の頑強さだよ。
そこは、さすがのジブリクオリティである。
ただ、繰り返し見ると正直胃もたれすることもあるわけで、そのいい例が「火垂るの墓」じゃないの?
何度も見るには、さすがに重い。
それもあってか、13回目の視聴率は6.7%。
さすがに、そろそろ撤退のタイミングだろ。

その「火垂るの墓」と同じ13回放送が「紅の豚」なんだが、私はこっちの方はまだまだイケると思う。
というのも、「紅の豚」はいい意味で「軽い」のさ。
繰り返し見たところで、全く胃もたれしない。

「紅の豚」(1992年)

実は最近、改めて「紅の豚」を見たんだけどさ、いやぁ、やっぱコレいいわ!
前述の通り、あまり濃い作風ではないんだけど、だからこそ飽きがこない。
そして、味付けのバランスがいい。
一応、「男のロマン」が作品の主軸ではあるものの、意外と女子供が目立つ作風なんだよね。
冒頭のこのシーン、覚えてる?

「子供たちが空賊に誘拐された」と聞いた主人公・ポルコロッソがその救助に向かうんだが、実際のところ、空賊の方は上の画のような状態になってるのよ。
「誘拐した」といいつつも、彼らは子供たちのことを全く拘束してないし、好き勝手にされても決して暴力で押さえようともしてない。
そう、彼らは空賊ながらも、根っこは悪い人たちじゃないのね。
このシーンひとつで、「あ、こういう世界観のお話か」と観客が即座に理解できる仕組みになっている。

さらにいうと、宮崎駿の描く幼女はカワイイ!


しかし見た目は幼いながらも、この子たち、結構しっかりしてるのよ。

こういうところだよね。
何度も繰り返し見れるところって。
一種の安心感というのかな、大体のあらすじは分かってるからこそ、今度はディテールの面白さ、可愛らしさをついつい見ちゃうのよ。

あと、これを90年代に見た頃には、この物語の舞台がイタリア、アドリア海であることを特に何も考えなかったけど、今の我々は2013年「風立ちぬ」を見てるわけで、改めて「なるほど、だからイタリア」ということに気付けるんだよね。

「風立ちぬ」のヒーローはイタリアのカプロ二社創設者のジャンニ・カプローニ

多分、航空機マニアの宮崎さんは「飛行艇ならイタリア」という思いがあるんだろう。
クライマックスのポルコvsカーチスの勝負はイタリア製vsアメリカ製という勝負でもあり、そこは完全に宮崎さんの趣味の領域だよなぁ。
「風立ちぬ」で敢えて空戦を描かなかったのは、「紅の豚」の中でもう既に描いたから、という意味なの?
そう考えると、ますます本作の価値は上がるよね。

あと、ポルコの専属整備士・フィオ。

明るくて活発な17歳の女子なんだが、彼女の声になんか聞き覚えがあるなぁと、今だからこそ我々は気付けるんだよ。
フィオのcvは岡村明美さん、つまり「ワンピース」のナミじゃん?

岡村明美

フィオが空賊相手にも一歩も引かなかったのは、なんか納得だわ(笑)。

なんていうかな、宮崎作品はこうやって繰り返し見ると、毎回必ず何らかの発見があるんだよね。
そういうところが、実に金曜ロードショーでの長期使用向きである。


ところで、ジブリもうひとりの雄・高畑勲についてはどうなんだろうか?
ぶっちゃけると、日テレは彼の作品の扱いに困ってたと思う。

「観客を楽しませる作品を作るのはよくない」


真顔でこんなこと言う人の作品を、視聴率を求められる金曜ロードショーで放送すべきなんだろうか(笑)。
高畑さんって、視聴率とか興行収入とか、特に興味ない人なんだろうね。
基本、作品の完成度にしか興味のない人である。
まぁ、「火垂るの墓」はさすがに別格なので今まで13回放送してきたんだが、でも実をいうと、第9回目からずっと視聴率一桁で、ここまで5回連続の一桁キープ。
もう、いい加減に切った方がいいってば。

