店を続けたいなら値上げしよう【八百屋から見た“食” no.5】
先々続けたい店は値上げする。
このシンプルな事実。
「食」関連の値上げ(だけ)は残念に感じる人が多いのはなぜでしょうか。
■原料価格の視点から
農産物価格は豊作不作で変動しますが、近年は国内外とも天候不順による不作が目立ちます。とくに土地利用型の穀物・根菜・果樹に多く、高騰が長引いています。豊作不作に関係なく“物流費・動力費”も上昇。機械を動かすガソリン・ボイラーを焚く重油・宅配便等々、実感する場面はたくさんあるはずです。
輸入調達コストの上昇も各所で見聞きします。
コロナ禍以降、特に顕著です。
航空船舶輸送の激減。直行便→他国経由便への変更。
輸送の人手不足と人件費の激増。原油高。為替円安の掛け算。
輸入農産物の値上げは小麦・食用油だけではありません。カカオ・オレンジ・レモン・バナナ・アボカドなど、八百屋から見える景色だけでも、皆さんが想像する以上の“綱渡り”。これらはすべて製造原価に反映されます。
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■店舗・工場運営の視点から
店舗運営費用も年々増えています。特にアルバイト人件費は(10年で)最低時給換算でも月額10-15%増。地代が変わらずとも、人件費・動力費(店舗や工場で使う電気・重油・ガソリン)は上がり続けています。
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製造原価は上記の合算です。
製造原価は今後も下がりません。同じ材料・同じ製法であれば尚更。
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■値上げする理由・値上げしない理由
製造原価が上がり続ける現在でも、過去10年販売価格が変わらない商品もあります。
①製造方法・製造原料が変わった
②中身の分量・割合が変わった
③中身が減った
④人手がかからない工夫・人件費を抑えている
⑤運営の終わりが見えている(廃業/製造終了etc.)
価格維持の理由、ほぼこの5択に集約されます。
同じ材料・同じ製法であれば、段階的な値上げは必須。
運営を続けるにも、損益分岐点は毎年少しずつ上がります。
価格維持だけでは、作り続けることも営業を続けることもできません。
作り続けたいから値上げする。
真っ当に作って、単価を上げる。
製法と中身と量が同じなら、価格が上がることを理解する。
大切なのは伝え続け、支持され続け、売り買いを続けることです。
間違いなくこの先々、まだまだ値上げのお知らせは続きます。
毎度悲観的に報道される「また値上げ」を嘆くのではなく
誰かが我慢している「一瞬の安売り」に飛びつくでもなく
“原料&製法を変えず”確かなモノ・美味しいモノを作り続ける人達への
リスペクト・理解・購入継続をぜひお願いします。(つづく)
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