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技術史

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物作りの歴史・様々な身の回りの製品の歴史を簡潔に紹介します。
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2023年7月の記事一覧

【技術史】木の腐敗熱を利用する

【技術史】木の腐敗熱を利用する

1960年代、木の枝が腐敗するときに熱が生じることを知ったジャン・パンは、森で集めた枝や低木を細かくする機械や、堆肥タンクによってエネルギーを作り出す方法を開発する。
この腐敗した枝の中に存在する細菌は熱を発生させ、その熱は熱交換システム(熱エネルギーをある流体から別の流体に移す)によって、3ヶ月から6ヶ月のあいだ、35℃~45℃の温水を供給することができた。パンはこの熱エネルギーのおかげで生活に

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【技術史】カーシェアリングの始まり

【技術史】カーシェアリングの始まり

自動車が誕生したとき、すでにカーシェアリングという考え方があった。しかしそれが発展するのは第二次世界大戦のさなかである。一般市民のガソリン消費量を減らし、その分を軍用車両に回すため、アメリカ政府は石油会社の協力を得て宣伝ポスターに800万ドルを割り当て、さらに「カークラブ」を設立して自動車免許所持者に登録を促した。「友人を作る新しい方法」と人間関係が豊かになることを強調したり、「ひとりで運転するの

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【技術史】鳥をみくびってはいけない

【技術史】鳥をみくびってはいけない

中国の毛沢東の四害駆除運動は、過去最悪の公衆衛生政策と言われている。
1948年の後半に、毛沢東主席が中国で権力を持つと、国は医療危機に見舞われ、コレラやペスト、マラリアなどの感染症がはびこった。毛沢東の目標は、中国を農業国から、近代産業大国に変えるというもので、医療危機をなんとかする必要があった。
解決策のいくつかは、当たり前で分別あるものだった。集団ワクチン計画や、衛生状況の改善などだ。問題は

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【技術史】エーテルの奇跡

【技術史】エーテルの奇跡

17世紀の絵画は歯科医が歯を抜いているところ。麻酔剤が開発されるまで、痛みがなるべく少なくなるように医師は患者にアルコールを飲ませたり、殴るなどして気を失わせたりしてから、できるだけ素早く処置を施した。

1846年、アメリカ人歯科医ウィリアム・モートンは医学に大きな進歩をもたらした。麻酔剤として患者に化学薬品のエーテルを吸引すると、痛みのない手術ができることに気づいた。

『参考資料』
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【技術史】電気で通信する

【技術史】電気で通信する

モールスとベイルは送信キーを押すと電池を含む電気回路が閉じて作動する機械を製作した。これによって電気パルスが電線のもう一方の端にいる受信者に送られた。受信者側には、送られた電気パルスによって動作する小さな電磁石があって、これがペン先を引き寄せ、紙テープに長短の印(ドット)をつけた。

【技術史】近代的な潜水艦第1号

【技術史】近代的な潜水艦第1号

かつて潜水艦を夢見た先駆者たちは、深海の様子を想像し心をおどらせた。古代ギリシャのアレキサンダー大王は、大きなガラス瓶の中に入って海中に潜ったと伝えられている。
1500年代にはダイビング・ベル(潜水鐘)という空気を満たした底のない鐘型容器のような部屋に入って海に潜るのが海底探査家の間で流行した。

1773年、アメリカ人発明家デイビッド・ブシュネルは、一人乗りの木製樽にプロペラと操縦ギア、のぞ

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【技術史】ショッピングセンターのカート

【技術史】ショッピングセンターのカート

世界の経済は商品やサービスを売り買いすることで成り立っている。
1936年、アメリカ人商店主シルバン・ゴールドマンは、買い物客は手に持てる分しか商品を購入していないことに気づいた。そこでゴールドマンは折りたたみ式の椅子に金属製のカゴを溶接し車輪をつけた。そうしてできたのが、こんにちスーパーに必ずあるカートである。
ちょっとした発想だが、日常の中にある不便なとことに気づき、改善策を考える視点を持つこ

