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#映画感想文

システム・クラッシャー/ノラ・フィングシャイト監督作品(2019)

システム・クラッシャー/ノラ・フィングシャイト監督作品(2019)

 怒りの感情に一旦火がつくとあたり構わず暴力を振るい手を付けられられなくなる主人公の9歳の少女ペニーが映画が始まると同時大暴れします。もちろんそれは幼少の頃に受けた幼児虐待のトラウマであり、いつまで経っても引き取ってくれない最愛の母への希求の表現であり、周りの養護施設の職員たちは、何とか彼女を更生させようとするがどうにもならないというシリアスな状況な訳ですが、そんな彼女の大暴れがそのテンポの良さと

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ザ・クラッシュ 「サンディニスタ!」+ケン・ローチ「カルラの歌」

ザ・クラッシュ 「サンディニスタ!」+ケン・ローチ「カルラの歌」

「ロンドン・コーリング」に続いて発売されたクラッシュの4枚目のアルバム「サンディニスタ!」は、レコード3枚組の超大作で、ロックン・ロール、レゲエに加え、ダブ、R&B、カリプソ、ゴスペルなど音楽の幅が飛躍的に広がると共に、散漫な印象を与えてしまい収集がつかなくなったような作品という当時の評価でした。

最近、新たにこの作品が気になって、当時の社会情勢を調べながら、聞き直し、歌詞を読んでみると、その幅

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レオス・カラックス以来、「Modern Love」で走る。~フランシス・ハ /ノア・バームバック監督(2013)

レオス・カラックス以来、「Modern Love」で走る。~フランシス・ハ /ノア・バームバック監督(2013)

ノア・バームバックという名前は、以前より気になっていたのですが、ふとしたことから、彼の作品Netflix配信の「マリッジ・ストーリー」が作品賞など多くのアカデミー賞にノミネートされたと聞いて、まず彼の代表作「『イカとクジラ』(The Squid and the Whale)」を見ることに。映画のタイトルは、離婚を巡って争う男女のメタファーらしく、かつ監督の実体験はベースにあるそうですが、ニューヨー

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「ペトラ・カン・フォントの苦い涙」 ライナー・ヴェルナー・ファスピンダー  監督作品「苦い涙」フランソワ・オゾン監督作品

「ペトラ・カン・フォントの苦い涙」 ライナー・ヴェルナー・ファスピンダー 監督作品「苦い涙」フランソワ・オゾン監督作品

大好きなファスビンダーの作品「ペトラ・カン・フォントの苦い涙」は昨年、菊川のストレンジャーで観たのが初めてでしたが、この作品をオゾン監督がリメイクした「苦い涙」公開された年でした。
「ペトラ・カン・フォントの苦い涙」ライナー・ベルダー・ファスビンダー監督作品

2度の離婚に失敗し落ち込むもののビジネスでは、成功を収めているファッションデザイナー 
ペトラ・カン・フォントは自宅兼アトリエで、奴隷のよ

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王国(あるいはその家について)         草野なつか監督 2018年作品

王国(あるいはその家について) 草野なつか監督 2018年作品

英ガーディアン紙・英国映画協会〈BFI〉による年間ベスト作品に選出された日本映画ということで、気になっていた映画。
ガーディアンというのは、元々は、マンチェスターで刊行された、近年、名匠マイク・リーも映画化した「ピータールーの虐殺」と言われる民衆弾圧事件も取材した、中道左派・リベラル寄りの新聞で、音楽の情報も多く(Haward DevoteやMicheal Headの特集も読んだことがあります)、

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「Stop Making Sense」4Kリストア版@IMAXシアター

「Stop Making Sense」4Kリストア版@IMAXシアター

約40年振りに観ました。83年作ですが、僕が見たのは、85年。レイト・ショーのみの公開でした。
当時は、メンズ・ビギがプロモーションをサポートしており、店舗にも大きなポスターが貼ってありました。あの時代、肩幅を強調したジャケットが大人気でしたが、あのスーツは肩だけでなく、身頃も巨大で来日時に観た能にインスパイアされたそうです。
改めて、彼らの音楽をまとめて聴いてから観たので、その辺の話から、映画に

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古澤健監督『STALKERS』

古澤健監督『STALKERS』

Stranger 映画館で古澤健監督の「Stalkers」を観た。 支配人の岡村忠征さんが昨年のベストワンに推す映画であり、彼がStrangerの運営から1月末で離れるとの事で、そのフィナーレを飾る映画でもあるので、そこに岡村さんの想いや下心があるのではと思いながら、急遽伺う事にしました。
現地には岡村さんだけでなく、監督の古澤さんもいらっしゃり、岡村さんか「面食らうと思いますよ」と声掛けられ、こ

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「ミツバチのささやき」/ビクトル・エリセ

「ミツバチのささやき」/ビクトル・エリセ

1983年 ゴダールの「パッション」を皮切りに、ヨーロッパのアート系の映画を数多く上映し、ミニ・シアターブームを牽引したシネ・・ヴィヴァン六本木の8番目の作品として、上映された映画。調べてみると当時、この映画は単館シネヴィヴァンでの公開時だけで、5万人弱の人が見たそうです。もうすぐエリセの31年ぶりの新作「瞳をとじて」が公開されるので、40年ぶりにこの映画を見てみます。
大きなカップを小さな手で持

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「枯れ葉」 アキ・カウリスマキ@ストレンジャー映画館

「枯れ葉」 アキ・カウリスマキ@ストレンジャー映画館

フィンランドの名匠アキ・カウリスマキ。2017年の突然の引退宣言から、復活した最新作。
シンプルなストーリーですが、賞味期限切れのパンを持ち換えろうとしてスーパーのパートを首になった女性とアル中で金属工場を首になった男性のラブ・ストーリー。労働者を描いた「プロレタリアート三部作」の延長線上にある作品と言えます。
カウリスマキ独特の役者は無表情、セリフは棒読みが何とも言えぬ情感を醸し出す、正に“沁み

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アナザー・ラウンド/トマス・ビンターベア監督作品 レビュー@note

アナザー・ラウンド/トマス・ビンターベア監督作品 レビュー@note

最近、たて続けに見たデンマーク人監督トマス・ビンターベアの作品。
なぜこの監督に興味を持ったかと言うと僕の大好きなラース・フォン・トリアーらと共に、「純潔の誓い」と呼ばれる、映画を製作する上で10個の重要なルールを決めるという デンマークにおける映画運動【ドグマ95】を立ち上げた人だから。
 本作は、仕事でも家庭でも倦怠感、無力感の”中年の危機“に直面した4人の男性高校教師が『「人間は血中アルコー

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「Perfect Days」ヴィム・ヴェンダース監督作品

「Perfect Days」ヴィム・ヴェンダース監督作品

東京国際映画祭の先行上映時は、旅行中で
行けませんでしたが、やっと観る事が出来ました。(以下ネタバレ注意ですが、その話の筋というより、日常の何気ない風景や仕草 そして徐々に変わる感情の変化の描き方が素晴らしいです)
 カンヌで主演男優賞を受賞した役所広司さんが初めの1時間?近くは全くセリフはなく、古アパートに住み、朝早く起きてからのルーティン、そしてトイレ掃除の仕事、早く仕事が終わり、銭湯に入り、

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