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【読書ノート】36「抵抗都市」「偽装同盟」佐々木譲

1916年が舞台の歴史改変小説。3部作の第1作。日露戦争に敗北した日本という設定は斬新だが、内容は普通の警察小説。今はなき万世橋駅が事件の舞台として出てくる。「二帝同盟」とは併合・植民地化の一段階前の状態のようである。総督府など韓国併合を連想するが、もし日本が戦前に他国に併合・統治されていたら、あのような状態になるのだろうか。今後、ロシア革命はどのようにして描かれるのだろうか。

「抵抗都市」の翌年1917年が舞台の歴史改変小説。3部作の第2作。前作と同じ主人公による犯罪捜査小説で、それ自体は普通の話だが、ロシア本国の騒擾、といった形でロシア革命の始まり(二月革命?)が描かれている。また日本が置かれている「二帝同盟」の状態を、著者は以下のように皮肉を込めて描いている(と私は思った)。この既視感は何だろう。

「日本は同盟国だ。外交権と軍事権までロシアに委ねてくれるほどの、強固な同盟関係を作っている国だ。」
その言い方は適切ではない。あの戦争に負けたために、日本は外交権と軍事権を放棄して、ロシア帝国の属国となることを受け入れざるを得なかったのだ。二帝同盟、と政府は言うが、この状態が日本にとっての属国の地位でしかないことを国民は承知している。対等の同盟関係ではない。強大な帝国と弱小属国との、不平等な二国間関係でしかなかった。もちろん政府や国のトップ層は、これは対等の同盟だと思い込まないと、自分の精神が不安定になる。また、国民を引き続き統治する根拠を失う。

P312

(2023年1月24日)


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