道草の家のWSマガジン

エッセイ、小説、詩、etc. を書く「道草の家のワークショップ」のウェブ・マガジンです…

道草の家のWSマガジン

エッセイ、小説、詩、etc. を書く「道草の家のワークショップ」のウェブ・マガジンです。作品もあれば未完成の素材もあり、メモや、何になるのかサッパリわからないガラクタも置かれているかも。気楽に読んで & 書いてください。

記事一覧

道草の家のWSマガジン - 2024年5月号

帰り道花見 - 片山絢也  川沿いに桜がずっと続いている。近くの行政管轄の施設の敷地には、また別の種類の桜が植えられていて、もっと色味が濃い。どちらの桜もライトア…

道草の家のWSマガジン - 2024年4月号

春に - 橘ぱぷか みててよね儚いだけじゃないからねバーンと夜に桜のランウェイ 毎度のことながら慌ただしい毎日がはじまって、嘘みたいな速さで時間が過ぎていく。意味…

道草の家のWSマガジン - 2024年3月号

ミモザによせて - UNI わたしの母は仕事・家事・育児に頑張る女性だった。お昼休みにスーパーに買い出しに行って、それを職場の冷蔵庫に入れていたという。帰りは電動な…

道草の家のWSマガジン - 2024年2月号

ゆき - カミジョーマルコ 白い影に ふと目をあげると 外は雪がふっていた ふわりふわり ひらりひらり 隣のアパートで子どものはしゃぐ声がする すごいね すごいね …

道草の家のWSマガジン - 2024年1月号

短いようで長い道のり - maripeace 先月はWSマガジンの原稿を送れなかった。途中までしか書けなくて、送らなかった。たぶんRTさん主宰の「壁の花の会」に参加した時のこ…

道草の家のWSマガジン - 2023年12月号

12月 - のりまき放送 降車する停留所を間違えたくなかったので、電光掲示板が見える前方の席に座った。緩やかにバスが振動し、動き出す。町中を抜けて山側へと進んでいく…

道草の家のWSマガジン - 2023年11月号

沖縄の花 - maripeace 花を一輪買った。時々相談するお坊さんに、自然が足りてないから部屋に切り花を飾るといいよと言われて、花屋さんに選びに行った。デンファレとい…

道草の家のWSマガジン - 2023年10月号

琥珀色 - 田島凪  きみから私をゆっくりと引き剥がし、その背中に枕を添わせる。夜が終わったことを、きみに気取られないようにそっと。腹筋に力を込めて上体を起こし、…

道草の家のWSマガジン - 2023年9月号

果実の話 - UNI  フルーツ。fruit. 実を結ぶ。果実が成る。  果実はすべて、人間のためにあるのではない。果実は動物に食べられ、糞として落とされることで種子を運ば…

道草の家のWSマガジン - 2023年8月号

「藤橋」覚え書き - スズキヒロミ  昔々、あるところに、一本の橋がありました。その橋は藤の蔓を編んだ吊り橋で、村人から「藤橋」と呼ばれていました。  藤橋は、そ…

道草の家のWSマガジン - 2023年7月号

慟哭 - カミジョーマルコ 月が泣く。 星が笑う。 風がこの世の終わりを告げる。 やがて空はガウガウと鳴き 足元の地はバラバラと揺れ 私は恐れをなしておのずから宙に浮…

道草の家のWSマガジン - 2023年6月号

犬飼愛生の「そんなことありますか?」⑦ そこのけそこのけ、あたしが通る。ドジとハプニングの神に愛された詩人のそんな日常。 「リサイタル、前夜」  私の母は以前、…

道草の家のWSマガジン - 2023年5月号

麻績日記 「おとずれ」 - なつめ 「わが心 なぐさめかねつ更級や をばすて山に照る月を見て」(よみびと知らず、『古今和歌集』 ) 私にとって傷ついた心を慰めるのは…

道草の家のWSマガジン - 2023年4月号

今日という日がもうすぐ終わる - スズキヒロミ 明日にはもう故郷に帰るのだ と ずいぶんとまた 急な話 そういえば 昔 それとは知らず 君の故郷を 旅したことがあった…

道草の家のWSマガジン - 2023年3月号

だれかの話 - UNI 車、西へ進む。 四日後、オホーツクに着く。 一旦、西へ進む。 富士の宝永火口、右眼に流れる。 春の空、霞む。 静岡、とにかく長い。 愛知、あっとい…

道草の家のWSマガジン - 2023年2月号

今日の空の色は - RT 1月27日 寒い波 射金色 思えば朝から不思議な日だった。仕事場のパソコンのお絵描きソフトを突然使えるようになったのだ。今まで何回やってもでき…

