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【#Real Voice 2023】 「等身大の喜怒愛楽」 3年・北村公平

時間の経過が恐ろしいほど早く感じる。
私がこの組織で夢を追うことができる時間もあと1年になった。


夢。


この組織に来てからどんな夢を持ったのだろう。
誰と何を叶えたかったのだろう。
誰にどんな姿を見せたかったのだろう。





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今、私には夢があります。
それはこの組織でしか叶えることができなくて、
あと1年間の間でしか叶えることができなくて、
きっと一瞬で終わってしまうものであって、
私にしか描くことができない夢であると胸を張って言える。



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そんなもの自分の中だけでイメージしてればいいじゃんって、
1年前の自分なら嘲笑うんだと思う。


等身大の喜怒哀楽を表現することは少し恥ずかしいけど、それも含めて北村公平らしさだと信じて綴りたい。
哀しさを愛しさに変えられるような1年にしたい。
きっと長くなりますが、最後まで読んでいただければ幸いです。


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どこか満たされていなかった今までの3年間。
答えはあまりにも簡単なものだった。



”私はここにサッカーで勝負しに来たのだから。”





180分。2試合。


私が2023シーズン公式戦のピッチに立つことを許された時間だ。
年間を通じて一切離脱をしていなかったにも関わらず、今季9人いたGKの中で最も少ない出場時間だった。

それでも総理杯の初戦を除いた全試合のトップチーム公式戦のベンチにはスタッフとして入り続けた。


悔しかった。


いや、この悔しさを味わうために副務になった。


それにも関わらず忙しさを言い訳にする自分がいた。
満たされていなかった時間の答えから目を背けた。

カイレン(3年・ヒル袈依廉 / 鹿児島城西高校)やまだ(4年・山田怜於 / 鎌倉高校)の背中が本当に大きく見えた。
何が足りないのか、何でメンバーにも入れないのか。
考えても考えても日々生み出す行動は同じにしかならなかった。



我が息子が出るわけでもないのに、ほぼ毎試合、重いカメラを背負って自宅から1時間半かかる東伏見に写真を撮りに来てくれる母親。アウェイの関東リーグも、総理大臣杯で岩手にも来てくれた。


昨年から始めた在宅ワークで貯めたお金を全て注ぎ込み、より良い写真が撮りたいと高性能なレンズを購入したらしい。


私は母親に何か返せただろうか。


そんな母親の姿に応えられていただろうか。


何が足りないのかなんて呑気に考えている暇はあったのだろうか。


本気で今を生きない理由があっただろうか。



当たり前に来ると思っているものだからこそ人はありがたみを感じなくなってしまうのだろう。
当たり前にいてくれると思っている人。
当たり前に来ると思っている朝。
当たり前だと思っているア式での時間。


4年生がいなくなって、1つ1つの瞬間に最後という言葉が付き纏うようになって、ようやく気づくことができた。


気概


関東リーグの最終節、順天堂大戦。
1-0で迎えたハーフタイムを終えて選手を送り出し、いつものようにベンチメンバーで円陣を組んだ。
毎節その場の流れでその場に相応しい"誰か"が指名され、一言話す。
昇格の可能性を残した最後の45分に向かう円陣で指名されたのは4年マネージャーのれお君(平山怜央 / 刈谷高校)だった。

(100周年で学生リーダーを務めてくれているれお君。気持ちが離れていくメンバーも多い中でれお君は責任感を持ち続けてリーダーとしての役割を全うし続けてくれた。
100周年を迎えるのは自分の代なのに、れお君に任せっきりになってしまっていた時期があった。そんな申し訳なさと感謝の気持ちがあった。)

れお君は一息ついて言葉を紡いだ。

「ラスト45分。おれたちはまだまだ上手くなれると思うし強くなれると思う。その気概を持って早稲田らしく戦いましょう。出てる選手、これから出る選手、出れない選手それぞれの立場があって想いがあると思うけどそれぞれの立場で出来ることをやりきりましょう。全員で戦って、勝って昇格しましょう。」

1字1句とはいかないがこんな内容だったと思う。

最高に胸が熱くなった。
骨の髄が震えた。
どうしてだか自分でも分からなかったけど、
1人控え室に戻って涙がこぼれた。


あの言葉を聞いて
サッカーで勝負しに来た私よりマネージャーのれお君の方がよっぽどサッカーに向き合っていると感じさせられた。
自分の無力さを骨の髄まで感じさせられた。



言葉では強い早稲田を取り戻す。
100周年は絶対に1部で戦わなくちゃいけません。
春先、私はそんなことを言っていたと思う。
でも本質的に何をすればいいのか。
どんな行動ができたのか。

