京都〜日光を9日間で走った話2024(その1)
忘れるということは、時として恵みである。しかし私の記憶の欠落は、そんな甘美な語句で包み込むにはあまりにも無秩序で、猛烈だ。
GWを丸ごと使い、京都から日光東照宮まで、およそ570キロを走破する大会「例幣使みちジャーニーラン」。昨年度無事2回目の完走を果たし、意気揚々とわが埼玉に帰郷した私ではありましたが、しかしふと我に返った私はそんな勝利の美酒に酔うこともなく、一人果てしない絶望感に苛まれてしまっていました。
とにかく、私は第一回大会は完走したのです。よって確かに一度は通過した道程のはずであり、しかるに二回目の大会は太陽が東から登るがごとく何の障害もなく歩み進められるはずでした。
しかし結果は、
彦根手前の路上の側溝に2年連続で墜落
大湫宿過ぎにゴルフ場の道に迷い込んで2キロのロスト(しかも他の参加者を道連れ)
鳥居峠での下りルートの致命的なミス(しかも2人も道連れ)
安中宿付近での2キロの逆走(言語道断)
佐野市付近での廃止陸橋での2キロのロスト(これも他の参加者を道連れ)
という、およそ前年度完走者の称号を持つには到底ふさわしくない失態を演じてしまったことは、全く恥ずべきことであったと申さねばなりません。
行くべき道のりを誤るということは、当然ながら正規ルートへの回復に余計な体力を要します。一日70キロの行程を毎日走るという過酷な日程を自らの身に課したこの道程においてはそうした誤りが次第に体力を削っていき、ついにはこと切れて路上に朽ち果て無縁仏の姿となるやもしれません。ああ、死して屍、拾う者無し。
次の2024年度の大会では、2年連続完走者の威厳を保つためにもそうした失態は断じて許されるものではありません。さっそく私は前回出走時にロストをした箇所、それ以外にも注意すべき箇所を集積する作業に入りました。ルートが不安な箇所は休日を利用して現地に赴いて調査も行い、さらに前回できなかった全ルートのコンビニ一覧の作成にも入りましたが、ふとここである思いがよぎりました。
これは、他の参加者にも公開したほうが良いのでは?
思えば第一回大会に参加する際、私自身も全く情報が無く「果たしてゴールまでたどり着けるのか?途中熊にでも食われるんじゃないか」と思いながら参加し、「熊注意!」と書かれていた山中では森のくまさんを大声で歌ってなんとか切り抜けたという経験もあります。そうした初参加の出走者にとっては幾ばくかの福音となるやもしれません。まぁどうせ自分用に作らなければと思っていた文書です。それをネットで公開したとしてもバチは当たるまい。
そんな感じで下記のような大会用ガイドブックを作成してネットで公開してみました。
しかし大会前日、せっかくガイドブックに「必携品!」と持ち物リストを書いたのに、著者自身がそのうち2つも家に忘れてしまったことに出発直後に気がつくことになろうとは、お釈迦様でもアラーの神でも想像できなかったに違いありません。そう、書くことと実践することの間には大いなる隔たりが存在する、書いたからと言って持っているとは限らない。来年の参加者にはぜひともそれを伝えねばなりますまい。
ああ、死して屍、拾う者無し。
(その2へ続く)