【日記】『勢いとノリの弾丸スケジュール』~2023町田遠征~
過密スケジュールには、リスクが潜んでいる。ノリと勢いには危険性が含まれている。それをちゃんと実感した町田遠征となった。
5月6日、19時。岡山駅を高速バスで出発し、まずは大阪を目指す。11時から15時までバイトして、慌ただしく準備してから岡山駅に向かったのだが、いきなりアクシデントが発生する。乗車場所を間違えた。最近は夜行バスに乗って東に行くことが増えていたから、いつもと同じようにNHK岡山放送局があるビルの下で待機していた。しかし、ぜんぜんバスが来ない。不安になって辺りを見回すと、大きな道路を挟んだ向かい側に、スーツケースや大きなリュックサックをもった人が続々とバスに乗り込んでいるではないか。車体を見ると、両備バスの文字。僕が乗るバスに間違いなかった。只今の時刻は18時57分。発車まで、あと3分。僕は大きなリュックを背負ったまま歩道橋を爆走した。本当にギリギリだった。出発時間の直前に席に座ると、汗が出た。
何とか岡山を出発し、約3時間バスに揺られながら大阪駅に到着すると、40分後に再びバスに乗った。次の目的地は秋葉原駅だ。約8時間の旅である。夜行バスは、どれだけ寝れるか。それが命運を握っていると言っても過言ではない。車内は完全に消灯するため、スマホを触ることもできないし、読書もできない。時計の針が進むのを待つだけという地獄になってしまう。だから、絶対に寝ないといけない。その中で、今回に乗ったバスは厳しい環境だった。普通の4列席の観光バスタイプで、すぐ隣には知らない人が乗っているし、2人を隔てるカーテンがない。後ろの人もいるから、あんまり座席を倒すこともできない。正直、今までで最も過酷な環境だった。それでも、寝ないといけないという使命感に駆られて、膨らませた枕を首元に装着し、蒸気でホットアイマスクを付けると、気絶するように寝た。同世代くらいの男の人が窓際にいたけど、お構いなしに爆睡した。たぶん、いびきもかいた。途中でサービスエリアに停車する休憩があるはずなのだが、それがなかったと錯覚するくらいに寝た。きっと隣の彼は僕の足をまたぎながら、バスを降りて休憩時間を過ごしただろう。少しだけ申し訳なく思う。ただ、強行突破的なスケジュールを乗り切るためには、行きのバスで寝るしかなかったんだ。自己防衛と言ったら自分勝手だけど、緑のキャップを深く被った彼よ、許してくれ。
5月7日、7時半。何とか秋葉原駅に到着し、バスを降りた。バッキバキになった身体を伸ばしつつ、一目散にマクドナルドへ。夜行バスのメリットが寝ている間に着くことなら、ほとんどのお店が空いていないのがデメリットだ。24時間営業しているお店と店員さんに感謝しながら、ソーセージエッグマフィンを食べることがルーティンになっている。岡山で食べるものと味は全く変わらないが、やっぱりおいしい。
メガネからコンタクトに変えたりして、1時間くらいゆっくりする。ホットコーヒーを飲んで、徐々に活動モードに切り替えていくと、電車に乗った。町田GIONスタジアムの最寄り駅である鶴川駅に向かう約1時間の電車の中で、綾辻行人さんの『水車館の殺人』とサッカー専門新聞『エルゴラッソ』を読んで過ごした。最初は満員電車だったけど、徐々に人が少なくなり、目的地に着くころには普通に席に座れていた。
9時過ぎに鶴川駅に着いた。初めて町田のエンブレムを目にして、首位との重要な一戦に緊張する。しかし、スタジアム直行の夜行バスが出発するまで、あと2時間ほどある。近くのスタバでコーヒーを飲みながら、ミランVSラツィオを見た。
11時36分、シャトルバスで約25分かけてスタジアムへ。両チームのユニフォームが入り乱れる車内でスタメンを確認して、気持ちが奮い立つ。「チアゴさん、今日も頼んだぞ」と。
