外崎則夫

10年ほど前まではWebにて物書きをやっていました。著書として「マイクロソフト・シンド…

外崎則夫

10年ほど前まではWebにて物書きをやっていました。著書として「マイクロソフト・シンドローム(オーエス出版)」があります。 物書きとしては完全に引退していましたが、2021年秋、この時に入院した知見は広く知らしめた方が良いと考え、久々に筆を取りました。

記事一覧

京都〜日光を9日間で走った話2024(その6)

階段は、登るより降りる方がきついのだという事実を知る人は、ランナーに相違ない。 マラソンの経験がある方なら思い当たることでしょう。決死の思いでフルマラソンを走破…

外崎則夫
5日前
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京都〜日光を9日間で走った話2024(その5)

「う〜う〜う〜」 声にならない声とはこのことを言うのでしょう。食したものを全て戻してなんとか眠りにつくことはできたものの、昨日70キロ走行して消費したエネルギー…

外崎則夫
11日前
3

京都〜日光を9日間で走った話2024(その4)

「いや〜やっぱりホテルの朝食は美味い!」 毎年定宿にしている彦根市のホテルで一日目の夜を過ごした翌朝、私は宿で無料で提供される朝食とモーニングコーヒーを堪能して…

外崎則夫
2週間前
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京都〜日光を9日間で走った話2024(その3)

は?自己紹介ですか!? なんとか前日中にスタート近くのホテルまで移動し、翌朝身支度をして会場の京都御所に着いた私でしたが、競技説明を終えた大会会長殿はおもむろに…

外崎則夫
3週間前
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京都〜日光を9日間で走った話2024(その2)

「まずい、、これは明日の京都のスタート時間に間に合わない可能性がある」 スタート前日の夜、品川駅の新幹線乗換口。この日からのぞみ号は全車指定席となり、指定券を購…

外崎則夫
1か月前
3

京都〜日光を9日間で走った話2024(その1)

忘れるということは、時として恵みである。しかし私の記憶の欠落は、そんな甘美な語句で包み込むにはあまりにも無秩序で、猛烈だ。 GWを丸ごと使い、京都から日光東照宮ま…

外崎則夫
1か月前
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「翔んで埼玉2」の未解決問題を考察する(番外編)

「さ」狭山茶を飲みながら 「い」いつもの草加せんべい 「た」たくましい深谷ねぎ 「ま」まだまだ沢山あるから これは、前回の記事での言及した、はなわ氏によるあまりに…

外崎則夫
3か月前
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「翔んで埼玉2」の未解決問題を考察する(その2)

え?公開四週目で早くも興行収入15億円ですか? 確かにヒットするだろうとは思っておりましたが、それにしてもここまで売れるものですか。よほど日本国民は虐げられた民…

外崎則夫
5か月前
5

「翔んで埼玉2」の未解決問題を考察する(その1)

あの衝撃の公開から4年。すべての埼玉県民が、いや全ての虐げられた日本人が鶴首していたと申しても決して過言ではない、あの大ヒット映画「翔んで埼玉」の待望の続編が先…

外崎則夫
6か月前
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続・京都〜日光570キロを9日間で走った話(その11)

参ったな〜明日は土砂降りか。 前日、一年ぶりのガストの唐揚げ定食の堪能に失敗してしまった私は、その落胆からなんとか復帰を果たし、翌日は栃木宿までの60キロの暑い…

外崎則夫
11か月前
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続・京都〜日光570キロをを9日間で走った話(その10)

非常に長い距離を走破するウルトラマラソンという競技に於いては、そのコースが大変解りにくいことがままあります。 通常のマラソンではコースの誘導員がついている、もし…

外崎則夫
11か月前
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続・京都〜日光570キロを9日間で走った話(その9)

軽井沢から群馬伊勢崎まで。全9日間のこの7日目の行程は、難所は少ないものの最長の79キロを要する距離です。しかし逆に言えば、この行程さえクリアすればゴールしたよ…

外崎則夫
11か月前
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続・京都〜日光570キロを9日間で走った話(その8)

ゴールデン・ウィーク真っ只中の5月3日。この日に中山道随一の温泉地及び観光地である下諏訪での宿泊先を直前で調達することは、まるでマラソンランナーがボブサップに素手…

外崎則夫
11か月前
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続・京都〜日光を9日間で走った話(その7)

我が国では何かを代表するものとして、その総数が三以上の場合は「大きい」の文字を使用し、三大夜景、四大文明、などと呼称を付与してその栄誉を称えることを世の習わしと…

外崎則夫
1年前
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続・京都〜日光を9日間で走った話(その6)

安かろう、悪かろう、などという言葉は、まさに遠い昔の遺物と化してしまったのかもしれません。 例えば、皆様もユニクロがお好きな方もいらっしゃるかと思います。一昔前…

外崎則夫
1年前
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続・京都〜日光を9日間で走った話(その5)

