ビジタリズム

ある時、ふたりのサーファーが初めて訪れた「万里浜(まんりはま)」。そこは、異色のサーフ…

ビジタリズム

ある時、ふたりのサーファーが初めて訪れた「万里浜(まんりはま)」。そこは、異色のサーファーたちがひしめくワケありのポイントだった!?クセの強いローカルサーファーに翻弄されつつも、そこで割れる最高の波、そして人々に、ふたりは徐々に惹きつけられていく——(隔週の水曜日配信)

記事一覧

【サーフィン小説】ビジタリズム|第23話

<22ラウンド目 症候群 23ラウンド目 Have To Go誰にも気づかれないように、少しずつ少しずつ高度を下げていた初夏の太陽は、午後5時を超えると一気にその光の色合いを赤…

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【サーフィン小説】ビジタリズム|22話

<21ラウンド目 ツイン 22ラウンド目 症候群2階のバルコニーからビーチへと伸びる階段を降りると、マチャド頭が、シャッターが半分開いた倉庫の入り口に手をかけてスマー…

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第21話

<20ラウンド目 再現力 21ラウンド目 ツイン「前野くん、こっち側から出て、下に降りてもらえます?下が倉庫になってるんだけど、そこで一応、一筆書いてもらうから」 い…

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第20話

<19ラウンド目 別人格 20ラウンド目 再現力ナミノリが頷く瞬間を見届けると、鬼瓦は自分も満足気に頷いた。 「そうだろ?ウチが全面的にサポートするから。ナミノリはな…

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第19話

<18ラウンド目 発注 19ラウンド目 別人格ナミノリの姿を見た瞬間、力丸は鬼瓦の壮大な計画の全てに合点がいった。 脳裏に、自分が前乗りをカマした直後の、ナミノリのラ…

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第18話

<17ラウンド目 一掃 18ラウンド目 発注「それにしても……」 握りしめたグラスには、まだ半分ほどの“サンライズ コシハラエール”が残っていた。 力丸はその霞がかっ…

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第17話

<16ラウンド目 鬼瓦 17ラウンド目 一掃鬼瓦に押し込められた小さな部屋は、いかにも事務室といった体で雑然としていた。 部屋のちょうど中央にグレーのオフィスデスクが…

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第16話

<15ラウンド目 マチャドヘッド 16ラウンド目 鬼瓦カウンターの後ろに突然現れた男の顔は、弁当箱を彷彿とさせるサイズと輪郭を持っていた。 歳のころは40代後半か、いや…

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第15話

<14ラウンド目 入店 15ラウンド目 マチャドヘッド店内に一歩足を踏み入れた瞬間、力丸の目の前には、想像していたよりもずっと開放的な光景が広がった。 まず、明るい。…

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第14話

<13ラウンド目 ワイプアウト 14ラウンド目 入店力丸が再びステップワゴンまで戻ると、ちょうど和虎が上がってくるところだった。 その顔は、付き合いの長い力丸から見て…

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第13話

<12ラウンド目 フルスーツ 13ラウンド目 ワイプアウト 結局、力丸は15分ほどの時間をビーチで潰した。 オッキーと被りたくないという思いから、普段やらないサーフィン…

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第12話

<11ラウンド目 ふたたび、本領発揮 12ラウンド目 フルスーツ(!!!) プルアウトしたサーファーは、空中でボードのレールを掴むと、そのまま即座にパドルバックの体勢…

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第11話

<10ラウンド目 カオス 11ラウンド目 ふたたび、本領発揮太陽は、さらにその位置を高くしていた。 今何時だろう?日の出とほぼ同時にパドルアウトして、体感的には2時間…

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第10話

<9ラウンド目 Take it easy 10ラウンド目 カオス20mほど先で砕け散った波のスープが押し寄せてくる。白波に飲み込まれそうになる直前、腕立て状態でボードのノーズを海中…

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第9話

<8ラウンド目 万里に来た理由 9ラウンド目 Take it easyサイズが、上がってきた。 入ってくるセットはコンスタントに頭ぐらいある。 同時に次第に強まってきたオフショ…

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第8話

<7ラウンド目 117シェイプス 8ラウンド目 万里に来た理由 南端のピークへ向けてパドルしていくオッキーの後ろ姿を、力丸と和虎は、ミドルセクションに漂いながらしばらく…

