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【#Real Voice 2023】 「早稲田の1ミリ」 3年・ヒル袈依廉

あの試合を勝っていれば…










あの失点さえなければ…










あの1本を…








最後に見えた景色が違ったと思うと本当に暗然とする。







大学生活折り返しの3年目に突入した今シーズン。これまでの2年間と違い、激しく試合に出たり出なかったり。
リーグ前半戦序盤は失点も少なく、そこそこ勝ち点を積み上げていたが、アミノバイタルカップ(以下アミノ)前の3連戦で怒涛の10失点。勝ち点を1つも積み上げることができなかった。
このままでは…とアミノからベンチに下がることになった。
GKが1度変わるとチームの雰囲気をガラッと変えてしまうため、なかなかスタメンを奪還することは容易ではない。しかも、最大の目標である日本一にチャレンジできる唯一の大会であり、かなり意気込んでいたため、このタイミングでの交代は心が痛かった。
直接的にチームを勝たせることはできなくなったが、早稲田の一員としてどうにかして力にはなりたかったため入れ替わりの先輩、晃士くん(令和2年卒・山田晃士)の鼓舞をそのまま僕なりにパクらせてもらった。
1度負けたら日本一が取れないという、とてつもないプレッシャーはあまり感じてほしくなかったためできるだけ笑顔で送り出そうと決めた。
驚異的な得点力を発揮したこの大会。エンジンがかかり始めた。
連戦での疲労を取るためターンオーバーとして出場した準決勝。1-1のPKで敗れた。失点も距離があり角度もないのにも関わらず、ニアサイドを射抜かれた。
あの失点がなかったら、PKを1本でも止めていたら、決勝戦も勝って関東制覇していたのかもしれない。しかし準決勝の前の試合で全国大会出場は既に確定していたので、まだ最大の目標「アレ」にはチャレンジできる。それまでにまだまだ成長しようと思えた。


連戦での戦いは1度終了し、通常通りのリーグ戦が再開した。出番はない。やることは変えず、ただチームの勝利をサポートした。しかし7月30日に行われた山梨学院大学戦。終了間際同点に追い付かれてしまう。この時の山梨学院は負けが続いており、順位も低迷していた時期。思い返せばこの戦いを機に立て直され、勢いづけてしまい、好調のまま最終3位まで走られた。
同点ゴール直後のホイッスル。同点なのに、大敗したかのような会場の雰囲気。
あの失点さえなければ…
あの反転さえ抑えてれば…
はたまたあのスローインさえなければ…




この試合から5日後、次スタートで行く。監督からの言葉。
突如訪れたスタメン奪還。なんとかして、この苦しい状況を自らの手で打破したかった。さらには全国大会前の最後のチャンスかもしれない。最大のアピールをしてチームを助ける。結果は前半から立て続けに2失点。後半はなんとか2点取り返したものの、全くチームに貢献できず、逆にGKが攻撃陣に助けられた。あえなく次節からベンチに戻され、またサポートに回る形になった。またよぎる。
あの失点さえなければ、今頃チームは全国大会へ向けて弾みをつけていた。スタメンは死守できていた。
あの1本だけでも…




その後、リーグ戦2試合と総理大臣杯(全国大会)の出場はなく、2ヶ月近くスタメンの再奪還を待ちわびた。



その時が来たのは、10月1日に行われた後期リーグ開幕戦。相手は前期で4失点している立正大。先が分からず、順位も混沌としていたため、1度負けたら上位との差が広がるという現実はあったが、今思うとこの時は冷静だった。開始直後にサイドから特大ドライブシュートを食らったが、その後は少しずつ安定を取り戻した。この試合もなんとか引き分けに持っていけたため、まだチャンスはあった。だがそのチャンスも全勝しないと意味がないようなものだった。