「お客様、窓からお城が良く見えるお部屋を用意しておきました」 おそらくそのホテルの支配人は、疲労困憊の出で立ちをして現れた眼前の男を見て、せめて翌朝はゆっくり外…

外崎則夫
1年前
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京都〜日光を9日間で走った話2024(その6)

京都〜日光を9日間で走った話2024(その6)

階段は、登るより降りる方がきついのだという事実を知る人は、ランナーに相違ない。

マラソンの経験がある方なら思い当たることでしょう。決死の思いでフルマラソンを走破した翌日の朝、会社へ向かう電車で駅のホームへ下る時、そして駅から歩道に降りる時、階段の下りで大腿四頭筋の収縮運動がもたらすあの激痛を。そう、手すりに捕まりながら必死の思いで降りる際、バリアフリーのために駅に設置されたエレベータのありがたみ

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京都〜日光を9日間で走った話2024(その5)

京都〜日光を9日間で走った話2024(その5)

「う〜う〜う〜」

声にならない声とはこのことを言うのでしょう。食したものを全て戻してなんとか眠りにつくことはできたものの、昨日70キロ走行して消費したエネルギーは適切に補填されず体調も回復せず、私は得体の知れないうめき声とともに翌日の朝を迎えざるを得ませんでした。しかも今日も同様に70キロを走らねばなりません。その上全区間最大の難所である美濃十三峠も待ち構えています。

長距離のランニングでお腹

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京都〜日光を9日間で走った話2024(その4)

京都〜日光を9日間で走った話2024(その4)

「いや〜やっぱりホテルの朝食は美味い!」

毎年定宿にしている彦根市のホテルで一日目の夜を過ごした翌朝、私は宿で無料で提供される朝食とモーニングコーヒーを堪能しておりました。道中はどうしてもコンビニ食が多くなる中、せめてホテルでの朝食でビタミンや食物繊維、カルシウムやミネラルを補給したい、そう私が思ったとしても一体誰が非難できるというのでしょう。

「さて、そろそろ出かけるとするか」

朝7時前に

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京都〜日光を9日間で走った話2024(その3)

京都〜日光を9日間で走った話2024(その3)

は?自己紹介ですか!?

なんとか前日中にスタート近くのホテルまで移動し、翌朝身支度をして会場の京都御所に着いた私でしたが、競技説明を終えた大会会長殿はおもむろに皆に自己紹介を求めたのです。
なにしろ日光まで走り通す参加者は30名限定の募集。そのうち今日のスタートには25名が来ています。確かにこの人数なら全員挨拶をしたとしてもそれほど時間はかかりません。
しかし、マラソンの大会での挨拶といえば、通

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京都〜日光を9日間で走った話2024(その2)

京都〜日光を9日間で走った話2024(その2)

「まずい、、これは明日の京都のスタート時間に間に合わない可能性がある」

スタート前日の夜、品川駅の新幹線乗換口。この日からのぞみ号は全車指定席となり、指定券を購入せずして乗車することは不可能となっています。むろん私も心得ており、そのため1時間前には品川駅に到着し、指定券を購入後車中の人となるはずでした。

しかしかの指定券売り場は、まるで舞台の幕が上がった瞬間の劇場のように多くの人々で溢れていま

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京都〜日光を9日間で走った話2024(その1)

京都〜日光を9日間で走った話2024(その1)

忘れるということは、時として恵みである。しかし私の記憶の欠落は、そんな甘美な語句で包み込むにはあまりにも無秩序で、猛烈だ。

GWを丸ごと使い、京都から日光東照宮まで、およそ570キロを走破する大会「例幣使みちジャーニーラン」。昨年度無事2回目の完走を果たし、意気揚々とわが埼玉に帰郷した私ではありましたが、しかしふと我に返った私はそんな勝利の美酒に酔うこともなく、一人果てしない絶望感に苛まれてしま

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「翔んで埼玉2」の未解決問題を考察する(番外編)

「翔んで埼玉2」の未解決問題を考察する(番外編)

「さ」狭山茶を飲みながら
「い」いつもの草加せんべい
「た」たくましい深谷ねぎ
「ま」まだまだ沢山あるから

これは、前回の記事での言及した、はなわ氏によるあまりにも秀逸な「翔んで埼玉2」のテーマ曲「さきほこれ埼玉」の後半の歌詞です。
実は前回、映画に残された最後の未解決問題としてこの歌を取り上げたのですが、かの記事をご覧になった方々の中には
「この後半の部分もかなり謎が多いと思われるが、なぜ取り

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「翔んで埼玉2」の未解決問題を考察する(その2)

「翔んで埼玉2」の未解決問題を考察する(その2)

え?公開四週目で早くも興行収入15億円ですか?

