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京都〜日光を9日間で走った話2024(その2)

「まずい、、これは明日の京都のスタート時間に間に合わない可能性がある」

スタート前日の夜、品川駅の新幹線乗換口。この日からのぞみ号は全車指定席となり、指定券を購入せずして乗車することは不可能となっています。むろん私も心得ており、そのため1時間前には品川駅に到着し、指定券を購入後車中の人となるはずでした。

しかしかの指定券売り場は、まるで舞台の幕が上がった瞬間の劇場のように多くの人々で溢れていました。日常の役割を一時忘れ、各々が自己の目的を果たすため、つまりは目的地への指定券を手に入れるために時間と空間を巡る戦いを繰り広げる、まさにその真っ只中に私は放り込まれたのです。

その指定券を購入する窓口は3つ。対してその待ち行列に並んでいる客はおよそ50人。
しかし、京都行きの新幹線の最終の出発まで、残された時間はおよそ40分。駅員が窓口の処理に一人当たり平均3分を要してしまうと私は新幹線に間に合わない計算となります。

この大会のために行程上のホテルもすべて予約しGWに他の予定は一切入れていなかった私です。もしここで電車に間に合わないなどという失態を演じるということとなれば、これからの長い黄金週間を私は一体どうやって過ごせば良いのでしょう。

「考えろ! 何か良い方法があるはずだ。考えるんだ!」

もう夜9時も近く、今から夜行バスを予約するのは困難です。そもそも連休前の金曜夜にバスが空いているという保証はどこにもありません。

秒針は無情にもスピードを上げ、絶望の未来へと私を押し流します。それはまるで、逃げる獲物が追い詰められる瞬間のように、息を呑むほどの切迫感を持って私に襲いかかります。刻一刻と薄れゆく時間の砂に委ねられる我が運命。終電まであと20分。

「くそ、、こんな所で命運が尽きることになろうとは、、、」


「ホームズ、この作者はもうちょっと家を余裕を持って出発するとか、そういうことは頭に全く無かったのかな」
「まぁそう言うなよワトソン君、なにしろGWは仕事を全部休むんだ。おおかた残作業を片付けたりして出るのに手間取ったんだろう。」
「それで、結局どうなったんだい?」
「そりゃなんとか新幹線に乗れたに決まっているよ。ま、19世紀のロンドンではちょいと難しいけど、終電15分前に気がついたのはギリギリだったね。」



座席の背もたれにどっと疲れた体を預けながら、私はスマホの画面を眺めていました
「東海道新幹線オンライン予約、スマートEXか。当日の10分前でも会員登録して予約もできるとは、全く便利な世の中になったものだ。」

運命のスタートまで、あと10時間。

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