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ザ・スミスのモリッシーが教えてくれたマンチェスターの「蜜の味(Taste of Honey )」/トニー・リチャードソン(1963)

ザ・スミスのモリッシーが教えてくれたマンチェスターの「蜜の味(Taste of Honey )」/トニー・リチャードソン(1963)

イギリスの作家シェラ・デラニーが18歳の時に書いた戯曲「蜜の味」の映画化。
「蜜の味」という言葉を知ったのビートルズのデビューアルバム「プリーズ・プリーズ・ミー」ですが、「長距離ランナーの孤独」などの監督として、イギリス ニュー・ウエーブ映画の中心人物でだったそうで、彼の初監督作「怒りを込めて振り返れ」(look Back In Anger)というタイトルもデビット・ボウイの曲で知りました。(ちな

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まぼろし/フランソワ・オゾン(2002)

まぼろし/フランソワ・オゾン(2002)

「スイミング・プール」や「ぼくを葬る」は、予告編を映画館で観たことがありましたが、ファスビンダーのリメイクということで、観た「苦い涙」が初めてのオゾン体験でした。そこで感じたことは、そのショットや話のつなぎ方に多くの映画を観てきた人だけが、表現できる映画的世界とそれを実現できる確かな技術を感じたともに、色や造形物そして登場人物を対比で描くようなコンセプチュアルなシナリオにも魅力を感じました。
フラ

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ホン・サンス特集 at Stranger映画館

ホン・サンス特集 at Stranger映画館

第74回ベルリン国際映画祭で5度目となる銀熊賞(審査員対象)獲得したホン・サンス監督の日本での最新作「WALK UP」に合わせて、ソフト化されていない5作が公開。今日は、「WALK UP」(2022),「映画館の恋」(2005)「草の葉」(2018)「リスト」(2011、短編)を連続して見てきました。その中で、特に印象に残ったのは、「WALK UP」、「草の葉」でした。
「WALK UP」(202

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Scrapperスクラッパー/シャーロット・リーガン監督(2023)

Scrapperスクラッパー/シャーロット・リーガン監督(2023)

 ミュージックビデオの製作からキャリアをスタートし、BBCからそろそろ長編を撮ってみないかと提案されたというイギリス出身のシャーロット・リーガン監督の一作目。
はじめての作品では、ワーキングクラスを描きたかったという事ですが、ケン・ローチやショーン・メドウス(「This is England」)のような貧しい労働者階級の悲惨さ、出口のなさを描くイギリスの映画特有の曇った空と煤のついたようなグレーの

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全然、日本で公開されないので、イギリスから取り寄せてケン・ローチの「The Old Oak」を観た。

全然、日本で公開されないので、イギリスから取り寄せてケン・ローチの「The Old Oak」を観た。

2023年のカンヌ・フィルム・フェスティバルがワールド・プレミアとなった当時87歳のケン・ローチの最終作となるである最新作「The Old Oak」。
昨年、秋には世界的に公開されましたが、日本では 未だにいつ公開されるかわからないので、イギリスからブルーレイを取り寄せました。
BBCでのディレクターとして、社会主義的な視点で、イギリスの下層階級をリアルに描いてきたケン・ローチ。1990年代に入る

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シャンタル・アケルマン映画祭 2024

シャンタル・アケルマン映画祭 2024

英国映画協会が世界各国の研究者・批評家からの回答をもとに10年ごとに集計している「オールタイムベスト100選」で、2022年末に『ジャンヌ・ディエルマン』が第1位に選出されてから日本でも注目されているシャンタル・アケルマン映画祭という事で、東京日仏学院に行って来ました。一昨年から数えるとアルケマンの映画祭は3回目でかれこれ13作品を観ましたが、今日はドキュメンタリー三部作である「東から」「南」「向

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サムライ/ジャン=ポール・メルヴィル監督作品(1976)

サムライ/ジャン=ポール・メルヴィル監督作品(1976)

フィルム・ノワール初心者なので、やっぱりジャン=ポール・メルヴィルからと思い、まずはアラン・ドロン主演の「サムライ」から観る事にしました。
「私の夢は、カラー作品で白黒映画を撮る事なんだ」とメルヴィルは語ったそうですが、
ブルーがかった鈍いグレーの色彩は美しく、カメラ追う物や出演者の仕草だけでなく、カメラのフレームが捉えた構図に写り込む細部まで計算し尽くされている事に魅入ってしまいました。
もちろ