確かにヒットするだろうとは思っておりましたが、それにしてもここまで売れるものですか。よほど日本国民は虐げられた民衆を題材とした物語がお好きなのか、もしくは単にMなだけなのやもしれませんが。ああ、女王様!今宵も我が醜い埼玉は、その大いなる愛のムチで昇天するのです。

それはさておき、本映画はその公開に際し、主役のGACKT氏は「この映画はパート2で終

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「翔んで埼玉2」の未解決問題を考察する(その1)

「翔んで埼玉2」の未解決問題を考察する(その1)

あの衝撃の公開から4年。すべての埼玉県民が、いや全ての虐げられた日本人が鶴首していたと申しても決して過言ではない、あの大ヒット映画「翔んで埼玉」の待望の続編が先日公開されました。埼玉地区はもちろん関西方面でも映画館は空前の賑わいを見せているようで、公開から一ヶ月も立たずして100万人の動員を達成するなど早くもアカデミー賞受賞間違いなしとも言われております。
かくいう私も公開3日目に板橋のイオンシネ

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続・京都〜日光570キロを9日間で走った話(その11)

続・京都〜日光570キロを9日間で走った話(その11)

参ったな〜明日は土砂降りか。

前日、一年ぶりのガストの唐揚げ定食の堪能に失敗してしまった私は、その落胆からなんとか復帰を果たし、翌日は栃木宿までの60キロの暑い行程を完遂させていました。しかし、スマホの天気予報を見る限り明日の最終日には大量の降雨が予測されており、とても満足に走れる天候ではありません。

ゴール関門は明日の18時。当初は全570キロの行程を走馬灯のように脳裏に思い浮かべながら最後

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続・京都〜日光570キロをを9日間で走った話(その10)

続・京都〜日光570キロをを9日間で走った話(その10)

非常に長い距離を走破するウルトラマラソンという競技に於いては、そのコースが大変解りにくいことがままあります。
通常のマラソンではコースの誘導員がついている、もしくは集団で走るためコースを迷うことがそもそもない、といった理由でこうした懸念を持つことはほとんど無いのですが、これほどの長い距離を走る大会ともなると、ルートが記載された地図を渡されてあとは自己責任で走ってくれ、というケースが多くなるのはやむ

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続・京都〜日光570キロを9日間で走った話(その9)

続・京都〜日光570キロを9日間で走った話(その9)

軽井沢から群馬伊勢崎まで。全9日間のこの7日目の行程は、難所は少ないものの最長の79キロを要する距離です。しかし逆に言えば、この行程さえクリアすればゴールしたようなものと申しても過言ではありません。
ただ一つ、天候という不確定要素の懸念を除いては。

5時起床。6時出発。さすが避暑地として有名な軽井沢の早朝は肌寒く、ジャケットにロングパンツの装備でも寒いくらいです。いかにも「私はセレブ」という出で

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続・京都〜日光570キロを9日間で走った話(その8)

続・京都〜日光570キロを9日間で走った話(その8)

ゴールデン・ウィーク真っ只中の5月3日。この日に中山道随一の温泉地及び観光地である下諏訪での宿泊先を直前で調達することは、まるでマラソンランナーがボブサップに素手で勝つごとく多大なる困難を極めます。
そのようなわけで宿泊先の調達に遅れ下諏訪での宿の確保に失敗していた私は、やむなく2駅先の茅野の大浴場付きステーションホテルに今日の寝所を確保していました。下諏訪とは異なり温泉ではありませんが、大浴場と

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続・京都〜日光を9日間で走った話(その7)

続・京都〜日光を9日間で走った話(その7)

我が国では何かを代表するものとして、その総数が三以上の場合は「大きい」の文字を使用し、三大夜景、四大文明、などと呼称を付与してその栄誉を称えることを世の習わしとしています。三大夜景は神戸函館長崎とされておりますが、最近では函館と長崎がその地位から陥落し、かわりに札幌や北九州市が選定されたとの情報もあります。夜景には都市の光が欠かせないもの、時代の移り変わりと共にその主役も変わり得るのはやむを得ない

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続・京都〜日光を9日間で走った話(その6)

続・京都〜日光を9日間で走った話(その6)

安かろう、悪かろう、などという言葉は、まさに遠い昔の遺物と化してしまったのかもしれません。
例えば、皆様もユニクロがお好きな方もいらっしゃるかと思います。一昔前は、かの製品と言えば安価であるがデザインも野暮ったく品質も良くないなどと囁かれておりましたが、今やそのような風評は全く過去のものとなり、そして今やユニクロをしのぐ安価で良質なブランドも多数排出している新たなる時代が到来しております。

その

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続・京都〜日光を9日間で走った話(その5)

続・京都〜日光を9日間で走った話(その5)

「お客様、窓からお城が良く見えるお部屋を用意しておきました」

おそらくそのホテルの支配人は、疲労困憊の出で立ちをして現れた眼前の男を見て、せめて翌朝はゆっくり外の景色でも見ながら休んでほしい、というおもてなしの精神からその言葉を発したのでしょう。

しかし、明日は9日間中の最難関区間です。去年まさに満身創痍で夜遅くホテルにたどり着いた苦い経験を持つ私は、とにかくこの日は朝早く出発して時間の余裕を

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