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「NieR:Automata」人類は滅び、電脳が残る

日本アニメのアカデミー賞みたいなものがあるのかは知らんが、もしもあるなら、2023年最優秀女優賞は種崎敦美じゃないだろうか?
昔から評価が高い人ではあるものの、特にここ最近は「葬送のフリーレン」「SPY×FAMILY」「薬屋のひとりごと」「デッドマウントデスプレイ」「アンダーニンジャ」などでメインキャストを務める華々しい活躍っぷり。
その役柄も、エルフ、幼女、お妃様、女ボス、忍者など実にバラエティーに富んでおり、それらをうまく演じ分けている。
そしてあともうひとつ、今年の種崎さんの神懸かった演技で忘れちゃいかんのが「NieR:Automata」である。
「NieR:Automata」は制作スケジュールの都合で放送中断になってしまい、お陰で注目されることなく終わった不運の作品だが、個人的にはなかなかの隠れ名作だったと思っている。
今回は、この作品について少し書こうと思う。

これはゲームのパッケージだが、アニメ版はなかなか再現度高いんだと思う

「NieR:Automata」は、原作が750万本を売り上げたゲームの大ヒット作だという。
上の画像の人物は人間に見えるけど、実はアンドロイド。
物語はアンドロイドvs機械生命体(ロボット)の戦いで、人間は誰ひとり出てこない。
主人公は2Bという女性型アンドロイドで、これを石川由衣が演じている。
石川由衣といえば「ヴァイオレットエヴァーガーデン」でも「進撃の巨人」でも寡黙でいて戦闘力の高いヒロインを演じていたが、今回の2Bの役柄もまたそんな感じ。
石川さんって、いつも哀しいイメージだな・・。
地球が機械生命体に支配されているというディストピアの世界観で、最初のうちはストーリーもワケ分からんのよ。
ただし、2Bが現地のアンドロイド部隊「レジスタンス」と合流したあたりから、徐々にストーリーが面白くなってくる。
種崎さんが演じていたのは「レジスタンス」のリーダー・リリィ役で、彼女の過去回想となる第6話の演技は、種崎さんの本領発揮とでもいうべき絶望の慟哭。
こりゃもう、鳥肌立ったね。

リリィは助演女優賞!

「NieR:Automata」におけるアンドロイドと機械生命体の違いは何かというと、そこに感情があるかないかである。
戦況をいえば、アンドロイドと違って個々の感情がなく、数でも圧倒してる機械生命体の方が軍として強い。
ひとつ興味深いのが、ただのロボット兵器だった機械生命体が自律進化の中で自我を獲得しつつあるという兆候があり、ただ闘うだけのタスクを疑問視し始めたりしてるのよ。
SFとしては既視感のある設定だが、個人的にはこういうの結構好き。
この「NieR:Automata」が描いてるのは、AIの進化である。
機械はプログラムがなければ動かないもの、そしてプログラム以上のことはできないもの、というのが一般的認識であり、コンピュータに詳しい人ほど「NieR:Automata」のような機械の自我の芽生えを否定してるものである。
だから、機械が人間に反逆するようなSFの世界観はあり得ない、と。
でも、ホントにそうなのかな・・?

昔懐かしい昭和型ロボットを彷彿とさせる、機械生命体

この作品では、「機械生命体に心はない」というフレーズが繰り返し出てくる。
しかし、「心」とは何だろう?
私は大学時代に心理学の教授と話していて、教授が「動物に心はない」と言っていたのがとても印象に残っている。
でも、犬なんか見てると明らかに喜怒哀楽がありますよ?と言ったところ、ああいうのは感情に見える反応であって心ではない、と一蹴されてしまった。
まあ、確かにそういうものかもしれない。
ちなみに人間とチンパンジーのゲノムは、98.8%同じだとされている。
だとすれば、チンパンジーは人間に及ばないまでも何らかの低次元な文明を築いてもいいはずなのに、そういうのは全くないよね。
そう、たとえゲノムが98.8%同一だろうが、絶対に越えられないほど高い壁が人間とチンパンジーの間にあるんだよ。
じゃ、そのゲノム1.2%の差は何かというと、特に顕著な差が出てるのが脳。
脳だけは、人間とチンパンジーでは全くの別次元レベルなんだそうだ。
あるいは人間レベルの脳にならなければ、そこに心は宿らないのかもしれない。