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「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」

「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」

クラウド・ファンデイング発表以来、心待ちにしていた映画がやっと公開になりました。
 Roxy Musicのオープニング・アクトとして起用されたサディスティック・ミカ・バンド。英有力音楽誌に取りあげられたり、BBCの音楽番組「Old Grey Whistle Test」にも出演し、現地で大きな話題となったという彼らのイギリスでのパフォーマンス。
スタッフによるカセット録音「Live In Londo

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One Love / Bob Marley

One Love / Bob Marley

彼の初来日を観れなかった後悔は今でも続きますが、近所のシネコンで上映していたので朝9時から行って来ました。
席に座ると予告編が流れており、ビルは崩れ、車は衝突、目の前を飛行機は通り過ぎ、衝突の都度,竜巻でも起こるのかというほど大きな音がなり、これも映画かと朝からちょっと疲れましたが、今日は音楽映画なので、音響が良い方が良いと気を取り直して。
はじめに息子さんのジギー(長男)が挨拶に出て来ます。

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システム・クラッシャー/ノラ・フィングシャイト監督作品(2019)

システム・クラッシャー/ノラ・フィングシャイト監督作品(2019)

 怒りの感情に一旦火がつくとあたり構わず暴力を振るい手を付けられられなくなる主人公の9歳の少女ペニーが映画が始まると同時大暴れします。もちろんそれは幼少の頃に受けた幼児虐待のトラウマであり、いつまで経っても引き取ってくれない最愛の母への希求の表現であり、周りの養護施設の職員たちは、何とか彼女を更生させようとするがどうにもならないというシリアスな状況な訳ですが、そんな彼女の大暴れがそのテンポの良さと

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フーリガン(Hoologans Stand Your Ground)/レクシー・アレキサンダー(Lexi Alexander)(2005)

フーリガン(Hoologans Stand Your Ground)/レクシー・アレキサンダー(Lexi Alexander)(2005)

ロンドンを舞台にフットボール(サッカーではない)の熱狂的で時には暴徒と化すファン フーリガンを描いた映画。
と言っても、イギリスのローワー・クラスのドキュメンタリーからキャリアをスタートして、ケン・ローチや「This is England」で自らが属した集団、スキンヘッズを描いたショーン・メドウスのように、話す言葉も態度もそして身なりも徹底して、そして自然にローワー・クラスのリアリティが出ていると

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夜空に星のあるように(Poor Cow)/ケン・ローチ(Ken Loach)(1967)

夜空に星のあるように(Poor Cow)/ケン・ローチ(Ken Loach)(1967)

オックスフォード大学卒業後、BBCで演出家として、社会問題を扱い注目された彼の映画監督デビュー作。この映画が公開されたのは、1967年 つまりピーコック革命のカラフルで華やかかりしスウィギング・ロンドン真っただ中の時期。
ロンドン南西部と中心部に近い地域フラム(フルハム)で撮影されたこの映画に写るファッションはアメリカ的なテイストやビビットな色目はあるもの概して締めで、当時の庶民のファッションと言

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エリックを探して(Looking For Eric)/ケン・ローチ(Ken Loach)(2009)

エリックを探して(Looking For Eric)/ケン・ローチ(Ken Loach)(2009)

サッカー界のレジェンドの一人、エリック・カントナが直接、ケン・ローチに持ち込んだ企画からこの映画が始まったとか。
エリック・カントナと言えば、フランス出身で若くして頭角を表すも、その”悪童“ぶりから、フランスでは居場所を無くし、イギリスのプレミア・リーグで流れてきて、その後、サーの称号をもらうことになるアレックス・ファーガソンの元マンチャスター・ユナイテッドの黄金時代を築くとともに、外国人に関わら

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ハズバンズ(Husbands)/ジョン・カサヴェテス(John Cassavetes)1970

ハズバンズ(Husbands)/ジョン・カサヴェテス(John Cassavetes)1970

 昨年、日本で現在見ることのできるカサヴェテスの作品を見なおした後に、イメージ・フォーラムで「ジョン・カサヴェテス レトロスペクティブ リプリーズ」が開催されましたが、一つの会社が版権のある作品だけを集めたためか、残念ながらすべて観たことがあり映画がでしたが、

それから、少し経ってからStranger映画館でThe Other Side of John Cassavetes『カサヴェテス特集』は

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