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鮮魚コーナーで待ち合わせ
仕事帰りに毎日寄るスーパーがある。
小ぢんまりした古い店なので品揃えもあまり良くないが、お惣菜が美味しくて、寿司や刺身がとても安い。
この店の鮮魚コーナーには生簀がある。近くの市場で仕入れているのか、鯛やヒラメが泳いでいたり、サザエが張り付いていたりもする。一度、見たこともないような大きなカニがチキチキ歩いていたこともある。生簀の中の大物を買ったことはないが、水族館のようでとても良い。僕はこの鮮魚
プッチンプリンの神様
「お箸、スプン、おいくつ入れる?」
「あ…2つ」
手をピースの形にする。
バイトのゴードンさんは、大きな手で割り箸とスプーンを鷲掴み、3セットずつ袋に入れた。
やたら厳しく年齢確認するくせに、こういうところは大雑把である。
「アリャッターマタコシマセ〜」
4円の袋には、酒とパスタとラーメン、ポテチ、スイーツ、そしてバカみたいにでかいプッチンプリンがギチギチに詰まっている。
ゴードンさんには一人で食
ウェディングケーキを倒した
私は今、街を全力疾走している。
涙なのか鼻水なのかも分からない液体で顔が濡れて、向かい風が痛いほど冷たい。
職場から走って、走って、遂に見覚えのない景色の場所までたどり着いた。
貸テナントの窓ガラスに映った自分を見る。
とても普通の会社員には見えない上等なシルバーのスーツ。しかし、右肩から袖にかけて生クリームでギトギトに汚れている。
胸元の名札を外し忘れていたことに気づく。
「終わった…」
自分の
冬晴れのコーンスープ
「あ、ある…!」
ようやく、ようやくこの季節が来たのだ。
1列増えた「あたたか〜い」コーナー。
そのすみっこに、私の待ちわびた缶が鎮座していた。
じっくりコトコトとろ〜りコーン。
いそいそと財布をあけて小銭を取り出す。
ガコンと音を立てて、小ぶりな缶が落ちてきた。
コーンが偏らないように、よく振ってからプルタブを引く。
なめらかなスープ、甘いコーン。
これが冬の出勤前の幸福というものである。
ゆっ
座敷わらしはさとり世代
「ただいまぁ」
切れかけの蛍光灯が、テン と音を立てながら点く。
一人暮らしなのにわざわざ帰宅の挨拶をするのは、泥棒やストーカーなんかに同棲を匂わせるという防犯テクニックである。
実家から出る時、「ためしてガッテンで言ってたから毎日絶対やりなさい!」と母に強要されて、いつの間にか習慣化してしまった。
彼氏なんてもう3年居ないのに。悲しいライフハックである。
仮に長年ひっそりストーキングしている紳士