不甲斐なさともどかしさが涙という形でこぼれ落ちたのだろう。


あの言葉は私に足りなかった気概を的確に表現していた。


最終節の最後の最後にして、強い早稲田を取り戻すための心意気が、息遣いが分かったような気がした。



等身大の喜怒愛楽


このブログのタイトル。

ありのままのゆめ

と読むことにしよう。


私はこの言葉がよく似合う子どもだったと思う。
自分が思うことはなんでも主張して譲らず、勝負に対してはとことん負けず嫌い。
勝った時は全力で喜んで、
負けた時は全力で泣いて、
悔しい時は全力で悲しんで、
苦しい時は本当によく顔に出る。

自己中心的で何度母親に叱られたかわからない。

そんな自分に対して人間らしくていいねと中学の先生に言われて、自分らしさかもしれないと思った。


そんな私も責任感という言葉を意識するようになってから、感情をありのままに表現すること、喜怒哀楽を抑えることを学んだ。
責任感も今の私らしさを作り上げる言葉だなと感じる。
自分が任せてもらった仕事は自分がやらないと気が済まない。

高校でキャプテンを務めた私は責任感という北村公平の鎧を作り上げた。

その鎧を纏った私を多くの人は褒めてくれた。
誰にでもできることじゃないと。
それもまた自分らしさなのかもしれないと思った。


もしかすると今主務を務めようとしている自分は、鎧を纏い喜怒哀楽に制限をかけている北村公平なのではないか。




いつしか山市(2年・山市秀翔 / 桐光学園高校)を見て憧れを抱くようになった。



ある日、後輩マネージャーにこんなことを言われた。

「公平くんは今120%出している。公平くんは来年80%の力を出し続けていてほしい。公平くんの負担を減らすために私は頑張ります。」

これは今年、私が早慶戦40日前に40度の熱で倒れて業務を停止させたり、タスクを抱え込みすぎて音信不通になったりと自己管理の無さから色々な人に迷惑をかけたことがあり、それを慮った上でかけてくれた言葉だった。


気にかけてくれて素直に嬉しかった。
同時に腑に落ちない自分もいた。


主務という役職は、タスクを抱え込んで機能しなくなってはいけないのだと思う。
私の課題は周りの人にどれだけ仕事を預けられるかだと理解している。
そこに私の成長の伸び代があると理解している。



理解はしている。


でもきっと

120%の力で、力尽きるまで走り抜けることが北村公平の喜怒哀楽なのだと思う。



今まで感情を表現してこなかったわけではない。

ここから全く別人になろうと思っていないし、冷静に考えることを放棄するわけでもない。


ただ、北村公平の喜怒愛楽を表現したい。



サッカーに生きる意味を体現したい。
学生でいられる時間をサッカーに費やす意味を体現したい。

その瞬間、1つ1つのページを彩りたい。
めくる度にワクワクするような、そんな1年を過ごしたい。


まだ見ぬ北村公平を表現したい。



3年越し



2023年12月9日(土)


大学に入って初めてトップチームの公式戦に出場することができた。
内容は酷かったし自分の良さも出せなかったけど、無失点で勝つことができた。

”トップチームでの公式戦”という意味では2020年11月28日の高校サッカー選手権神奈川県大会決勝ぶり。
自分のミスもあり2-3で敗戦して一生残る後悔をしたぶり。



この3年間、ピッチ内での姿がより北村公平らしくなると考えて、ピッチ外の活動に力を入れてきた。
早慶戦の運営、100周年プロジェクト、スポンサー探し、寮外リーダー、副務業、、

これらを通じて私自身が多くの人に支えられてサッカーをしていることを改めて感じたし、サッカーを何不自由なくできる環境がどれだけ尊いことであるのかを改めて感じた。

苦しい瞬間なんていくらでもあった。
目を背けたくなる瞬間も山ほどあった。


でも、公文君(令和3年卒・公文翔)がウノゼロ早稲田を体現したり、生方(令和5年卒・生方聖己)めぐる(令和5年卒・平田周)が関東で生き様を見せたり、山田(4年・山田怜於 / 鎌倉高校)が脳震盪になったり。
どこかで私自身をモチベートしてくれる人たちに出会ってきたし、魅せてもらってきた。



