マガジンのカバー画像

怪談拾遺

43
あちこちで聞き集めた怪談を、皆さんに親しみやすいよう紹介します。 手軽に怪談だけ読みたいという方は【 】から下を読んでいただければ。
運営しているクリエイター

記事一覧

第30夜 二度起き

第30夜 二度起き

 時間が戻る系の話はめったに聞かない。
 以前に禍話で、何度も巻き戻る話をリライトしたが、こうした実体験(夢だと言い張る人もいるだろうが)が、有名小説の死に戻りやタイムリープのアイディアになったのではないかと思ったりもする。

 これはつい最近聞いた。タイムリープの話。

【二度起き】

 C子さんの仕事はときどき電車がない時間まで遅くなることがある。その場合、会社が近くのホテルを押さえており、そ

もっとみる
第29夜 ナンパ男

第29夜 ナンパ男

 異界からの働きかけの受け取り方は、こちらのアンテナ次第だが、得てしてクリアに受け取ることは難しい。よく、視える人はラジオの周波数などに例えることがあるが、向こうが発するメッセージの内容まで聞き取ろうとする(チャンネルを合わす)のは至難の業なのだろう。

【ナンパ男】

 今年(2022年)の話。
 会社員のA子さんは、関西の地方都市のターミナル駅近くで一人呑みをしていた。ちょうどそれまで立て込ん

もっとみる
第28夜 開かずの箱

第28夜 開かずの箱

 またまた「探偵ナイトスクープ」ネタかよと思われるかもしれないが、ご容赦願いたい。意外に怪しいネタの宝庫でもあるのだ。関西地方以外で「まだ放映されていないのにネタバレはご免だ」というかたは、下の【 】内だけ楽しんでいただけると幸いだ。

 2022年1月7日の「探偵ナイトスクープ!」で開けてはならないモノに関する奇妙な依頼が投稿され、解決された。

 依頼は、静岡県にある祖母の実家の屋根裏に「決し

もっとみる
第27.6夜 禍話リライトの話2

第27.6夜 禍話リライトの話2

 何本か禍話リライトを上げさせていただいている。この一本前にリライトの話を書いたが、今回もリライトしようとして少しだけ奇妙な事が起こった。

 この記事を読む人の中に知らない人はいないと思うが、念のため。

 毎週土曜の夜11時から怖い話をメインに配信されている「禍話」というツイキャスがある。少し珍しいのは、話された内容を青空怪談、つまり権利フリーにされていることだ。このnoteでも多くの人がリラ

もっとみる
第27.5夜 禍話リライトの話

第27.5夜 禍話リライトの話

 毎週土曜の夜11時はツイキャスで「禍話」を聞く。この年末年始は連日配信されていて追いかけるのが(うれしいながらも)大変だ。noteでリライトされている方もたくさんいらっしゃるが、秀逸な怪談にあふれている。

 私も、リライトを何本か書かせていただいている。上記ツイキャスで怪談を語られているかぁなっきさんの熱にやられたようだ。

 「禍話」の魅力の一つに、怪談による障りがある点がある(のだと勝手に

もっとみる
第27夜 おとうさん

第27夜 おとうさん

 もし亡くなった人が目の前に現れても、見た人の心持次第で恐怖にも恋しい気持ちにもなる。もちろん、どちらも怪談のカテゴリの中にある。

 お正月に、親族から初めて聞いた話。仮にAさんとするが、彼とその祖母の話だという。

【おとうさん】

 Aさんは、京都の私大に市内の祖母の家から通っていた。彼女の夫、つまりAさんの祖父は、太平洋戦争で亡くなったのだという。

 祖母の口癖は、「おとうさんは亡くなっ

もっとみる
第26夜 回る

第26夜 回る

 「何か怖い経験や、変わった話を知りませんか」と怪談を集めるときに聞くものの、すぐに話をしてくれる人は少ない。そんな時、怪談師によってはいくつか怪談を披露したり、子供の時の変わった体験を聞いたりするのだという。

