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読書暮らし

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2019年6月の記事一覧

ほしいのは、こんな友達/あしながおじさん

ほしいのは、こんな友達/あしながおじさん

「あしながおじさんがほしい」なんて、学生のときによく友達とぼやいていたことを思い出す。

例えば「援助交際」がしたいとか、今でいう「パパ活」がしたいとか(同じか)特に深い意味があったわけではなく、ただ単に「定期的に何もしないでお金が欲しい」くらいの他愛もない会話だったと思うけど、いかにあしながおじさんを読んだことがないかがバレる恥ずかしい会話だったなあと今ならわかる。

あしながおじさんは「不幸な

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片手で持てるくらいの小さな存在だけど/図書室のキリギリス

片手で持てるくらいの小さな存在だけど/図書室のキリギリス

こういうのはさあ、ずるいんだよねえ、と思いながら絶対に手を取ってしまうジャンルがある。

それは「本屋」だとか「図書館」「図書室」みたいな単語がタイトルに入ってるもの。多分ほとんど無意識的に手に取っている。

だって本がすきなんだもの、そりゃあすきなものが題材になっていたら気になるでしょうよ。

冒頭を読み出してからだいたい、ああ、またつられてしまった、と気付くのだけど、今回はちょっと気になってし

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「思い込み」の力ってすごい/オズの魔法使い

「思い込み」の力ってすごい/オズの魔法使い

『オズの魔法使い』(ライマン・フランク・ボーム:新潮文庫)は、1900年、100年以上前に生まれた物語だ。

そう思うとかなり昔の作品のような気もするけど、そういう意味での古臭さは全くない。

ただ、なんとなく知った気でいたこの物語だけど、ドロシーたちの願いを叶えてもらうまでこんなに時間がかかっていたのか…というのが、読み終わったあとに抱いた感想かもしれない。

【あらすじ】ある日突然、大きな

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人が大きく変わってゆく姿をこんなにもそばで見ることができる/秘密の花園

人が大きく変わってゆく姿をこんなにもそばで見ることができる/秘密の花園

最初の庭園もの(?)が『トムは真夜中の庭で』だったからか、今日読んだ『秘密の花園』(バーネット:西村書店)も、てっきり魔法がかった物語なんだとばかり思っていました。

この物語では特に終盤、「魔法」という言葉が連呼されるけど、魔法だなんていう、ある種、他人任せなものではなく、自分で気持ちを強くもって努力をすれば、これだけ変わることができるのだと教えてくれる成長の軌跡の物語でした。

【あらすじ】

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誰だっていつでも子どもに戻れる/トムは真夜中の庭で

誰だっていつでも子どもに戻れる/トムは真夜中の庭で

『トムは真夜中の庭で』(フィリパ・ピアス:岩波少年文庫)を読んだ。

初めて手に取ったとき、ずっとずっと昔の物語なんだろうと勝手に思っていたけど、日本で初版が出たのは1975年。わたしが生まれるたったの25年前のことだった。

秘密がある庭ってすごくすごく魅力的。

自分だけの庭で、自分だけの秘密基地を作って、自分だけの友達ができて。

これは「時」をテーマにした、とてもきれいなファンタジー。

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子どもを守るナイトになりたい、といつかきっと/クローバーナイト

子どもを守るナイトになりたい、といつかきっと/クローバーナイト

将来、結婚するかもわからない。ましてや、子供がいる想像なんて。

わたしはまだまだ自分のことがいちばん心配で、不安。だから結婚に対して特段何かを思うことはこの年でお恥ずかしながら正直全くと言っていいほどない。それでも同年代の人たちが結婚したり、子供を産む話も聞くようになってきて、縁遠い世界とは言えなくなってきた。

ただ、それでもあまりにもピンとこなくて子供の話を聞いても「かわいいねえ」という感想

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毒リンゴを作るには稲光を起こしてから/魔法使いたちの料理帳

毒リンゴを作るには稲光を起こしてから/魔法使いたちの料理帳

実際に作るかどうかは別として、けっこうレシピ本がすきなタイプだと思う。

レシピ本に対して、すきなタイプ嫌いなタイプがあるのかはちょっとわからないけど、どこにでもある食材で新しい体験ができたり、組み合わせによってぜんぜん知らない名前がついていることが面白くて、なんとなく本屋さんで立ち読みしては「ふんふん」とためになった顔をよくしている。

食べ物小説やエッセイもだいすきなので、わたしのキッチンには

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みんな、将来に向かって歩いている。/つむじ食堂と僕

みんな、将来に向かって歩いている。/つむじ食堂と僕

吉田篤弘さんの持つ独特の空気感はなんなんだろうなあ。

最近は女性作家さんを手に取りがちなんだけど(本当に無意識で)それでも吉田さんのこのニュートラルな感じがとてもとても好きで、気がついたら手に取ってぱらぱらとページをめくってしまいます。

今日、本屋さんで見つけてその場でつい読み切ってしまったのが『つむじ風食堂と僕』(ちくまプリマー文庫)

この本は吉田篤弘さんの著作のなかでも有名な<月舟町三部

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かくれんぼと夢と儚さと/ユメミザクラの木の下で

かくれんぼと夢と儚さと/ユメミザクラの木の下で

昨日ご紹介した『ふしぎな木の実の調理法』に引き続き、今日もこそあどの森です。

すっかりハマってしまって、ちょこちょこと読んでいるのだけど、今日読んだ『ユメミザクラの木の下で』が本当にほんとうにとても良すぎたので、連続だけどお話させてください。



遠くは離れて暮らすバーバからお手紙でかくれんぼの話を聞いてから、かくれんぼのわくわくって一体何なのだろうとスキッパーは興味を惹かれます。

スキッ

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春が持ってきてくれるもの/ふしぎな木の実の料理法

春が持ってきてくれるもの/ふしぎな木の実の料理法

この森でもなければ
その森でもない、
あの森でもなければ
どの森でもない、
「こそあどの森」

こそあどの森を知っていますか?

昨日ご紹介した『選ばなかった冒険』をはじめ、岡田淳さんは小学生がふとしたきっかけで不思議な世界に紛れ込んでしまうような物語が多くあります。

多いし、その全てが例外なくわくわくさせてくれるので、子供向けのファンタジーのおすすめは?と聞かれると岡田淳さんをあげることが多い

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ゲームの世界ってとんでもなく理不尽だ/選ばなかった冒険

ゲームの世界ってとんでもなく理不尽だ/選ばなかった冒険

人としての役割は一体どこでつけられてしまうんだろう。
わたしと君の違いはなんだろう。

与えられた役割を全うする。
それでいいのかな。

本当にいいのかな。

***

読み終わった直後から、や、途中から悶々としてくる。

ゲームの世界に飛び込んでしまって、その中で過ごすことになる主人公。

今回読んだ「選ばなかった冒険-光の石の伝説-』(岡田淳:偕成社文庫)の本当に簡単なあらすじはこうだ。

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まさかわたしが恋愛小説で泣くだなんて。/ロマンシェ

まさかわたしが恋愛小説で泣くだなんて。/ロマンシェ

原田マハさんの文章の使い分けは一体どうやっているのだろう。

今回読んだ『ロマンシェ』は乙女心を持った男の子が主人公のラブコメディ。女性の心、というより完全なる乙女の主人公は母親のこと「ママン」なんて言うし、好きな人のことを「愛しの王子様」だなんて呼ぶ。

表では一生懸命男性を演っているとはいえ、ちょっとやりすぎかなと思った…し、正直最初は全然馴染めなかった。それは主人公のキャラクターに、というよ

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