ここからノンストップで週末に試合が迫ってくる。

続く産業能率大学戦もスタメン。
勝利。


駒澤大学戦スタメン。
両者無得点での引き分け。やるだけのことはやった。守備陣としては実質勝ち。しかし、勝利を積み上げないといけないことには変わりはない。


青山学院大学戦スタメン。
勝利。
地道に勝ち点は積み上げられている。だが、それと同時に上位陣も勝ちを積み上げていた。


日体大戦スタメン。
結果は2-2。ここで痛恨の引き分け。失点もかなり良い精度のシュートを打たれた。試合後他会場の結果を見たら、運よく上位陣もこけていた。まだチャンスはあった。


関東学院大学戦スタメン。
関東学院大は2位を走っていて、自動昇格を勝ち取るためにはこの直接対決を絶対に制さないといけないという試合だった。先制はしたが、後半開始直後追い付かれ、もう1回勝ち越すが、終了間際に直接フリーキックでまた追い付かれた。このフリーキックがシーズン1悔しい失点になってしまった。ここもポジショニングは6:4でクロスを狙ってしまった。時間帯や相手の分析から直接ゴールの可能性が高いのに。なぜかクロスを狙った。仲間からの直接ゴールあるぞという警告の声も確かに聞こえた。それでもクロスを狙ってしまった。ビデオで見たらシュートコースは甘々。少しボールに触った。でも弾ききれなかった。完璧な判断ミス。直接対決を落としてしまった。


1部参入プレーオフ進出の3位を狙うべく、残りの2試合は他力本願ではあるが、2連勝が絶対条件だ。


迎えた亜細亜大学戦。スタメン。
前半は苦しんだがなんとか先制し、後半へ。地道に追加点を取り大差での勝利。他会場の速報を待った。

この時の順位表がこちらです。

1 駒澤大 44pt 自動昇格圏
2 関東学院大 39pt 自動昇格圏
3 山梨学院大 36pt  1部参入プレーオフ圏
_______________________________________
4 立正大 35pt
5 日本体育大 35pt
6 早稲田大 34pt

解説すると1度勝てば3pt獲得。負けたら0ptなので、早稲田が最終節に勝利し山梨学院、立正、日体が同時に負けたら一気に3位となり、1部昇格に望みをつなげられるというものです。


迎えた最終節もスタメン。相手、順天堂大学は僕らと逆で、この試合を落とすと3部リーグへの入れ替え戦に進んでしまうという立ち位置。僕らも望みをつなげるために絶対に落とせないゲーム。
結果は、押されていたものの、なんとか耐え抜き2-1での勝利。しかし、思いは届かなかった。立正と山梨学院が勝ちプレーオフ進出とはならなかった。

最終順位です。

1 駒澤大 47pt 自動昇格 優勝
2 関東学院大 39pt 自動昇格
3 山梨学院大 39pt 1部参入プレーオフ
_______________________________________
4 立正大 38pt
5 早稲田大 37pt
6 日本体育大 35pt

全ての試合を終えて、こうやって結果を見ると、より一段と思えてくる。

あの試合で勝っていたらな。


あの失点がなかったらな。


あのフリーキック1本さえ止めていたら。40ptで2位自動昇格までもものにできたのに。
あと1ミリ、ポジションを修正したら。あと1ミリ、手を伸ばしたら。


去年の日本は1ミリに沸いたが、今年の自分は1ミリに泣いた。


これほど最後まで何が起こるかわからないシーズンは初めてだった。結果をものにできなかったのは悔しかったし申し訳なかったが、得た経験は遥かに大きなものだった。


早稲田を勝たせるチャンスは限られてきている。1つでも多くのゲームを皆が笑って終えられるように現在、新シーズンに向けて猛特訓中です。


それでは2024シーズン、特大リニューアルした状態のヒル袈依廉としてまたお会いしましょう。



◇ヒル袈依廉(ひるかいれん)◇
学年:3年
学部:スポーツ科学部
前所属チーム:鹿児島城西高校

【過去の対談記事(早稲田スポーツ新聞会 企画・編集)はコチラ↓】


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