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【ファジサポ日誌】46.春風~第11節ファジアーノ岡山vsレノファ山口~

山口戦前夜の金曜夜、拙記事「ファジサポ日誌」をきっかけに繋がりました関東在住のファジサポさんとお会いしました。

J2優勝、J1自動昇格を目指すチームとしては不甲斐ない戦いが続いていると言わざるを得ないのがファジアーノ岡山の現状です。
そんな成績の影響もあり、サポーターのチームに対する目線も少しずつ厳しくなっていると感じる昨今ですが、このファジサポさんとの語らいの中で、Jリーグの理念を体現しているともいえるこのクラブの良さ、負けても拍手や励ましで次の試合に選手を送り出す温かさ、仮に名だたるJ1クラブに「ぬるい」と言われることがあっても、このファジアーノ岡山が育んてきた良さを持ったままJ1に上がりたいものであると、大人の「夢」を再確認したのでありました。

1.試合結果&スタートメンバー

非常に盛り上がりました「前夜祭」の翌日、レノファ山口との一戦は残念ながらドローに終わりました。
対戦相手の山口は前節清水戦で大敗を喫していましたが、筆者は戦前から簡単に勝てるとは思っていませんでした。どんなチームであっても大敗した後の試合は、さすがに守備を引き締めてきます。まず先に失点したくないという意識が働くのが普通です。現状の岡山に、守備に強い意識があると予想されるチームを崩せるだけの攻撃力があるのか?
このあたりの力関係が勝敗を分けるのではないかと予想していました。

岡山としましては、前半の早い時間帯に良い形で先制に成功したところまでは良かったのですが、不運な失点で追いつかれる中、前半のうちに山口にトドメを刺せなかった点が痛かったと思います。こうした視点を中心に、今回はシンプルな論点でレビューしてみたいと思います。

J2第11節 岡山vs山口 スタートメンバー

先ほども述べましたように、大敗した後の一戦となった山口はメンバーを代えてきました。CBに対人守備に定評がある(3)ヘナンを入れ、ボランチやSBでもプレーする(15)前貴之をCBで起用。アンカーの(6)矢島慎也を含めて、技術的にしっかりしたセンターラインを形成し、後方からビルドアップするという起用意図であったと思います。
前線の3人は機動力に長け、両WGはドリブルに強みを持ちます。
前からのプレスと岡山の背後を突く、そんなねらいを感じさせます。

一方、岡山にも大きな変化がありました。
CBの(5)柳育崇、(23)ヨルディ・バイスの左右の位置を入れ替えたのです。これまでの試合では(5)柳を起点としたビルドアップに難が生じていました。この点を踏まえてというのは容易に想像できますが、当然入れ替えが分かったのは実際に試合が始まってからでしたので、この点は試合の進みを見ながら考えました。
前線では(7)チアゴ・アウベスに今季初スタメンに期待がかかります。(18)櫻川ソロモンとの2トップの関係性、この点にも注目が集まりました。

2.レビュー

J2第11節 岡山vs山口 時間帯別攻勢守勢分布図(筆者の見解)

「攻勢・守勢分布図」をご覧いただいてもわかりますように、岡山が追加点を奪えそうな時間帯はかなりありました。前半で31~35分、後半は55~65分、そして選手交代で勢いを取り戻した試合終盤です。

しかし、先ほども述べましたように前半で試合を決め切りたかったと考える理由に、この日の強風の影響があります。

大まかにスタジアムの北から南へ強い風が上空で吹いていました。よって前半、岡山は風上から攻めることになりました。一方後半は風下になるのですが、前線に送るロングボールやクロスなどが微妙に押し戻される、また時間帯によって不規則に変化する、また、その押し戻され方も一定せず、非常に岡山の選手たちの落下予測が難しくなっているように見えました。
これでは、どれだけ良い展開を作っても攻撃の精度は落ちてしまいます。

DAZNではわかりにくいのですが、スタジアム下側の客席からご覧いただいていた方であれば、同じように思われたかもしれません。

後半、チャンスを多く作りながらも決め切れなかった最大の理由はこの点にあったと筆者は感じました。改めて、前半で勝負を決めてほしかったと思います。

もちろん、風任せのサッカーではよくないのですが、今シーズン序盤の岡山は第5節のホーム甲府戦、そして第8節のアウェイ藤枝戦と非常に強風に晒される試合があり、風上の状況で得点を奪えてはいるのですが、勝利を得るためのアドバンテージまでは掴めていないのです。

風上に立っていたという意味で、重要であった前半の攻撃から、11分の先制シーンを振り返ります。この場面は動画がいいと思います(作図がめんどくさいからではないですよ)。

