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まぼろし/フランソワ・オゾン(2002)


「スイミング・プール」や「ぼくを葬る」は、予告編を映画館で観たことがありましたが、ファスビンダーのリメイクということで、観た「苦い涙」が初めてのオゾン体験でした。そこで感じたことは、そのショットや話のつなぎ方に多くの映画を観てきた人だけが、表現できる映画的世界とそれを実現できる確かな技術を感じたともに、色や造形物そして登場人物を対比で描くようなコンセプチュアルなシナリオにも魅力を感じました。
フランソワ・オゾンをじっくり観ようと思い立ち、まず選んだのが、「地獄に落ちた勇者ども」や「愛の嵐」以来、僕のミューズの一人、シャーロット・ランプリング主演のこの映画。
25年連れ添った中年の夫婦が、別荘に行き、その海岸で夫はいなくなります。自殺なのか、失踪なのか、溺死なのか。長年連れ添った夫が突然姿を消したことにより、沸き起こる妻の喪失感、混乱、夫に対する疑念、夫の病気というものが、現実と幻想を交錯させながら、オゾン監督のあこがれでもあった女優シャーロット・ランプリングの表情、しわ、所作を通して描いていきます。そして、フランス人の中にいるイギリス人としての彼女、彼女の色としての赤。姑の息子でもある夫との取り合い、生死の境として描かれる波打ち際、ヴァージニア・ウルフのモチーフ。原題は「砂の下」だそうですが、彼の幾重にも重なった仕掛けやメタファーは改めて観ることでまた気付くかもしれません。

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