道草の家のWSマガジン - 2024年5月号

道草の家のWSマガジン - 2024年5月号


帰り道花見 - 片山絢也

 川沿いに桜がずっと続いている。近くの行政管轄の施設の敷地には、また別の種類の桜が植えられていて、もっと色味が濃い。どちらの桜もライトアップされて、滲んだ光になっている。自宅方向に歩いていくと、敷地を通り抜ける花見を終えた人たちとすれ違う。そのときに起きる風は、甘い香りがする。また、少し空気が揺らいでいるようにも見える。時々、川と緑の匂いにかき消される。
 その人たち

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道草の家のWSマガジン - 2024年4月号

道草の家のWSマガジン - 2024年4月号


春に - 橘ぱぷか

みててよね儚いだけじゃないからねバーンと夜に桜のランウェイ

毎度のことながら慌ただしい毎日がはじまって、嘘みたいな速さで時間が過ぎていく。意味わかんない意味わかんないゆっくりしたい、けれどできないが続く中、気づけば桜が満開になっていた。咲いたそばからすぐにひらひらと散っていくのがかなしい。でも綺麗。
昼間は控えめ、夜はまばゆく月やライトに照らされて、なにやら溜まった鬱憤を

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道草の家のWSマガジン - 2024年3月号

道草の家のWSマガジン - 2024年3月号


ミモザによせて - UNI

わたしの母は仕事・家事・育児に頑張る女性だった。お昼休みにスーパーに買い出しに行って、それを職場の冷蔵庫に入れていたという。帰りは電動なんてまだ無い元祖ママチャリぶっ飛ばし、すぐに夕飯の支度にとりかかる。
わたしには弟への嫉妬心が密かにあったんだろうと今は思うけれど、母に誉められたくて、洗濯物を取り込んで畳む係を小学校に上がる春に立候補した。母が喜んでくれた顔を鮮明

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道草の家のWSマガジン - 2024年2月号

道草の家のWSマガジン - 2024年2月号


ゆき - カミジョーマルコ

白い影に ふと目をあげると
外は雪がふっていた

ふわりふわり ひらりひらり

隣のアパートで子どものはしゃぐ声がする
すごいね すごいね

お姉ちゃんと妹と
すごいね すごいね

その上の階に住む若い母親は きっと
産まれてまもない赤ん坊を抱いて
窓の外をみてる

はじめてみる白い世界を
赤ん坊にやさしく語りかけている

その先に一人で住んでるおばあさんは
カーテ

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道草の家のWSマガジン - 2024年1月号

道草の家のWSマガジン - 2024年1月号


短いようで長い道のり - maripeace

先月はWSマガジンの原稿を送れなかった。途中までしか書けなくて、送らなかった。たぶんRTさん主宰の「壁の花の会」に参加した時のことを書いたと思う。会が終わった後に見た、ムクドリの大群のことだ。あれから何度か、同じ場所でそれを見た。

去年の夏、北海道を楽しむことに夢中になり、秋に東京に戻る直前に風邪をひいた。帰ったら、自分の部屋の窓から見える風景に

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道草の家のWSマガジン - 2023年12月号

道草の家のWSマガジン - 2023年12月号


12月 - のりまき放送

降車する停留所を間違えたくなかったので、電光掲示板が見える前方の席に座った。緩やかにバスが振動し、動き出す。町中を抜けて山側へと進んでいく。ちらりと前に座るおじさんを見ると、スマホでアダルトサイトを見ていた。画面が目に入ってきて、自分のほうが恥ずかしくなった。思わず窓の外へ視線を逸らす。降車ボタンが鳴る音。この人は絶対に滝行に行くだろうな、と思っていた人はいつの間にか

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道草の家のWSマガジン - 2023年11月号

道草の家のWSマガジン - 2023年11月号


沖縄の花 - maripeace

花を一輪買った。時々相談するお坊さんに、自然が足りてないから部屋に切り花を飾るといいよと言われて、花屋さんに選びに行った。デンファレという種類の蘭の花。淡いピンクと白のグラデーションがいいなと思ったのと、香りがないのがよかった。蘭に親しみを感じるのは、沖縄でよく見かけたからかもしれない。住んでいたアパートの前にお花屋さんがあって、一度だけお店の人と話をした。内

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道草の家のWSマガジン - 2023年10月号

道草の家のWSマガジン - 2023年10月号


琥珀色 - 田島凪

 きみから私をゆっくりと引き剥がし、その背中に枕を添わせる。夜が終わったことを、きみに気取られないようにそっと。腹筋に力を込めて上体を起こし、糸よりも細く息を吐く。目覚めはじめた呼気が、眠りの海に波紋を描かぬようにすっと。