この前のシーン、山口の(14)沼田圭吾や(3)ヘナンのビルドアップに対して(14)田中雄大や(18)櫻川が連動してプレスし(14)沼田がタッチに逃げたことによるスローインが起点になっています。

山口は最終的にFP9人がボックス内に戻っているのですが、(18)櫻川からボックス左奥に侵入した(22)佐野航大への横パスにより、山口の守備を揺さぶりました。その後(18)櫻川がつぶれ役となり、(14)田中から(7)チアゴへ。(7)チアゴにも山口守備陣が粘り強く反応しますが、後退することでシュートスペースを作り豪快ながらもコントロールショット。(7)チアゴの身体能力と豊かなアイデアに舌を巻きました。チームとしても、前からプレスで嵌めたところを起点に分厚い攻撃を展開できましたね。素晴らしかったと思います。

11分チアゴのシュートに反応する山口GK吉満
精一杯体を伸ばしたが、シュートは絶対に届かないゴール左上隅へ決まった
前半から軽やかにボールを運ぶチアゴ
コンディションはまだ上積めそうな気がする

このゴールシーンは(22)佐野が奥を取るとチャンスになるのだなと感じたシーンでもありました。奥を取ったことにより(18)櫻川が自らのシュートとマイナスの折り返し以外に選択肢を持つことができた、これにより恐らく山口守備陣の予測を上回ることが出来たのだと思います。

その後の山口の同点弾については、何とも言えないというのが正直なところです。(5)柳としては(14)沼田のクロスに備えているから、あの位置にいた訳ですしね。試合後の木山監督はあの場面はもっとタイトのいけたと、自分たちにベクトルを向けましたが、ゴール前でファールを取られるのもマズイです。
失点直後すぐに(1)堀田が(5)柳を励ましていたのは良かったと思います。ちょっとした場面ですが、今のチームの雰囲気が出ていたと思います。

そんなことよりも…、今シーズンに関して筆者は一環して主張してきましたが、こうした試合を2-1で取ることを目指してほしいのです。そうすることでツキの無さも払拭してほしいですし、それがおそらく今の岡山が目指しているチーム像なのだと思います。

前半ソロモンが迎えた決定機
切り返さず縦に行っても…など
色々あるが撃ち続けてほしい
J2第11節 岡山vs山口 31分岡山決定機

非常に端的な図で表してみましたが、岡山の決定機です。
このシーンに(23)バイスと(5)柳の位置を入れ替えた意図が見えます。右に(5)柳がいる時は同様の場面で(16)河野に出す可能性が高いと思うのですが、ここで(23)バイスは得意の対角線フィードで一気に山口陣内左へ送ります。風に乗ったボールは、ボックス手前の(7)チアゴの頭へ。(7)チアゴの落としを受けた(22)佐野が丸囲みの左サイド奥へ侵入。ボックス内に侵入した(7)チアゴへパスを出しますが、(7)チアゴのシュートは残念ながら枠を外してしまいました。

後半のバイス
右でのプレーぶりはスムーズに映った

右に(23)バイスが入ったことで一気に岡山のチャンスになったシーンでした。(23)バイスはこの対角線フィードのみならず、(18)櫻川に裏を狙わせるパス、そして「途中まで」は(6)輪笠祐士、(27)河井陽介のボランチに付けるパスもしっかり出していました。

「途中まで」というのは、前半途中から(6)輪笠や(27)河井に山口のIH(32)五十嵐太陽や(10)池上丈二がマークについたため、若干この2人へのパスが少なくなった為です。
しかし、これはこれで山口の攻撃を単調化させる効果がありました。
山口の攻撃を守備のタスクが増えたIHをあまり経由させず、前線のスペースへロングボールを送る攻撃に限定させたという効果があったのです。

「リンクマン」という名がふさわしい
河井の働きぶり
山口の五十嵐を追う輪笠
最近数試合の中では最も表情が良かったように思えた。
後ろの佐野も必死でフォローする

試合後のインタビューで木山監督は(43)鈴木喜丈も含めた左右の配球バランスについて触れていました。この先の戦いを踏まえましても非常に大きな決断であったと思います。

(7)チアゴには決めてほしかったですね。とはいえ、この先の出場数が増えてくれば(7)チアゴのコンディションも上がってきそうですね。今後に期待します。

要はこの時間帯に2点目を取れていれば…ということなのです。タラレバは禁物とは言いますが…。

この試合の岡山の枠内シュートは14本中3本。強風の影響はありましたが、やはり枠内率は低いと思います。以前にクラブも触れていたと思うのですが、岡山の課題のひとつは枠内シュート率の低さにあります。

