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歴史本書評

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オススメ歴史本の読書記録。日本史世界史ごちゃ混ぜです。
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#イスラエル

文学からパレスチナ問題を知る④~「ハイファに戻って」

文学からパレスチナ問題を知る④~「ハイファに戻って」

前回はこちら。

 パレスチナを代表する作家ガッサーン・カナファーニーを紹介する本連載は、今回が最後です。最終回は、1969年発表の「ハイファに戻って」を取り上げます。
 作品を紹介する前に、前提となる知識を説明しておきましょう。

「ハイファに戻って」の背景知識 ハイファは、現在のイスラエル北部、地中海に面する港町です。アラブ人(パレスチナ人)の土地でしたが、1948年にイスラエル領となりました

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文学からパレスチナ問題を知る③~「太陽の男たち」

文学からパレスチナ問題を知る③~「太陽の男たち」

前回はこちらです。

 1963年発表の「太陽の男たち」は、現代アラブ文学を代表する傑作として高く評価されています。

パレスチナとクウェート「太陽の男たち」は、イラク南部の都市バスラから、クウェートへの密入国を試みる三人の男たちの物語です。

 イギリスの植民地であったクウェート(1961年独立)は、真珠の生産が主力産業でした。しかし、御木本幸吉が真珠の養殖に成功するとクウェートの経済は打撃を受

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文学からパレスチナ問題を知る②〜「路傍の菓子パン」

文学からパレスチナ問題を知る②〜「路傍の菓子パン」

前回はこちらです。

 パレスチナを代表する文学者であるガッサーン・カナファーニー作品の日本語訳は、河出文庫の「ハイファに戻って/太陽の男たち」に7編が収録されています。今回は、同書の収録作品のうち、「路傍の菓子パン」という短編を紹介します。

ダマスカスでの生活 1948年、故郷パレスチナを追われた難民たちは、近隣の国々で暮らすことになりました。ガッサーン・カナファーニーの一家は、シリアの首都ダ

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文学からパレスチナ問題を知る①~G・カナファーニーの生涯

文学からパレスチナ問題を知る①~G・カナファーニーの生涯

 イスラエルによるパレスチナのガザ地区に対する攻撃は、極めて深刻な人道危機となっています。イスラエル・パレスチナ紛争は毎日のようにニュースの見出しに登場しますが、詳しくは分からないという人が多いと思います。

 イスラエル・パレスチナ紛争の入門的知識については、是非下記をお読みください。

 さて、歴史家や国際政治学者、ジャーナリストなどが書いたノンフィクションとしての本を読むことも大切ですが、小

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