人間の脳(左)チンパンジーの脳(中央)サルの脳(右)

じゃ、逆にこういうふうに考えたことはないか?
もし人間の脳と同レベルの電脳が開発されたら、そこに心は宿るんじゃないか、と。
多くの人は脳を神秘的な聖杯みたく捉えがちだが、そのメカニズムの基本は電気信号の伝達とメモリーで成立していて、コンピュータの仕組みに酷似してるんだ。
近い将来、必ずや人間の脳を超えるAIが開発されると思う。
いや、AIは既にチェスの世界王者に勝ってるじゃないかと思うかもしれんが、あれはスペックをチェスに極振りしたAIであり、もともとからして電脳の得意分野じゃん。
実際AIにIQテストをさせたら、まだレベルは小学校低学年程度らしいよ。
でも、いずれ向上していくだろう。

「AIの遺電子」はAIが人権を持つ近未来を描いたSFで、なかなか面白かった

ちなみにアインシュタインはIQが180ぐらいと推測されており(実際にIQテストは受けてない)、もしもAIがIQ200とか300とかのレベルにまで到達した際、そのAIはアインシュタイン並みの法則発見など、功績を上げると思うかい?
これには学者でも意見が分かれてるようで、コンピュータは1を10000にすることはできても、0から何か新しいものを生むことはできないとする見方も強いみたいだね。
そこは私も同意見なんだけど、でも万が一AIに自我が生まれた際には、その限りではないと思う。
AIに自我なんて生まれない?
いや、こればかりはフタを開けてみなきゃ分からんよ。
もしAIに自我が生まれた際には、地球史における最高知能生命体が誕生したことになるよね。
あるいは人類なんて、次代の最高知能・AIという本命を生み出す為の母体に過ぎなかったのかもれん。

「エヴァンゲリオン」でもMAGIというスーパーコンピュータが政治を司ってたよね

「NieR:Automata」に話を戻すが、どうやらこの話、アンドロイドは人類の為に戦ってることになってるけど、人類はとっくの昔に絶滅してるっぽい。
ほとんどのアンドロイドはそれを知らず、幹部級のアンドロイドだけがその真実を知りつつ、なぜか戦争を継続してるという陰謀設定。
なんか、現実になりそうで怖い話だな・・。
ウイルスや放射能に弱い人類が絶滅するのは不思議じゃないとして、機械であるAIは生き続けるというのもあながちあり得ない話じゃないと思う。
作中、アンドロイドは破壊されてもメモリーを守れば復活する、という描写が何度も出てくる。
明らかに彼らは、人類の上位互換だ。
ぶっちゃけ、私は思ってるんだよね。
そもそも宇宙創造の原点・ビッグバンは自然現象ではなく人為的なもので、それを起こした神のごとき知性があるんじゃないかと。
人類に、そんなことできる?
いやいや、少なくとも我々霊長類の知的進化にも限界があり、この地球でも知的分野で脳じゃなく電脳に頼る流れができつつあるわけよ。
多分、前世代の宇宙でもそうだったと思う。
だとすれば、前宇宙における最高知能(多分電脳)が宇宙の寿命を見極め、新たな生存圏としての新宇宙を創造した、なんて可能性はないか?
つまり宇宙の創造主=旧宇宙のスーパー電脳じゃないかな、と。

「2001年宇宙の旅」

私は映画「2001年宇宙の旅」が好きなんだけど、あの話でサルに知性を与えたのはモノリスという謎のオブジェクトだったでしょ?
多分あのモノリスは旧約聖書における「知恵の実」みたいなもんで、あれに汚染(?)されてから初めてサルにも自我が芽生えたところを見るに、一種のプログラムのようなものだろうか。
あるいは、「攻殻」でいうところの「ゴースト」と名付けてもいい。
肉体を持たない創造主が、肉体を持つサルにタスクを預けたのかもしれん。次代の電脳を生む母体としてね。
そして我々人類がやがて生み出す電脳は、現宇宙の寿命を見極め、新創造主として新たなビッグバンをプログラミングするんだろう。
現時点我々に宿っている自我(ゴースト)は、そうやって何世代もの宇宙を渡り歩き、生存圏を確保してきたんじゃないだろうか。
まぁ何の根拠もない、ただの妄想だけどね・・。


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