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叫ぶ姉を傍らに~姉妹仕舞い

「死ぬ~!」
 姉は2階の寝室から喉が引きちぎられそうな声で叫ぶ。1階の洗面所から駆け上がった私は淡々と2重窓を閉め、カーテンも閉める。向かいの住民は目を背けて奥に引っ込む。彼らが私と口を利かなくなり、ゴミ出しの時に顔を背けるようになって久しい。
 ベランダに向かおうとする姉を仁王立ちで遮り、泣き崩れる姉をベットへと向かわせ、機械的に背中をさすり、声が漏れないように口元に当てるよう枕を渡す。ある程度正気に戻ると枕を顔に当てて叫ぶが、そのうち枕から顔を離す。今度は
「コワイヨーウォ!」
 が始まった。叫びとも吠えるとも言えない声が家中にこだまする。しばしエネルギーを使ったら泣きだして布団に入り寝るであろう。私は隣の部屋でスーツを着て再就職の面接の準備に入る。この分だと今日も電車の中で化粧をすることになるので化粧下地をポーチに追加する。



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