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《閑話休題》創作の話
私は鬱が回復したら創作辞めるんだろうなという決意をしてます。恐らく、ですが。私に誇れるものは憂鬱な死にたいって気持ちくらいだから、それを吐き出すくらいだから。それがなくなったら多分何も書けなくなるんだろうなって気がします。今も少しそんな感じがしてます。感覚的に何も出来なくなるんです。何も思い浮かばないし、書いてる感覚もないし、書いた内容の記憶もあんまりないんです。それって芥川の「歯車」みたいですよ
もっとみる最初の記憶(400字課題)
私は今暗闇のなかにいる。
懐中電灯をつけて周りを見渡す。たくさんの絵本とお菓子とぬいぐるみが狭い空間にちらばっている。そうか、これは洞窟探検の最中だったんだ! と思い出した。思い出したら、わくわくしてきて大好きな絵本を開いて。絵本の世界に飛び込んだ。懐中電灯に照らされて読む絵本はなんだかとっても幻想的ね。まるでキャンプに来たみたいだわ。みんな一緒にこっちにこればいいのに。どうしてお母さんもお父さ
ガラスのコップ(400字課題)
夜のベランダに置かれたガラスのコップは夏祭りのラムネ瓶に似ていた。夜の暗がりから僅かな光を集めるガラス。提灯のチラつくあかりが淡く透き通っている。その魔法はただのガラスから一晩だけ火を灯したランプへ変身する。傾けるとコトと、まるで瓶の中のビー玉を揺らすように音を立てた。水泡は夜空に溶けた淡い液体になって揺れている。傾ける事に小さな泡が弾けては消え、また弾けては消え……。泡が提灯のチラチラしたあかり
もっとみる今日の記録(1部抜粋)
祖父には会えない。死んでいるから当たり前と言っちゃ当たり前なんだけど。
小説の話をするといつも話題になるのは祖父の事だった。私の家族の中で本の話ができるのは祖父、ただ1人だけだ。昔は煙たがってたのに、いざいなくなると辛いものなんだなぁと思う。それに、私が本の面白さに気づくのが遅すぎた、というのもある。今なら日本酒を飲みながら文学の話とか出来たのかな。誕生日にくれた本たちに面白い以外の感想が言えたん
「遺書」片思い4部作(5)
「例えば、遺書を書き終えたら死のうとして、今ここに完成したものがあるとしたら君はどうするのかな?」そんな単純な問いを君に投げかけてみる。
きっと優しい君のことだから、初めは否定してくれるのに、嫌だ嫌だと言うのだろう。分かっていたさ。納得してくれないことぐらい。それでも、これはけじめなんだ。きっと私は死ななければならない人間だったのだよ。だから、幸せに生きてくれ。君のこと大事に思ってくれてる人は沢山
「灰かぶりの殺人鬼」片思い4部作(4)
世界でひとりきり。そんなシチュエーションを人類なら誰しもが望んだと思う。然り。僕もそのうちの1人なのさ。1人の街という物は案外不気味なもので、人の生気はぼんやりと光る街頭が示しているのに、人の気配はしん、と静まり返っていておどろおどろしさに拍車をかける。しかし、1人は楽しいものだ。こう、好きな歌をどれだけ歌ったって、クルクルと夜の街を踊り歩いたって、楽器を思い切り吹いてみたって。それは夜の街の闇の
もっとみる「夜が明けなければいいのに」片思い4部作(3)
目には涙を浮かべている。朧月が余計に霞むので、凝視するように空を睨んだ。目の中の雫はつぅと頬を伝い、また大事なものが零れ落ちるように泣いていた。できる限り声を押し殺して、静かに、しかし、喘ぐように泣いていた。自分の元からは幸せという幸せな思い出は寂れて零れ落ちていくのに、肩にかかる髪はさあさあと吹く風になびいていくので不思議な感覚だ。秋とは言えど昨日から手足を冷たくするので、冬の呼び声をひしひしと
もっとみる「海月姫」・片思い4部作(1)
人生はべちょべちょだ。
例えば、夕立に降られてしまい、全身が重苦しく感じるように。あるいは、記憶の奥底にこびりついた油のように。どんなに拭っても、拭っても、拭っても、こびりついた嫌気のさす粘着質な笑みは拭いきれないのだ。ねっとりとした私の心は腐水のなかに深く深く沈んでいく。常に人生について落胆しかしてこなかった私には、生ける価値などないと思ってしまうほどで、腐水の中でもがくことが人生だなんて言って