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機能不全家族

機能不全家族

A君は物語を作るのが好きだ。現実がしんどいから、知的障害を伴う(そのような環境に置いた)発達障害の彼は想像の中で手下を使い、悪の親玉になり、世界征服を成し遂げる。20歳過ぎても同じストーリーだ。

これは多くの男性の夢なのだろう。いわゆるオタクと言われる男性はそれらのコレクションの中で完結させる。案外とそれは近所迷惑にならないきれいなのかもしれない。

 それを夫婦関係に押しつけて当てはめて、いや

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就活滞り~姉妹仕舞い

就活滞り~姉妹仕舞い

「いいなぁ~雪ちゃんは。再就職活動が出来て。」
 姉の”いいなぁ~病”がまたはじまった。この人は小さいときからそうだった。高校も大学も、塾に通っては辞めるの繰り返しなのだから、志望した学校には当然受からない。
 習い事にしてもそう。姉、葉那が小学2年生の時、友達の家にあったという理由でピアノを始めたいと言い出した。両親がやっとの思いで購入してから3ヶ月後、彼女がレッスンを休みがちになったとピアノの

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練炭自殺すれば?ー姉妹仕舞い

練炭自殺すれば?ー姉妹仕舞い

 転職時期を逃した就職活動は困難を極めた。就職はおろかバイトですら難しい。そもそもなぜ最初の就職をやめ、期間が開いたかという事情を突っ込まれると説明しずらい。それでも取り繕ってバイトにありついても、決して手際が良いわけではないし、無駄に高学歴のため、周囲から疎まれ、試用期間で解雇となる。そして作業というのは体力を使うため、週3、4が限度で、それも昼間と体で分かった。しかしそのような仕事はすでにパー

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発達障害教育、手帳か学力かー姉妹仕舞い

発達障害教育、手帳か学力かー姉妹仕舞い

 就活破れ大学院入れず縁談終わり......と愚痴ってもしょうがない。私は自分の人生の目標の一つとして、甥に勉強を教える事を当てた。

 しょうもない義兄は甥に飲み込みが悪いと直ぐ腹を立て、教える事を放棄するらしい。仕事の後疲れているのは分かるが、それでは子供はたまったものではない。大体分からない奴に限って偉そうなのだ。私は家庭教師のスキルをフル活用し、甥に接した。

 子供に勉強を教えるのは楽し

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なんで再就職しないの?ー姉妹仕舞い

なんで再就職しないの?ー姉妹仕舞い

「雪ちゃん、なんで就職しないの?」
 甥からの毎月恒例の質問だ。発達障碍児である甥の通院は私そして姉の実家の方が近いので、甥一家は毎月2泊し、義兄の家では食べられそうもない母の手の込んだ料理を堪能し、甥の学習指導を私にさせ、十分堪能した後、朝一番で甥のかかりつけ病院を受診するのだ。まさか君のお母さんが叫んで再就職活動が滞ったとも、君のお父さんが義母の歯の治療を私の再就職よりも優先させたとは言えない

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おふくろは大事、妻よりも おふくろの歯は大事、義理の妹よりもー姉妹仕舞い

おふくろは大事、妻よりも おふくろの歯は大事、義理の妹よりもー姉妹仕舞い

「お袋の歯の治療があるからさ、自宅にもうしばらく居ろよ。」
 姉が義兄から電話を受け取ったのは、私の再就職年齢制限36才の3カ月を切った時だった。もう少しだけ、あと少ししたらこの人は出ていく、そしたらラストスパートで再就職だ、と望みをかけていた私の願いは見事に打ち砕かれた。
厚さ5㎝にもなり、もうどれだけ送ったか分からない履歴書を両手に私は訴えた。
「もうお姉ちゃん出て行ってよ!お義母さんと暮らせ

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姉と昔と結婚と〜姉妹仕舞い

姉と昔と結婚と〜姉妹仕舞い

 姉が反りの合わない嫁ぎ先から戻ってきたのは3ヶ月前だ。

 人間が2人いたら個性と能力に差が出るのは当然だ。一卵性双生児ですら差がある。しかし、姉はどうしても納得できなかった。
 姉には妹が生まれて喜び可愛がる場合と、自分だけに愛情が独占出来ずに僻む場合と2つのタイプがいる。姉は、後者だった。私が生まれた時の家族写真で姉は私から顔を背けていた。

 私が幼少期で分別がまだない頃、姉は自分の新しい

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忌まわしい温泉旅行ー姉妹仕舞い

忌まわしい温泉旅行ー姉妹仕舞い

「お前、いい感じになったなあ。」
 義兄の粘りつくような視線に気づき、慌てて浴衣の胸元を正す。義兄の職場環境が改善されたのを機に多少なりとも病状が回復した姉が義兄の元に戻り、義兄発狂前から続けられていた毎年恒例温泉旅行を再開したのだ。
 空虚な形だけの心の無い家族旅行。隣で義兄がべらべらと薄っぺらい時局論を延々と述べる。父が力なく聞き流している。話は焼き物が冷えても続き、甥は硬くなった肉を食いち

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義母の企み〜姉妹仕舞い

義母の企み〜姉妹仕舞い

 1階で姉と義兄と甥が両親と歓談している。私は2階のベットの上で膝を抱えている。彼らは甥の治療の為1月に2泊3日する。そして両親の目を盗んで私に嫌がらせをして、憂さを晴らして去っていく。
 なんでこんな事になったのだろう。私の脳裏には姉と義兄の結婚顔合わせの為、義兄一家と我が家がホテルで顔合わせをした頃が浮かんでいた。
 ものすごい高級でもなく、かといって顔合わせの席にふさわしくないほど低レベルで

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叫ぶ姉を傍らに~姉妹仕舞い

叫ぶ姉を傍らに~姉妹仕舞い

「死ぬ~!」
 姉は2階の寝室から喉が引きちぎられそうな声で叫ぶ。1階の洗面所から駆け上がった私は淡々と2重窓を閉め、カーテンも閉める。向かいの住民は目を背けて奥に引っ込む。彼らが私と口を利かなくなり、ゴミ出しの時に顔を背けるようになって久しい。
 ベランダに向かおうとする姉を仁王立ちで遮り、泣き崩れる姉をベットへと向かわせ、機械的に背中をさすり、声が漏れないように口元に当てるよう枕を渡す。ある程

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