 猫の足の運びで部屋を後にし、仄かに薄荷の香る台所に向かう。夜を見届けた鏡の前に立ち、時を告げる鳥のように身繕いをする。置く前に心で三つ数えれば、ブラ

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道草の家のWSマガジン - 2023年9月号

道草の家のWSマガジン - 2023年9月号


果実の話 - UNI

 フルーツ。fruit. 実を結ぶ。果実が成る。
 果実はすべて、人間のためにあるのではない。果実は動物に食べられ、糞として落とされることで種子を運ばせた。果実は動物に選ばせるために自らの色を変えた。果実は時に毒を持ち、自らを守った。
 ひとが一人生きる。それは果実である。
 ひととひとが生きる。果実が成る。
 日々が過ぎる。この日々は果実を実らせるために過ぎるのか。実ら

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道草の家のWSマガジン - 2023年8月号

道草の家のWSマガジン - 2023年8月号


「藤橋」覚え書き - スズキヒロミ

 昔々、あるところに、一本の橋がありました。その橋は藤の蔓を編んだ吊り橋で、村人から「藤橋」と呼ばれていました。
 藤橋は、その村と向こうの村の境にあった沼を渡り、そしてその先の道は中山道の宿場に通じておりました。そのため行き交う人は多く、荷を積んだ牛や馬も通りましたが、なにしろ藤蔓の吊り橋なので、渡るのに難渋する者が多かったといいます。
 ある時、そこに一

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道草の家のWSマガジン - 2023年7月号

道草の家のWSマガジン - 2023年7月号


慟哭 - カミジョーマルコ

月が泣く。
星が笑う。
風がこの世の終わりを告げる。

やがて空はガウガウと鳴き
足元の地はバラバラと揺れ
私は恐れをなしておのずから宙に浮いた
砂塵となる。

地に降りて一つの塊になることができず
かといって
風にもまれてみじんもなく消えてしまうこともできず

小さく小さく
削られながらもまだ存在しており

そして夢みているのだ。
嗚呼、いつまで夢みているのだ。

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道草の家のWSマガジン - 2023年6月号

道草の家のWSマガジン - 2023年6月号


犬飼愛生の「そんなことありますか?」⑦

そこのけそこのけ、あたしが通る。ドジとハプニングの神に愛された詩人のそんな日常。

「リサイタル、前夜」
 私の母は以前、自宅で近所の子供たちにピアノを教えていた。実家がピアノ教室だったので私も一応、ピアノが弾ける。私は母の期待を一身に受け、隣町の有名なピアノ教室に通わせてもらったが、そこの大先生は黒柳徹子と塩沢ときを混ぜてスパイスを足したような風貌で迫

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道草の家のWSマガジン - 2023年5月号

道草の家のWSマガジン - 2023年5月号

麻績日記 「おとずれ」 - なつめ

「わが心 なぐさめかねつ更級や をばすて山に照る月を見て」(よみびと知らず、『古今和歌集』 )

私にとって傷ついた心を慰めるのは歌である。
そう気が付いたのはウクレレで弾き語りができるようになってからだ。ウクレレで歌うことは、その歌の歌詞が私の心にすっと入って来て、そっと寄り添ってくれるようだ。そのことに気が付いてから以前よりもさらに歌をよく聴き、歌うことも

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道草の家のWSマガジン - 2023年4月号

道草の家のWSマガジン - 2023年4月号

今日という日がもうすぐ終わる - スズキヒロミ

明日にはもう故郷に帰るのだ と
ずいぶんとまた 急な話
そういえば 昔 それとは知らず
君の故郷を 旅したことがあった
境を越えると
行く手には はるか 山の壁
後ろにもまた 山の壁
右を向いても 左を向いても
ぐるりと囲む 山の壁
あれはまるで
お釈迦様の手のひらだ
ああそうか だから君は
故郷を出ようと 思ったんだね
お釈迦様の その手のひらに

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道草の家のWSマガジン - 2023年3月号

道草の家のWSマガジン - 2023年3月号

だれかの話 - UNI

車、西へ進む。
四日後、オホーツクに着く。
一旦、西へ進む。

富士の宝永火口、右眼に流れる。
春の空、霞む。
静岡、とにかく長い。

愛知、あっというまに流れる。
工場、「ランクルのふるさと」だという。

車、西へ進む。
空、黄色に霞む。
LINE、「それは黄砂」。
LINE、母からの。

四日後、オホーツクに着く。
一旦、西へ、着いた。

犬飼愛生の「そんなことありま

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道草の家のWSマガジン - 2023年2月号

道草の家のWSマガジン - 2023年2月号

今日の空の色は - RT

1月27日 寒い波 射金色
思えば朝から不思議な日だった。仕事場のパソコンのお絵描きソフトを突然使えるようになったのだ。今まで何回やってもできなかったのに。

仕事場の部屋に結構広いプレイルームがあって、コロナが流行りだしてからおもちゃや絵本などを撤去してがらんとしていたのだけどこのごろ少しずつ子供が遊べるように戻ってきていて、元気のいい声が耳に響きすぎる日もあるくら

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