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2010年から2019年に書いた記事など
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記事一覧

ネット上の人権侵害問題を考える (2016年12月)

ネット上の人権侵害問題を考える (2016年12月)

ネット上の人権侵害

 インターネットの普及によって誰でも簡単にさまざまな情報を入手し、あるいは発信できるようになりました。これはとても画期的で便利なことなのですが、その一方で、ネット上での誹謗中傷、プライバシーの侵害、無責任な噂などによる人権侵害が起きています。言うまでもなく人権侵害は犯罪です。たとえば、誹謗中傷は、その内容が事実であろうがなかろうが、(例外規定もありますが)名誉毀損や侮辱といっ

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陛下行幸 (2012年3月)

陛下行幸 (2012年3月)

 1990年7月1日から92年6月22日までの約2年間、通商産業省(現在の経済産業省)から(財)国際超電導産業技術研究センターに休職出向していた。

 役職は、超電導工学研究所の第6研究室長(92年4月に第7研究室長に名称変更)と企画室長の兼務。その約2年の間にはいろいろなことがあったが、91年4月24日(水)の天皇陛下のご視察が最も鮮明に記憶に残っている。当日もさることながら、その準備も大変だっ

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「ITと企業経営」シリーズ 第7回 情報処理のパラダイムシフト (2011年4月) 生産性新聞

「ITと企業経営」シリーズ 第7回 情報処理のパラダイムシフト (2011年4月) 生産性新聞

 クラウド・コンピューティング(以下「クラウド」という)は、専門誌だけでなく一般の新聞やテレビにも取り上げられるようになり、企業経営者にとってもはや無視できないものとなっている。1年前には、クラウドはバズワードだという人もいたが、もう一過性の流行語だと断言する人はいなくなった。間違いなく情報処理のパラダイムが変わろうとしている。

 クラウドについてはコンセンサスの取れた定義はまだないが、大まかに

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「ITと企業経営」シリーズ 第6回 ITのオーバーシューティング (2011年3月) 生産性新聞

「ITと企業経営」シリーズ 第6回 ITのオーバーシューティング (2011年3月) 生産性新聞

 世界に大きな衝撃を与えたニコラス・カーの論文“IT doesn’t matter”は、ITのコモディティ化に加え、「オーバーシューティング」という問題を指摘している。オーバーシューティングとは、目標に向けて何かを調整する場合に目標を超えてしまうことをいう。ここでは、ITの技術進歩が利用者のニーズを超えてしまい、IT製品が、利用者が必要とする以上の性能や機能を持つことだと考えればよい。

 実際、

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「ITと企業経営」シリーズ 第5回 IT does’t matterの衝撃 (2011年2月) 生産性新聞

「ITと企業経営」シリーズ 第5回 IT does’t matterの衝撃 (2011年2月) 生産性新聞

 ハーバード・ビジネス・レビューの2003年5月号にニコラス・G・カーの”IT Doesn’t Matter”という論文が掲載された。米国だけでなく世界中で大論争を巻き起こした論文である。言うまでもなく、”IT Doesn’t Matter”のITとは情報技術のことであり、この論文のタイトルはITとitを引っ掛けた洒落になっている。直訳すれば「ITは重要ではない」とか「ITなんかどうでもいい」であ

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「ITと企業経営」シリーズ 第4回 インターネットの衝撃 (2011年1月) 生産性新聞

「ITと企業経営」シリーズ 第4回 インターネットの衝撃 (2011年1月) 生産性新聞

 ダウンサイジングの次にやってきた波がインターネットである。インターネットの歴史は1969年に運用が開始された米国防総省のARPANETに始まるが、商用利用が始まったのはそれから20年ほど経った1980年代の終盤であり、企業の情報システムに大きな影響をもたらすようになったのはさらに10年ほど後である。

 一つのきっかけはマルチメディアに対応したブラウザ「モザイク」の登場である。モザイクは、現在広

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「ITと企業経営」シリーズ 第3回 ダウンサイジングとオープン化 (2010年12月) 生産性新聞

「ITと企業経営」シリーズ 第3回 ダウンサイジングとオープン化 (2010年12月) 生産性新聞

 企業におけるコンピュータ利用が、会計や給与計算のような計算を中心とする分野から、競争戦略に直結する情報処理分野へと拡大する一方で、コンピュータのダウンサイジングが進展した。情報処理におけるダウンサイジングとは、平易に言えば、大型汎用機をワークステーションやサーバーなどの小型で、コストパフォーマンスのよい機器に置き換え、コスト削減を図ることである。

