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みんな、将来に向かって歩いている。/つむじ食堂と僕

吉田篤弘さんの持つ独特の空気感はなんなんだろうなあ。

最近は女性作家さんを手に取りがちなんだけど(本当に無意識で)それでも吉田さんのこのニュートラルな感じがとてもとても好きで、気がついたら手に取ってぱらぱらとページをめくってしまいます。

今日、本屋さんで見つけてその場でつい読み切ってしまったのが『つむじ風食堂と僕』(ちくまプリマー文庫)

この本は吉田篤弘さんの著作のなかでも有名な<月舟町三部作>のスピンオフ作品です。

<月舟町三部作>
◆つむじ風食堂の夜
◆それからはスープのことばかり考えて暮らした
◆レインコートを着た犬

二番目の作品にあたる『それからはスープのことばかり考えて暮らした』に出てくるサンドウィッチ屋さんの息子・リツくんがこの物語の主人公。

このシリーズには少しだけ繊細な、でもとても普通な大人たちが多く出てきます。そんな大人たちにリツくんが「働くってなに?」「どんな仕事をしているの?」「仕事ってなんだろう?」と聞いて回ります。

さまざまな職業の人たちが自分の仕事って言うのは…と語り出すのは、自分が経験したことない職業の裏側を聞かせてもらうようで、もうすっかり大人になってしまったはずの自分までなんだかどきどき。

もちろんその中にはやりたくてやっているわけではない、仕方なく働いている人だっています。

だけど、それでもその人なりの美学を持って仕事を語る姿はかっこよくて。

わたしがもしリツくんに聞かれたらどんな風に語ろうかな、なんて読み終わったあとは少しだけ想像してしまいました。

リツくんは大人になっていったいどんな職業を選ぶのだろう。

このシリーズはもう完結してしまったけど、ほんの小さな身近なスピンオフでもいいからリツくんの将来が気になってしまいました。

ちなみにこのシリーズの舞台になっているのは、吉田篤弘さんが少年期に過ごした町なんだそう。少し調べたら最近住み始めたわたしの町ととても近くて猛烈に親近感を覚えているこの頃です。

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