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たしばり (春の星々140字小説コンテスト応募作品③)
畑番になりたい福田さんは描いている。
猫界で畑番になるには
螺鈿に雷を蓄え細かくしたものを
鼻に蕾で留めておかなければならないのだけれど
この町でそれをしようとすると
やれ異獣だ、やれ瘤猫だ
などといわれてしまう。
だから
あれこれと思慮をめぐらせた福田さんは
錨で苗をたくさん描くことにしたのだ。
https://x.com/hoshiboshi2020/status/1774389502028
祈り (春の星々140字小説コンテスト応募作品②)
この細い糸の一本一本がどれほどの旅をして来たのだろう。
精錬を終えた絹糸を前に
失敗できないと気を引き締める。
日本茜から頂く赤は太陽の色、祈りの色。
流れてきた多くの時間と生命を想う。
「あぁ…いらっしゃったのですね…」
静謐を乱してしまうのをおそれ
私は息を止めたまま綛を澄んだ染液に浸す。
https://x.com/hoshiboshi2020/status/177438950202868
ドライフラワー (春の星々140字小説コンテスト応募作品①)
食が細くなった。
最近の外食ではご飯少なめでお願いをする。
食が命の根源という説には概ね賛成で
確かに生物としてのピークを過ぎた感はある。
しかし悪いものではない。
心身から脂や水やあくが抜け
ゆっくり枯れていくのはむしろ心地良さを覚える。
人生の後半、幸せとは何かを理解し始めている気がする。
https://x.com/hoshiboshi2020/status/177438950202868