ここから先は筆者の印象が主体となってしまいますが、岡山の選手はかなり難しい体勢でシュートを撃っているように見えます。
更に体勢を難しくしている理由を考えた時に、斜めからのクロス、パスに対応するケースが多いという点は考えられないでしょうか?
もし、データをお持ちの方は調べてみてほしいです。

後半、枠内に飛ばした櫻川のヘッドは、吉満の好セーブに遭う

斜めからのクロス、つまり低い位置からのアーリークロスが多いという事なのです。もう少しFWが合わせやすい(相手DFも対応しやすいかもしれませんが…)横からのクロスなりラストパスが欲しいと思うのです。

後半の河野のクロス
「速い」展開が求められる分、クロスを入れるタイミングも早くなってしまうのだろうか?

以上のような意味で、この31分(22)佐野が左サイド奥を取ったというのは意義があったと思います。完全な状態の(7)チアゴでしたら決めていたパスであったとも思います。

自身でのシュート意識も高いと思われる(22)佐野は、左サイドボックス手前でカットインを選択するケースが多いのですが、最近はその動きが相手に読まれていることもあり、チームとしてもフィニッシュに至らない場面が増えています。

非常にもったいないです。
右利きではありますが、図で丸囲みしたエリア左サイド奥へ縦に突破するチャレンジも見たいところです。それが難しいようでしたら、左SBに(2)高木友也を先発起用し左奥からクロスを上げさせる、そして(43)鈴木は左CBで起用する手もあり得ると思います。

こうした場面からカットインだけではなく、縦への突破も見てみたい

今シーズン序盤の岡山の攻撃は(16)河野⇒(5)柳のホットラインに頼るところが大きかったのですが、対戦相手にもよりますが、チームとしての攻撃の軸を左サイドに移そうとしているのかな?と筆者はこの山口戦全体を通して感じたのでした。

私は(5)柳推しですが(5)柳もウカウカしてはいられません。
彼からのビルドアップもこの試合では安定していたと思いますので、更なる奮起に期待します。

後半は山口に決定機を作られるが、堀田を中心に高い集中力で勝ち越しを許さなかった

3.まとめ

試合途中でDAZN実況のアナウンサーさんが「岡山は5秒以内の即時奪還」を目指していると紹介していました。
先制点のシーンも含めまして攻撃の面では、そのねらいが発揮できていた試合であったと思います。

一方で、後半体力が落ちる時間帯であっても前線の選手は「5秒以内」に奪還しなくてはいけないので、まず相手の最終ライン目がけて行っちゃうんですよね。後ろもしんどいですから、連動できず、結果的に止められずにボールを自陣まで運ばれてあわやというシーンが散見されました。

この後半の戦い方に別のセット(ボールを奪う位置の変更)を用意しなければ、上位進出は難しいと思いますし、セットを作るための選手、マネジメントの能力は備えているチームだとも思います(例えば千葉戦の後半途中からのように)。

しかし、今シーズンは途中で微修正が入りながらもこの理想にチームはこだわっているなとも思えるのです。

くどいようですが、私は「岡山のサッカーはこれだ!」という「岡山スタイル」を作らないと真の強いチームにはなれないと考えていまして、これが「岡山スタイル」になるのであれば愚直に「即時奪還」、「相手コート」での戦いという理想を追ってもいいのかなと、今の岡山の戦いぶりを肯定的に捉えています。

次はアウェイ秋田ですか。
秋田の春はまだ寒いのでしょうね。
果たして、ファジには遅き春が訪れるのか?
引き続き応援していきます。

今回もお読みいただきありがとうございました。

※敬称略

【自己紹介】
麓一茂(ふもとかずしげ)
地元のサッカー好き社会保険労務士
JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ
ゆるやかなサポーターが、いつからか火傷しそうなぐらい熱量アップ。
ということで、サッカー経験者でもないのに昨シーズンから無謀にもレビューに挑戦。
持論を述べる以上、自信があること以外は述べたくないとの考えから本名でレビューする。
レビューやTwitterを始めてから、岡山サポには優秀なレビュアー、戦術家が多いことに今さらながら気づきおののくも、選手だけではなく、サポーターへの戦術浸透度はひょっとしたら日本屈指ではないかと妙な自信が芽生える。

応援、写真、フーズ、レビューとあらゆる角度からサッカーを楽しむ。
すべてが中途半端なのかもしれないと思いつつも、何でもほどよく出来る便利屋もひとつの個性と前向きに捉えている。

岡山出身ではないので、岡山との繋がりをファジアーノ岡山という「装置」を媒介して求めているフシがある。

一方で鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派でもある。
アウェイ乗り鉄は至福のひととき。多分、ずっとおこさまのまま。



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