 なぜ、すぐに出てこないのかというと、変わったことがあっても、自身の中で折り合いをつけてしまうからだろう。だから、すぐには思い出せない。

 よく話を聞かせてくれる高校教師のAさんが教え

もっとみる
第25夜 笑い声

第25夜 笑い声

 音の怪は多い。心霊スポットを訪れた車の周りをお経の声だけが廻る、家の裏手で猫が人語で話す、ホテルの24階の窓を外から叩く音がする……。視覚よりも遮断しにくい感覚なので、継続すると恐怖が蓄積する。しかし時には、慶事を寿ぐこともあるようだ。

【笑い声】

 Fさんに、初めて子どもが生まれた。妻が出産のために入院する病院から親族に連絡を入れると、早速、父親と叔父が見に来た。

 妻と生まれたての我が

もっとみる
第24夜 視えるの?

第24夜 視えるの?

 土曜の夜、怪談好きには「禍話」を薦めたい。猟奇ユニット・FEAR飯の語り担当かぁなっきさんと、相づち担当の加藤よしきさんがツイキャスで1時間~2時間ほど語られている青空怪談だ。今夏にドラマ化されて話題にもなり、noteでもリライトを書かれている方がたくさんいる。

 その禍話、2021年11月6日の放送で「カラス」という話があった。この中で一つの現象を周りの人が、見えたり見えなかったりするという

もっとみる
第23夜 可愛い孫

第23夜 可愛い孫

 怪談も浸透してきて、いろんなパターンがあることが周知されてきた。これに怪談を語る人の個性がかけ合わさって、動画配信やネット上はにぎやかだ。

 この中に、人怖というジャンルがある。怪異の原因が、霊や超常現象ではなく、人の悪意や行動によるものだ。

 そんな話を紹介したい。

【可愛い孫】

 知り合いのOさんにある忘年会の最中に聞いた話。

 Oさんは、15年ほど前、大都市のデパートでバイトをし

もっとみる
第22夜 ラジオからの声

第22夜 ラジオからの声

 一昨日(2021年10月7日)の地震で被害にあわれた方には、お見舞いを申し上げる。

 第5.5夜で「今後どこかで」と書いていた話を取り上げたい。

 2011年12月に、仕事の関係で仙台を訪れた。初冬の駅前は、震災後数カ月にもかかわらず、道に少しヒビがあるくらいでほとんど通常に戻っていたように見えた。しかし、仙台空港のある海岸は、ただっぴろい更地にところどころ車や墓石が積み上げられている荒野だ

もっとみる
第21.5夜 合わない

第21.5夜 合わない

 今年の夏は、テレビでもネットでも昨年にも増して怪談が多く花咲いた。怪談そのものをテーマにした番組も多かったが、その周辺、例えば怪談師の深津さくらさんにスポットを当てた「セブンルール」(フジテレビ)など、少しずつ世の中に浸透しているようにも思う。

 また、書籍も多く刊行され、秀逸なものがそろった。上記、深津さん『怪談まみれ』(二見書房)、昨年は出ずにさみしい思いをした中山市朗先生の『怪談狩り:黒

もっとみる
第21夜 エリート

第21夜 エリート

 何かの折に、夢で見た故人の話になった。

 四十九日をすぎると、青っぽく見えるのだという。それよりも前には、生きた人間と見分けがつかない。私自身は見たことがないが、確かにそうした話は多い。

 いや、死んだ人が会いに来るタイミングは、圧倒的に四十九日(かその翌日)に集中している(中には初七日というものもあるが)。そうした話は、両指に余るだろう。昔の人は、なぜこの法則に気が付いたのだろうか。仏教で

もっとみる
第20夜 命日の乗客

第20夜 命日の乗客

 過去にも述べたが、怪談の種はあちこちに転がっている。うれしいことに今年のお盆にはあちこちで見られた。

 8月22日付の毎日新聞の記事(web版)に、タクシーの怪談が載っていた。

 いわゆる、「深夜にのせた客が、指定した場所で降ろそうとするといなくなっている」というもの。この形は、ドイツにもあるのだという。向こうは、BMWに乗るヒッチハイカーなのだそうだが、降ろすときにいなくなっているという形

もっとみる