初めて町田GIONスタジアムに足を踏み入れた。そこは“天空の城 野津田”と題して、スタジアム前広場でいろんな催しをやっていた。特に印象的だったのが、お店の外装。グッズショップが武具・防具屋と書かれていて、レンガ調のデザインが施されている。まるでドラゴンクエストの村に入った感じだった。キッチンカーで販売していたローストビーフのユッケ風ボウル(ご飯大盛りで900円)がめちゃくちゃおいしかった。スタジアム前広場を満喫し、中学のサッカー部の一つ上の先輩である奥山洋平選手がサイン会をしているところを見届けてから、ビジター席に向かった。
14時、試合がキックオフ。びしょ濡れになりながら声を張り上げるサポーターを頼もしく思い、手拍子をしながら戦況を見つめた。1-1の引き分けを告げるタイムアップの笛が鳴り、悔しい表情で挨拶をする選手のたちを見てから、上下のカッパと靴とカバンに被せたビニール袋を外し、行きと同様にシャトルバスに飛び乗った。鶴川駅に到着し、朝にもお世話になったスタバでコーヒーを飲みながらパソコン作業をした。
18時過ぎに作業を終えて、電車で1時間かけて東京駅へ戻る。試合を振り返えると、勝てた試合だったと悔しさがにじみ出てきた。ホーム戦では勝つぞと、1人で意気込んだ。
19時半ごろに到着して、おいしいごはんで空腹を満たそうと思い、ねぎしへ。ちゃんと牛タンを味わおうと思うと、2000円は覚悟しないといけない。僕にとっては、ややお高目な値段設定だったけど、やわらかくてジューシーな牛タンは絶品で、ダシの効いたとろろが白米を一瞬で消し去っていく。ご飯をおかわりして、値段を忘れて堪能した。
20時過ぎ、夜行バスの出発時間まで、あと1時間半。行きのことがあったから、少し離れた乗車場所を下見しておく。それからコンタクトを取ったりして、準備をした。
21時半、無事に夜行バスに乗車した。行きとは違い、3列独立シートで、しかも窓際。座席はカーテンと窓で四方が遮られており、プライベート空間が確立されていた。勝点3に値する快適さ。後ろに人がいなかったから、めちゃくちゃ席を倒して寝る体勢を整えると、乗車から約10分後には爆睡していた。またも気絶するように。
5月8日、6時。大阪駅まで、あっという間だった。今回の遠征も、あと少し。岡山行きのバスまでの約1時間半の待ち時間を、吉野家で焼き魚定食を食べて、コンビニやトイレに行って過ごした。
7時25分、準備万端でバスに乗ろうと受付をする。名前と座席番号を伝えると、運転手さんからまさかの「名前がないですねぇ」の返事が。予約ページを注視すると、乗車日が5月7日の7時半となっている。やらかした。これ、前日のやつやん!目の前のバスが、一気に自分とは無関係の四角い箱になった。
「やばっ、終わった」
絶望の淵に立たされた。次のバスは約3時間半後。夕方にサッカースクールのバイトがあるから、なるべく早く帰りたい。やけくそで新幹線に乗った。券売機に無心で5000円を突っ込んでいた。大きな凡ミスをした、どうしようもない自分にイラつき、あきれながら帰路につく。予定していたバスよりも、2時間くらい早く家に帰ってきた。費用を抑える努力が最後の最後に水の泡になった僕は、喜びを爆発させて出迎えてくれた愛犬に慰めてもらった。
ファジが2連勝を達成した山形戦の後に勢いで決行した今回の町田遠征。待っていたのは、詰めの甘さを実感する結末だった。しかし、首位相手に堂々と渡り合ったチームのたくましさと、土砂降りも関係なく一致団結して鼓舞するサポーターの雰囲気を直接感じることができたのは良い経験になった。ただ、3000円をバス会社に寄付してしまった後悔は当分引きずるだろうな。
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