確かに節子は可愛いんだが、その可愛さだけで引っ張るのも限界だろう。
個人的には、

「火垂るの墓」降板                ⇒「マイマイ新子と千年の魔法」登板


というリリーフ交代を提案したい。

「マイマイ新子と千年の魔法」(2009年)

これは「この世界の片隅に」でお馴染み、片渕須直監督の昔の作品なんだ。
なぜこの作品をチョイスしたかというと、これが日テレ傘下マッドハウスの作品だからだよ。
公開当時は興行的に大コケしたと聞くが、それは単に、片渕監督が当時まだ知名度がなかったからさ。
でも作品そのものの内容はめっちゃいいし、めっちゃ金曜ロードショー向きである。
日テレさんも、せっかくこんな隠し玉持ってるんだから、賞味期限切れには早いこと見切りをつけて、ちゃんと新しいのを投入していくべきだと思うんだけど?
私が見るに、片渕さんは高畑さんに匹敵する才能なんだし。

で、高畑作品の金曜ロードショー黒歴史の始まりは、やはり「ホーホケキョとなりの山田くん」なんですよ。

「ホーホケキョとなりの山田くん」(1999年)

これ↑↑「かぐや姫の物語」では?と思った人もいるだろうが、いえいえ、「となりの山田くん」です。
多分、この頃から高畑さんは「かぐや姫」やりたかったんだと思うよ。
これは20億以上の巨額を注ぎ込んだ高畑さん渾身の力作コメディだったが、興収は15億で大赤字の爆死・・。
じゃ、せめて金曜ロードショーで挽回しようと思ったら、初回視聴率が驚異の9.9%で爆死・・。
今までジブリ作品を数々金曜ロードショーで放送してきたが、初回から二桁を割ったのはこれが初めてである。
以降、金曜ロードショーは「山田くん」を封印してしまった。
ジブリ史上、地上波で1回しか放送してない作品は、後にも先にもただ1つ、「山田くん」だけさ。
・・まぁ、今となっては20年以上封印されてきたわけだし、逆にイイ感じで熟成してるともいえるかな?
日テレさん、ここは敢えて逆に、金曜ロードショー「山田くん」再投入ってどうだ?
私は好きだからこれを何度も見てるけど、このユルさは令和の今だからこそ多くの人たちにウケるのかもしれんぞ。

「山田くん」は、あの時代じゃまだ早すぎたということだよ。

でも、日テレさんの高畑作品に対する不信感は今なお根強いというか、彼の遺作というべき最後のプロデュース作「レッドタートル」って知ってる?
これも、いわくつきだったんだよなぁ・・。

興行収入は9600万という、ジブリ最低記録を見事に更新。


さすがにこれは金曜ロードショーで放送するのは無理、ということになったんだと思う。
ジブリ史上、初の金曜ロードショーで放送しない作品として確定。
ちなみに、深夜の枠でひっそりと放送したところ、その視聴率は1.1%だったらしい。
1.1%って・・。

うむ、やはり高畑さんが絡んだ作品は、数字をとれないことにおいて絶対的な信頼がおける。

それを踏まえた上でも、「山田くん」いっちゃう?
う~ん、どうだろうね・・。

ちなみに、高畑作品として最もエンタメ度の高い「平成狸合戦ぽんぽこ」は今まで9回放送し、でも直近は2回連続で一桁を記録している。
同じく「おもひでぽろぽろ」は今まで8回放送し、でも直近は3回連続一桁を記録している。
困ったもんである。
流れがよくない。
ここは「山田くん」投入という冒険をするよりは、敢えてコレ↓↓を投入してみるというのはどうだろうか?

パンダコパンダ(1972年制作)東京ムービー
監督:高畑勲
脚本:宮崎駿

宮崎駿のブランドを借りることになるけど、これならイケるんじゃね?
それに動物とコドモというのは、いつの時代でも数字稼げるぞ。


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