 ダウンサイジングの動きは、1980年代後半か

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「ITと企業経営」シリーズ 第2回 戦略情報システム(SIS) (2010年11月) 生産性新聞

「ITと企業経営」シリーズ 第2回 戦略情報システム(SIS) (2010年11月) 生産性新聞

 民間企業におけるコンピュータ利用は給与計算や会計処理から始まった。これは、初期のコンピュータが文字通り「計算機」で、数値計算が得意だったからだ。しかし、すぐに企業戦略の道具としても利用されるようになる。それが戦略情報システム(SIS)である。

 SISは、競合他社との差別化を図り、競争優位の源泉となる情報システムのことである。最もよく知られている成功事例は、アメリカン航空の座席予約システム「セ

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「ITと企業経営」シリーズ 第1回 はじめに (2010年10月) 生産性新聞

「ITと企業経営」シリーズ 第1回 はじめに (2010年10月) 生産性新聞

 現在では、ほとんどの企業がなんらかの形で情報技術(IT)を経営に活用しているが、コンピュータが電子計算機と呼ばれ、空調付きのマシンルームに設置されていた時代には、コンピュータは非常に高価で、ビジネスに利用できたのは大企業に限られていた。

 世界で最初にビジネスに利用されたコンピュータは、英国で喫茶店チェーンを経営していたJ・ライオンズ社が自社開発したライオンズ・エレクトロニック・オフィス(LE

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日本にも「起業家が起業家を育てる」好循環を (2015年1月) 情報化推進国民会議メールマガジン

日本にも「起業家が起業家を育てる」好循環を (2015年1月) 情報化推進国民会議メールマガジン

 シリコンバレーでは次々とベンチャー企業が生まれている。Silicon Valley Index 2012 によれば、1995年から2010年までの創業社数は平均して年間17,300社だという。高い志、あるいは野心を持った若者が世界中から集まり、新しい製品やサービスをどんどん生み出していく。エンジェル投資家やベンチャーキャピタル(VC)が彼らに資金を供給し、ベンチャー企業の成長を加速する。もちろん

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災害対策のおけるITの役割 (2011年6月) 情報化レビュー

災害対策のおけるITの役割 (2011年6月) 情報化レビュー

 今回の大震災で、情報技術や通信ネットワークが被災時の安全・ライフライン確保に重要な役割を持っていることを再認識させられた。今回の経験を踏まえ、いろいろな形で災害対策におけるITの役割が議論され、今後の課題やITの活用策が提言されていくことになるのだろうが、今思いつく範囲で私見を述べることにしたい。

 災害対策におけるITの役割を考える場合、(1) 災害発生前の対策、(2) 災害発生直後の情報伝

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クラウドを支える技術の重要性 (2011年5月) 三菱電機技報

クラウドを支える技術の重要性 (2011年5月) 三菱電機技報

 クラウド・コンピューティングが情報処理のパラダイムを変えようとしている。おそらくこれに異を唱える人はほとんどいないだろう。しかし,クラウドを支える技術の重要性については意見が分かれる。ITのコモディティ化の進展によって,技術はもはや重要ではないという専門家がいる。たとえば,次のような主張である。

 ハードウェアは完全にコモディティ化しており,数万円で十分パワーのあるIAサーバを手に入れることが

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ソフトウェアのコモディティ化 (2010年9月)

ソフトウェアのコモディティ化 (2010年9月)

IT Doesn’t Matter

 もう7年前になるのに、今読んでも”IT Doesn’t Matter”に古さは感じられない。この論文は、ハーバード・ビジネス・レビュー2003年5月号に掲載されたもので、著者はニコラス・G・カーである。
カーは、この翌年にこの論文をベースにして”Does IT Matter”という本を出版している。この本は2005年に日本語に翻訳され「ITにお金を使うのは、

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新しい開発手法への期待 (2010年1月)

新しい開発手法への期待 (2010年1月)

システム開発遅延の原因

 現在、日本におけるソフトウェア開発プロジェクトの大半は、ウォーターフォール・モデルで行われている。ウォーターフォール・モデルとは、ソフトウェア開発の工程を(1) 要求定義、(2) 設計、(3) コーディング、(4) テスト、(5) 保守のように分けて、それらを順に実施していくという手法である。

 最初にきちんとした計画や設計書をつくり、それに従って実行するという方法で

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