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ネット上の人権侵害問題を考える (2016年12月)

ネット上の人権侵害

 インターネットの普及によって誰でも簡単にさまざまな情報を入手し、あるいは発信できるようになりました。これはとても画期的で便利なことなのですが、その一方で、ネット上での誹謗中傷、プライバシーの侵害、無責任な噂などによる人権侵害が起きています。言うまでもなく人権侵害は犯罪です。たとえば、誹謗中傷は、その内容が事実であろうがなかろうが、(例外規定もありますが)名誉毀損や侮辱といった犯罪に該当し、民法の規定によって不法行為とみなされ、損害賠償の対象となります。実際、逮捕された事件や裁判で損害賠償を命じられた事例があるのに、ネット上での人権侵害問題が減らないのはどうしてなのでしょう。

匿名性の問題

 原因の一つに、ネットの匿名性があると言われています。確かに、ネット上では自分が誰であるかを明かす必要がなく、身分や年齢、性別すら偽ることもでき、他人をどれだけ攻撃しても自分は攻撃されないと思っている利用者がいて、その間違った思い込みが過激な書き込みを助長している可能性があります。
 ネット上での人権侵害を理由に、匿名性をなくすべきだという人もいますが、一方では、インターネットの匿名性は守られるべきであるという意見もあります。それは、内部告発のように、匿名でなければ危険で情報発信できない場合があるからです。したがって、匿名性を維持しつつ、問題があれば、発言者を特定できる仕組みが理想的です。

言論の自由と人権に関する教育

 言論の自由と人権に関する教育も必要です。匿名による情報発信を禁止する規制は、言論の自由の観点から望ましくないのですが、表現の自由や言論の自由を振りかざして、むやみに人を傷つけるような情報を発信することは許されるべきではありません。表現の自由や言論の自由も重要な基本的人権ですが、誹謗中傷や無責任な噂で人を傷つけたり、個人のプライバシーを侵害したりするような書き込みをする自由までは与えられていません。こうした言論の自由と人権に関する考え方を教育の場で教えていく必要があります。そうした教育をきちんとやれば、ネット上の人権侵害をかなり少なくすることができるのではないでしょうか。

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