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第23話

【サーフィン小説】ビジタリズム|第23話

<22ラウンド目 症候群

23ラウンド目 Have To Go誰にも気づかれないように、少しずつ少しずつ高度を下げていた初夏の太陽は、午後5時を超えると一気にその光の色合いを赤みがかったものに変えた。

「今日はやったわ、久しぶりに。やりきった」

セットを待つ間、ボードから降りて風呂にでも浸かるように体を海中に沈めた和虎が、天を仰ぎながら大袈裟に呟いた。

「マエノリくんも、さすがに疲れたっし

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【サーフィン小説】ビジタリズム|22話

【サーフィン小説】ビジタリズム|22話

<21ラウンド目 ツイン

22ラウンド目 症候群2階のバルコニーからビーチへと伸びる階段を降りると、マチャド頭が、シャッターが半分開いた倉庫の入り口に手をかけてスマートフォンをいじっていた。

「あ、すみません、お待たせしちゃって」

恐縮して頭を下げると、マチャド頭は顔を上げ、力丸に向かって親指を突き出した。

「全然オッケーすよ。餃子、食べました?」

「あ、いや、まだです。後で食べようと思

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第21話

【サーフィン小説】ビジタリズム|第21話

<20ラウンド目 再現力

21ラウンド目 ツイン「前野くん、こっち側から出て、下に降りてもらえます?下が倉庫になってるんだけど、そこで一応、一筆書いてもらうから」

いつの間にか自分のことを名前で呼ぶようになっていたマチャド頭が、ポケットソケットを抱えたままバルコニーに繋がるドアを指さした。

「え?い、一筆?」

早くもオーダーシートに記入させられるのかと身構えたが、マチャド頭はそんな力丸の焦

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第20話

【サーフィン小説】ビジタリズム|第20話

<19ラウンド目 別人格

20ラウンド目 再現力ナミノリが頷く瞬間を見届けると、鬼瓦は自分も満足気に頷いた。

「そうだろ?ウチが全面的にサポートするから。ナミノリはなーんにも心配しなくていいぞ。10フィートのロングボードに乗ったつもりでさ」

どうやら鬼瓦は“大船に乗ったつもり”をサーファー的に表現し直したのだろうが、あまり上手いアレンジとは言えなかった。

それでも鬼瓦の一際力強い物言いは、

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第19話

【サーフィン小説】ビジタリズム|第19話

<18ラウンド目 発注

19ラウンド目 別人格ナミノリの姿を見た瞬間、力丸は鬼瓦の壮大な計画の全てに合点がいった。

脳裏に、自分が前乗りをカマした直後の、ナミノリのライディングがフラッシュバックする。サーフィンを始めて以来、これまでに見た誰よりも凄いライディング。見た瞬間、これこそが本物のサーフィンなんだと思い知らされる、自分のやっていることに疑問を呈したくなる、そんな一本。

だから、彼女が

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第18話

【サーフィン小説】ビジタリズム|第18話

<17ラウンド目 一掃

18ラウンド目 発注「それにしても……」

握りしめたグラスには、まだ半分ほどの“サンライズ コシハラエール”が残っていた。

力丸はその霞がかった液体を一口喉に流し込むと、本題に切り込んだ。

「僕がこのお店のロゴを作ることと、世界に進出することとは、どう関係するんですか?……あ、仮に作ることになったら、ということですけど」

力丸は、まだこの仕事を請けたわけではない、

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第17話

【サーフィン小説】ビジタリズム|第17話

<16ラウンド目 鬼瓦

17ラウンド目 一掃鬼瓦に押し込められた小さな部屋は、いかにも事務室といった体で雑然としていた。

部屋のちょうど中央にグレーのオフィスデスクが二つ向かい合って並んでいる。鬼瓦は、その一方のデスクに力丸を強引に座らせたと思うと、再び部屋の外へと足を向けた。

「前野くん、ちょっとここで待っといてよ」

「はあ……」

鬼瓦が部屋を出て行ってしまうと、残された力丸は、落ち着

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第16話

【サーフィン小説】ビジタリズム|第16話

<15ラウンド目 マチャドヘッド

16ラウンド目 鬼瓦カウンターの後ろに突然現れた男の顔は、弁当箱を彷彿とさせるサイズと輪郭を持っていた。

歳のころは40代後半か、いや、顔に刻まれた深い皺と、後ろに撫で付けた頭髪に混じった白いものの雰囲気から推察するに、50代に入っている可能性もある。

おそらく長年紫外線対策を怠ってきたのだろう、皺だけでなく、無数のシミが顔面全体を覆っていて、それが男に鬼瓦

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第15話

【サーフィン小説】ビジタリズム|第15話

<14ラウンド目 入店

15ラウンド目 マチャドヘッド店内に一歩足を踏み入れた瞬間、力丸の目の前には、想像していたよりもずっと開放的な光景が広がった。

まず、明るい。

海に面した壁一面に特大の窓がはまっていて、そこから差し込んでくる陽光は、ギラつくことなく程よく加減されている。どうやら外側はバルコニーになっているようで、そこに立てば万里のポイントを足下に一望できることは想像に難くなかった。

