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本とのつきあい

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本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
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2024年3月の記事一覧

『天の国の種』(バーバラ・ブラウン・テイラー;平野克己・古本みさ訳;キリスト新聞社)

『天の国の種』(バーバラ・ブラウン・テイラー;平野克己・古本みさ訳;キリスト新聞社)

以前本書をメインに据えて触れたことがあるが、本の内容の紹介はしていなかった。本書に関して再読する機会があったとき、それで発覚した。以前読んでいたのに、このコーナーにまとめていなかったのだ。不覚である。遅ればせながら、ご紹介申し上げる。
 
最初に読んだときも、そのイメージ豊かなメッセージに驚愕した。それは明らかに聖書を逸脱している。だが、いま手許の私たちのいる世界での場面としては、まさにそういうこ

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『現代思想03 2024vol.52-4 特集・人生の意味の哲学』(青土社)

『現代思想03 2024vol.52-4 特集・人生の意味の哲学』(青土社)

なんとも思想らしくないタイトルである。同時に、一般の人が手に取りやすいタイトルである。「人生」を問うことが、哲学であるかのように見なされやすい日本の風土では、こうした誘いは適切であるのかもしれない。
 
だが、実のところ、この問いは、哲学の中では案外疎い分野である。問われて然るべきであるのに、あまり問題にされない。日本人だからこれを問う、というのではなく、もっと原理的に、根柢的に、この問題は扱われ

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『世界はラテン語でできている』(ラテン語さん・SBクリエイティブ)

『世界はラテン語でできている』(ラテン語さん・SBクリエイティブ)

twitter.comで見かけてフォローし、ラテン語を中心とした古代語にまつわる話を日々堪能してきた。誠実な姿勢に好感がもて、またもちろんその専門的な見識に教えられることが多かった。そうした声がひとつの本になる、というので期待した。いろいろあって即購入とは動けなかったが、セールの表示を見て、すぐに動いた。電子書籍で入手した。
 
twitter.comとは異なり、ある程度ボリュームのある記述となる

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『マンガで学ぶ動物倫理』(伊勢田哲治・なつたかマンガ・化学同人)

『マンガで学ぶ動物倫理』(伊勢田哲治・なつたかマンガ・化学同人)

マンガで同じキャラクターたちが問題に挑むストーリーと、その場面毎に、専門家の解説があるという形が繰り返されて、最後まで見せてくれる。マンガのページもまずまずあるので、読み進むのは楽である。しかし、解説のページは決して手を抜いたものではない。むしろ、マンガと相俟って、動物倫理の本質的な問題が掲げられ、しかもマンガのために非常にそれが読みやすくなっている。よい構成だと思う。
 
ストーリーというのは、

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『戦争と平和 田中美知太郎 政治・哲学論集』(田中美知太郎・中公文庫)

『戦争と平和 田中美知太郎 政治・哲学論集』(田中美知太郎・中公文庫)

京都の大学に行きたかったのは、哲学の都だと思ったからだった。そして、田中美知太郎先生への憧れがあったからでもある。プラトンを第一とする予定はなかったが、その研究には、よく分からないまでも、しびれるような感覚を覚えていた。
 
2024年になって、その田中美知太郎の本が出る、という知らせは、私を戸惑わせた。なぜ、いま田中美知太郎なのだろうか。それも、講談社学術文庫ではない。中公文庫からだ。哲学の方面

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