私がピッチに立つ意味は、
”ただ173センチのGKが早稲田のゴールを守ること”にとどまらない。
とどめてはいけない。



だから私はピッチに立ち続けたい。



3年の時を経て再び立ったピッチからは前とは違う景色が見えた。


髙見(2年・髙見正史 / マネージャー)が磨いてくれたスパイクを履いて、洗ってもらったグローブをつけて、 颯馬(3年・安斎颯馬 / FC東京内定)のまっすぐな眼差しと目を合わせて、伊勢(3年・伊勢航 / ガンバ大阪ユース)のガラガラ声を聞いて、舩越(3年・舩越嶺 / 市立浦和高校)しょうえい(3年・梅林頌英 / 國學院大學久我山高校)に背中を叩かれて、覚悟が決まった。


当時私が巻いていたキャプテンマークを直哉(3年・駒沢直哉 / ツエーゲン金沢U-18)が巻いていて複雑な気持ちだった。
当時の私より何倍も様になっていた。


当時も共に出場した山市の背中がとても大きく、逞しくなっていてなんだか嬉しかった。やっと同じピッチに立てた。


Iリーグ、FC(社会人リーグ)と自分達のサッカーを追い求めながら苦しい時も共に戦ったしゅん(2年・谷村峻 / FC東京U-18)真生也(3年・成定真生也 / 日大藤沢)とデビューできた。特に同部屋の真生也にはいつも刺激をもらっていた。


試合後の未羽(2年・伊藤未羽 / マネージャー)の強烈なグータッチ、永戸ちゃん(2年・永戸彩花 / マネージャー)のグットサインにどれだけ安心しただろう。
緊張しているつもりは全くなかったけど、ほっとした。



試合後、見に来ていた両親のところへ向かった。

いつもより目尻に皺を寄せて笑う母親といつもに増して優しい表情の父親。



サッカーをしてきて1番ありがたみを感じた瞬間だった。




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今、私には夢があります。
それはこの組織でしか叶えることができなくて、
あと1年間の間でしか叶えることができなくて、
きっと一瞬で終わってしまうものであって、
私にしか描くことができない夢であると胸を張っていえる。

そして同時に、絶対に私1人では描くことができない夢です。






日本一の主務になります。






日本一チームを愛する主務であって
日本一チームを引っ張る主務であって
日本一ピッチ内外で活躍する主務でありたい。

そして新国立競技場で早慶戦を開催し、
20000人の観客を集め、
そのピッチに立ち、
北村公平に関わる全ての人と喜びを分かち合います。





なんでこれを目指すの?
これを達成した先に何があるの?





わかりません。




いや、そうはいっても


目を背けてきた自分に向き合いたい。とか
まだ見ぬ北村公平に出会いたい。とか
山田を超えたい。とか
国立開催を切望し続けた早慶先輩マネージャーたちの想いを形にしたい。とか
日本サッカーの発展のためには大学サッカーの発展は必要不可欠だ。とか
普段サッカーに触れる機会が少ない人たちにも早慶戦をきっかけにサッカーに興味をもってもらいたい。とか
そうすれば大学サッカーの認知力向上に繋がるはずだ。とか

色々考えはあります。


でも



少なくとも、私の想いは上記の内容で説明できていいものだとは思っていません。
説明できるものでもありません。



もっと深い意味と高い価値があると信じています。
それを見つけるラスト1年。



全くテスト勉強しない方が逆にいい点数が取れるんじゃないかという
根拠のない自信みたいなものです。



根拠はないけど



みんなとならできる気がする。



2022年3月21日を乗り越えた逞しい同期。

新人戦全国を勝ち上がる頼もしい後輩たち。

慶應運営陣を引っ張る豪、友香、(鬼丸)。



みんなと成し遂げます。






等身大の喜怒哀楽を表現することは少し怖い。


”哀”は”愛”に変えていこう。


自戒を込めて。



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私の成り行きによって良くも悪くも影響を与えてしまうかもしれない人たちへ。



先に言っておきます。

たくさん迷惑をかけてごめんなさい。
でも最後は「あいつがいたからちょっとはいい1年だったな」と言わせてみせます。
あと1年だけわがままを聞いてください。




ここまで読んでいるか不安ですが、最後にやまだへ。

後輩教育、本当に大変だったことと思います。胸中お察しいたします。脳震盪になって「なんで俺はここにいるの?」とひたすら聞いてきた春先から始まり、西が丘の救護室で寝るわ、岩手ではうなされるわで大変充実した1年を過ごしたことでしょう。後輩からは慕われ?、キャプテンマークも巻き、まさにスーパー主務でした。来年楽しみにしててください。救護室では寝ない主務になります。冗談はさておき、本当にお疲れ様でした。大変お世話させていただきました。


桐光日藤
ビッグリスペクト

やろう。4年。


◇北村公平(きたむらこうへい)◇
学年:3年
学部:文化構想学部
前所属チーム:桐光学園高校


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