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こころ

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ひとのこころ、見つめてみます。自分のこころから、誰かのこころへ。こころからこころへ伝わるものがあり、こころにあるものが、その人をつくり、世界をつくる。そんな素朴な思いに胸を躍らせ…
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2021年12月の記事一覧

長男

長男

長男の出産は、とにかく初めてのことなので、一つひとつが驚きであり、冒険であった。父である私ですらそうだったので、母たる立場の妻からすれば、なおさらであったことだろう。
 
「こんにちは、赤ちゃん。私がママよ」というような言葉を、産まれた後で告げるのは、男ですよね。作詞者の永六輔さんは、ある女性に見破られたという。女性にとり、赤ちゃんは、外に出る前からずっと呼びかける対象であるから、産まれてからいま

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クリスマス・ツリーの下に

クリスマス・ツリーの下に

アメリカでは、ストッキングにサンタクロースがもってきたプレゼントを、そのツリーの下に並べ、それを25日の朝に、一斉に開封するというならわしがあるそうだ。もちろん、家族同士で贈り合うプレゼントも、同様にそのツリーの下に置いていてよいことになる。
 
その家は、貧しかった。それでも、クリスマス・ツリーを飾ることだけは怠らなかった。小さな子どもたちの夢を壊してはいけないと思っていたのと、やはりクリスマス

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手話で「クリスマス」は

手話で「クリスマス」は

手話という言語もまた、日々進化していく言語である。新しい語に対して、対応する手話が発案される。日本語を訳す上で、とりあえず指文字で表現してコミュニケーションを図るが、まとまった形の手話がやがて決められる。
 
元来、地域で自然に固まっていったはずである。従って地域により「方言」がある。しかし音声日本語も共通語へと傾いているのと同様に、手話もまた、この通信の時代の中で、ある程度共通認識がなされるよう

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『わたしは「セロ弾きのゴーシュ」』(中村哲・NHK出版)

『わたしは「セロ弾きのゴーシュ」』(中村哲・NHK出版)

サブタイトルだか、題名の一部なのか曖昧なままに、「中村哲が本当に伝えたかったこと」と記されている。2019年12月4日。その知らせは突然に届き、私たちの心の中央を貫いて穴を空けた。中村哲さんが、殺害されたのだという報道は、しばらく信じられなかった。
 
200頁余りの本書にあるのは、中村哲さんの生の声である。声ではなくてもちろん文字であるが、これはNHKの深夜番組「ラジオ深夜便」の音声が見つかった

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