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おもちが来た日

「いいもの買ってきた」
おつまみでも紹介するように、彼女はビニールのかかった鳥かごを見せびらかした。
白い羽根に赤いくちばしの文鳥が、止まり木と金網とを三角形に行ったり来たりしている。
「可愛い」
彼女と一緒に暮らしはじめてまだ1ヶ月だが、付き合ってもうすぐ6年になる。
相談なく突飛な行動を取るのにはだいぶ慣れていた。
「私、白い文鳥に『おもち』っていう名前を付けて飼うのが夢だったの」
「へぇ、じゃあその文鳥おもちっていうの?」
「そう、おもちちゃん」
オスだけどね、とつぶやいて、僕も彼女も真っ白なおもちに見入った。
おもちは飽きることなく、三角形にびゅんびゅん飛んだ。

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