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【技術史】アルフレッド・ノーベル

【技術史】アルフレッド・ノーベル

アルフレッド・ノーベルはスウェーデンの化学者・技術者で、ダイナマイトやさらに強力な爆薬を発明したことで有名だ。現在までノーベルの発明は、鉱山開発や運河・鉄道、道路の建設に役立ってきた。また、1887年に開発したダイナマイトより強力な爆薬バリスタイトは現在もロケット固形燃料として使われている。

1888年、ある新聞にノーベルが死去したとする誤報が掲載された。実際に死去したのはノーベルの兄だった。

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【技術史】絵のパズル

【技術史】絵のパズル

最初のジグソーパズルはイギリスの地図制作者ジョン・スピルスベリーが1766年に教材として製作したものと考えられている。スピルスベリーはヨーロッパ地図を木製の板に貼り付けてから、それをジグソー(糸のこ)で切って細かいピースにした。生徒はこのピースを再び組み合わせることで地理の学習ができる。「ジグソー」という名称はこのパズルを作るのに使われた(糸のこ)に由来する。

【技術史】焦げ付かないフライパン

【技術史】焦げ付かないフライパン

フライパンの表面を焦げ付かないようにするコーティング技術は偶然生まれた。アメリカ人化学者ロイ・プランケットが冷蔵庫に使う冷媒用ガスの研究をしている時に、たまたま非常に粘着性の弱い物質ポリテトラフロオロエチレンを発見した。この長い名前の物質はのちに「テフロン®️」と名付けられて、フライパンに用いられ、パンケーキをひっくり返すのに絶大な貢献をした。


『参考資料』
https://www.tefl

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【技術史】電気の発見

【技術史】電気の発見

1780年ごろ、イタリアの物理学者ガルバーニは、死んだカエルの脚を銅製の留め具で固定し、鉄製のメスを使って解剖した際に、カエルの筋肉が痙攣したことに気づきました。ガルバーニは、カエルから電気的な流れが発生したと考え、これを「動物電気」と名付けました。

同じくイタリアの物理学者であったボルタは、ガルバーニの発見に興味を引かれました。しかし、彼はカエルから電気が発生したとは考えず、異なる金属同士の接

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【技術史】電気を使って情報を伝える

【技術史】電気を使って情報を伝える

1820年、デンマークの物理学者エルステッドは、電流の通った導線のそばに方位磁石を置くと、針がそれることを発見した。1830年には、アメリカのヘンリーが、導線に電流を通して1.5km離れた場所にある電磁石を反応させ、鐘を鳴らすことに成功します。
イギリスの発明家クックとホイーストンは、こうした発見を電信装置に応用します。彼らが発明した装置は、複数の針を備えていて、電流が導線を通して送られると、特定

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【技術史】チーズ商人が発明した世界初の電気通信機

【技術史】チーズ商人が発明した世界初の電気通信機

はるか遠く離れた場所に、ほぼ瞬時に情報を送ることができる電気通信(電信)。
電信が発明される以前、送り手から受け手にメッセージを届けられない場合は、視覚的に伝えるほか方法がありませんでした。そのうち、最も普及した手段の一つが、1791年にフランスのシャップ兄弟が開発した腕木通信です。この装置は、5~10kmの間隔で建てられた塔の上に、数字や文字を伝える可動式の腕木を設置したものでした。


初の

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【技術史】フォードの量産車により衰退した電気自動車

【技術史】フォードの量産車により衰退した電気自動車

電気自動車には、振動や臭気、騒音が少ないうえ、ギアチェンジも必要としないなど、ガソリン車より優れた点が数多くあり、運用可能な範囲が限られていても問題にならない都市部で好評を得ました。
ガソリン車の利点は、スピードと走行可能距離でした。再充電ができる実用的な電池がなかったことが、電気自動車開発の大きな障害となっていました。トマス・エジソンは150km走行可能な電池を生み出しましたが、高価なうえに損傷

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