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姉と昔と結婚と〜姉妹仕舞い

 姉が反りの合わない嫁ぎ先から戻ってきたのは3ヶ月前だ。

 人間が2人いたら個性と能力に差が出るのは当然だ。一卵性双生児ですら差がある。しかし、姉はどうしても納得できなかった。
 姉には妹が生まれて喜び可愛がる場合と、自分だけに愛情が独占出来ずに僻む場合と2つのタイプがいる。姉は、後者だった。私が生まれた時の家族写真で姉は私から顔を背けていた。

 私が幼少期で分別がまだない頃、姉は自分の新しい白いスニーカーに書道の時間に墨をつけて汚してしまい、投げつけるように私に渡し、私服は気にいらない服だけお下がりし、お気に入りはすり切れるまで着た。
 母の言いつけで私を姉の友達の家に連れて遊びに行かざると得ない時は、押し付けられて迷惑とばかりに友人と共に虐めて楽しんだ。年端のいかない私は何が何だかわからず、そういうものだと受け入れた。

 そのような関係性に変化が出たのは、私が3年生になり学力が姉よりはるか上であることが判明してからだ。姉は今度は戦法を変えた。
「いいなー、雪ちゃんは……。わたしは、どうせ……。」
 この一言で姉は両親の同情を勝ち取り、以後の処世術を掴んだ。おやつの優先権、休日の遊び先の決定権……。両親は私がしたいと言い出した事は姉にも意向を聞き、機会を与える。しかし姉は生返事て長続きした試しはない。まず本は読み切らない、公文式はサボる。結果やり切った私の学力は上がり、姉の被害者妄想が絡んだ劣等感は膨らんでいった。

 両親はなんといっても可愛い我が子である姉の気持ちを引き上げる為、何かと姉の良い点を見つけ、褒めたたえた。作法に忠実で礼儀正しい、いう事を聞く。それは裏を返せば言われたことを言われた通りにしかできず、自分の頭で考えない指示待ち人間で、命じた側に責任転嫁する性質を助長したに過ぎなかった。

 不幸の国の王女様きどりの姉は、安定を望んで父の所属している財閥系企業の結婚サービスを利用し伴侶を見つけ、散々世話になった母に「もう妹と比べられずに済む、せいせいする」と妬みで歪んだ観かたから悪人扱いした挙句、捨て台詞を残し実家を出て行った。
 義兄という人は小心者で、仲間内ではパシリに使われていた。だからこそ依存し自立しない姉を支配できるのがうれしかったのだろう。多分結婚まで童貞だ。

 その結婚は私にとってもありがたかった。いつも僻まれて、僻むことで自分の望みを叶えてきた姉には嫌気がさしていたのだ。家を出て行ったとき、こっちこそせいせいしていたと心で呟いた。

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