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ホン・サンス特集 at Stranger映画館


第74回ベルリン国際映画祭で5度目となる銀熊賞(審査員対象)獲得したホン・サンス監督の日本での最新作「WALK UP」に合わせて、ソフト化されていない5作が公開。今日は、「WALK UP」(2022),「映画館の恋」(2005)「草の葉」(2018)「リスト」(2011、短編)を連続して見てきました。その中で、特に印象に残ったのは、「WALK UP」、「草の葉」でした。
「WALK UP」(2022)
最近のホン・サンス作品は、昔よりミニマルで洗練されてきていると思いますが、モノクロの質感が新しさとエバー・グリーンさを醸し出しており、今後もどんどん研ぎすまされていくのではないかという予感もします。
今回も多くのシーンは、飲食中の会話で描かれる登場人物たちのかみ合わなさ、ぎこちなさ、居心地の悪さですが、食事も韓国料理ではなく、西欧料理のようだし、何かのサインとして使われるとも多い乾杯のシーンもマッコリ用の小さな金の洗面器のような器ではなく、ワイングラスで洗練されていますが、相変わらずグダグダだたっり、急に興奮したリ、怒ったり、泣いたりとホン・サンスらしいし、人を批判したリ、言いすぎたり、だんだん登場人物の“本性”が表れてきます。
今回は、4階建ての建物(エレベーターがない建物をアメリカではWALK UPと呼ぶらしい)が舞台で、いつもどうしようもない映画監督が、各階それぞれで、それぞれの女性を相手に情けなさ全開に描かれます。ストーリーが進むとも、”ああそうだったのか“と分かる場面もあれば、違うストーリーに展開してしまっていたり、実は違う展開もあったのかなど、すべては必然なのかそれとも偶然なのか、よくわからず、ストーリーも登場人物も映画を観る我々も漂っていきます。


「草の葉」(2018)
路地裏の喫茶店で何組かの男女がそれぞれ会話をするわけですが、共通の知り合いの女性の自殺の責任は”あなたのせいよ“と罵倒したリ、生活に困ったベテラン俳優が後輩の女優に住居の借りることを頼んだり、初対面の女性脚本家に10日間、共同生活をしてシナリオを書かないかと持ち掛けるベテラン脚本家など、どの話も唐突で重い話ばかり。そうこうするうちにクラシックが流れる品の良いお店なのに、ご主人が認めてくれたということで、お酒を持ち込み、いつものグダグダの飲み会が展開されます。ただここで違うのは、キム・ミニ扮する女性が、隣の席にパソコンとともに座り、グダグダな話を盗み聞きしていることです。つまり、我々観客もずっと盗み聴きしているのだと気付かせてくれます。そう、我々もホン・サンスの映画の参加者として、自らのストーリー作っても良いと彼は言っているのかもしれません。


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