図書室のキリギリス

片手で持てるくらいの小さな存在だけど/図書室のキリギリス

こういうのはさあ、ずるいんだよねえ、と思いながら絶対に手を取ってしまうジャンルがある。

それは「本屋」だとか「図書館」「図書室」みたいな単語がタイトルに入ってるもの。多分ほとんど無意識的に手に取っている。

だって本がすきなんだもの、そりゃあすきなものが題材になっていたら気になるでしょうよ。

冒頭を読み出してからだいたい、ああ、またつられてしまった、と気付くのだけど、今回はちょっと気になってしまったのでそのまま借りることにした。

【あらすじ】
独り身になったことをきっかけに、資格を持たない“なんちゃって司書”として高校の図書室で働きはじめた詩織。慣れない仕事に戸惑いながら、だんだんと学校司書の仕事にやりがいを覚えるようになる。毎章のなかで小さな謎や問題が出てきて、物語を通して詩織が気付いていく全部で5章からなるこの一冊。

うまいなあと思うのが、物語自体は確実にフィクションなのに、出てくる小説や、有名人が当たり前のように実在するものを出してくるところ。

さらに舞台が図書室なのでばんばん出てくるタイトルの数々に、思わず気になってメモまでとってしまう。意識して多めに出しているような気さえする。

とはいえ、本の紹介小説などでは全くなく、本を通して謎が深まることもあれば、本があるから解決することもある。それがくどくなりすぎない、ちょうど良い小説だった。

特にいいなと思うのが、入学したときには読書なんて興味ないと言わんばかりに机に突っ伏して寝ている大隈くんが、一冊の本を通して、影響されて変わってゆくところ。

一冊の写真集に魅了されて、写真家のように旅がしたいと考え、実際に休みの間に一人旅をするのだ。初めての一人旅。そこでも新しい体験をたくさんして、また変わってゆく姿。

司書冥利につきるよなあ…と詩織ではないけど、わたしまで嬉しくなってしまう。

片手で持てるくらいの大きさの、2時間もあれば読み終わってしまうくらいの小さな存在かもしれない本がきっかけで、自分のこれからやこれまでが大きく影響されてしまうことってきっとある。

でも数え切れないくらい膨大な数の本のなかでそういうものに出会えることって、ほんとうはすごく奇跡的なことで、それこそ恋愛みたいに運命みたいなものがあると思う。

その運命に正しく出会えて、まっすぐに影響を受けて、変化できることってとてつもなく尊いことよなあ…とわたしは思うのです。

物語を通して、本の持つ力を改めて知ることができてよかった。

続編もあるみたいだから読んでみたいなと思いつつ、やっぱり本で本を題材にするのはちょっとずるいよね。すきとすきとコンボ。

他にもおすすめがあったらぜひコメント欄でおしえてください。ぐうう、と思いながらきっと探してみるんだと思います。


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