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第14話

【サーフィン小説】ビジタリズム|第14話

<13ラウンド目 ワイプアウト

14ラウンド目 入店力丸が再びステップワゴンまで戻ると、ちょうど和虎が上がってくるところだった。

その顔は、付き合いの長い力丸から見ても、過去最高の笑顔、と言えるものだった。いや、表情自体は、口角がうっすらと持ち上がっている程度で、そこまで笑って見えないかも知れない。しかし、溢れでるアドレナリンは隠せていなかった。特に和虎の目は、完全にキマっている人間のそれだっ

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第13話

【サーフィン小説】ビジタリズム|第13話

<12ラウンド目 フルスーツ

13ラウンド目 ワイプアウト
結局、力丸は15分ほどの時間をビーチで潰した。

オッキーと被りたくないという思いから、普段やらないサーフィン後のストレッチなんかをしてみたが、それは、そうしている間に和虎が上がってこないかな、と考えたからだ。

しかし——予想通りではあるが——和虎は来なかった。

(まあ、これだけ波がよければ無理もないか)

波打ち際でゆるいオフショ

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第12話

【サーフィン小説】ビジタリズム|第12話

<11ラウンド目 ふたたび、本領発揮

12ラウンド目 フルスーツ(!!!)

プルアウトしたサーファーは、空中でボードのレールを掴むと、そのまま即座にパドルバックの体勢に入った。

板前のように刈り込んだ頭髪に鋭い眼光。そして、この季節では異様な雰囲気を際立たせる真っ黒なフルスーツを、そのサーファーは身に纏っていた。

なぜ——あれほど確認したのに?誰もいないと確信したのに?2度と同じ過ちは(少

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第11話

【サーフィン小説】ビジタリズム|第11話

<10ラウンド目 カオス

11ラウンド目 ふたたび、本領発揮太陽は、さらにその位置を高くしていた。

今何時だろう?日の出とほぼ同時にパドルアウトして、体感的には2時間ほどサーフィンしているから……それでもまだ7時にもなっていないのか。

初夏の1日は長い。だからこそ、たっぷりと波乗りを満喫するのには最高の季節だ。従来、今日のようなコンディションだったら、まだまだ上がらずに粘っているところだろう

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第10話

【サーフィン小説】ビジタリズム|第10話

<9ラウンド目 Take it easy

10ラウンド目 カオス20mほど先で砕け散った波のスープが押し寄せてくる。白波に飲み込まれそうになる直前、腕立て状態でボードのノーズを海中に沈め、続いて片足でデッキパッドを踏んでテール側を沈める。

スープが頭上を通過し、ノーズ側から波の裏側に浮上すると同時に再び必死のパドルを開始——した先で、力丸を嘲笑うように、波が再びブレイクしているのが見えた。

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第9話

【サーフィン小説】ビジタリズム|第9話

<8ラウンド目 万里に来た理由

9ラウンド目 Take it easyサイズが、上がってきた。

入ってくるセットはコンスタントに頭ぐらいある。

同時に次第に強まってきたオフショアに煽られ、ブレイクの瞬間、飛沫がリップから尾を引くように宙を舞う。その様は、波をまるで大海でうねる龍のように見せていた。

朝イチとは言えない時間帯となり、サーファーの数もぼちぼち増え始めた。

和虎は相変わらず南端

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【サーフィン小説】ビジタリズム|第8話

【サーフィン小説】ビジタリズム|第8話

<7ラウンド目 117シェイプス

8ラウンド目 万里に来た理由 南端のピークへ向けてパドルしていくオッキーの後ろ姿を、力丸と和虎は、ミドルセクションに漂いながらしばらく黙って眺めていた。

「大丈夫だった?」

沈黙を破ったのは和虎だった。

「大丈夫……ではなかったかな」

力丸は、まだ解放された安堵感よりも、トラブルに巻き込まれたことによる興奮状態の方が強かったが、努めて冷静に受け応えた。

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