たこやまたこた
メモに残した夢を集めてみました。
遊び半分に写真俳句のコンテストに応募したところ、最優秀賞をいただてしまった。 調子に乗ってその後、 写真俳句 を書き溜め、「写句鳥虫」(しゃくとりむし) と題して一冊にまとめてみた。 その中の作品を中心に、少しずつアップして行こうと思う。
採用にならなかったり、世に出す機会がなかったり、まだ発展途上だったりして、未発表のまま埋もれている作品たち…
紙切れにいたずら書きした4コマ漫画もどきを拾い集めてみました。
自作の下手くそ8コマ漫画です。
古民家というほどノスタルジックではないが、昭和っぽい木造の二階家だ。 庭は無く、道路からちょっと奥まった所に、引き戸の玄関がある。 玄関の前を通る時に、スキンヘ…
近所の用水路には、よくサギが出没する。 アオサギ、ゴイサギ、チュウサギも、たまに見かけるが、よく見るのはコサギだ。 優雅な白い曲線が、くいっくいっというコマ飛びの…
インドア派というのか、引きこもりというのか、自然の光を見ることはあまりなかった。 ところが、今年の夏は違っていた。 日を浴び、風にさらされることが多くなった。 き…
徳大寺君は、物を失くす癖がある。 しょっちゅう、あれが無い、これが無いと、探し回っていた記憶しかない。 5年ぶりで会っても、あまり変わりは無かった。 徳大寺君とは…
朝鮮人参のような、大きな根っこのお化けを担いだ面々が、静かに練り歩いている。 根っこのお化けは作り物のようだが、形や色はまちまちだ。 担ぎ手は皆、漆黒の長衣を頭か…
鳩が来る。 マンションの最上階、5階の廊下だ。 僕は5階の角部屋に住んでいる。 エレベーターから一番遠い奥だ。 玄関の前の手すりに鳩が一羽、いつも、ちょこなんと止ま…
昼下がりの街はゴーストタウンだった。 住宅街とはいえ、道行く人には誰ひとり逢わない。 緑の無いことに気が付く。 建物は昭和か、ひょっとしたら、もっと昔からあるよう…
祖父母の家だった。 キジトラの愛猫、小百合と遊んでいたはずだった。 眠ってしまったのか、失神したのか、それとも幽体離脱でもしたのだろうか。 空白と闇があって、気が…
中折れ帽とダブルスーツで決めた小柄なおじさんだ。 白黒のフレンチブルを連れているが、リードは付けていない。 犬も人も小さいのに、どちらも偉そうだ。 「そこの君、力…
「毛野原村には、佐久間が多いんです。 人口は確か30人くらいだったかな…そのうち10人に9人は佐久間ですよ」 佐久間君が言った。 フレイムマンというアマチュアのダ…
小学生の僕の、数少ない散財は、プラモデルを買うことだった。 わずかな小遣いから、十円とか百円単位の積立金を捻出し、月に一回くらいの割りで、五百円以下のプラモデル…
父が失踪した。 置手紙があった。 手紙など書く人ではない。 家族には時々LINEで、ひとことふたこと言ってくるくらいだ。 よっぽどのことなのだろう。 読んでみると確かに…
季節の無い町に住んでいる。 といってもまだ、住んで一週間に満たない。 お世話になり過ぎて頭が上がらない知人の、たっての願いを断れずに、急遽住むことになった。 その…
どういうわけか僕はセミにモテる。 背が高くて、ぼうっとしていて、ウドの大木みたいだからだろうか。 よくセミに止まられたりするし、オスが止まると、そのまま鳴き出すこ…
セミの抜け殻親子…ではない。 多分、上はニイニイゼミ、下はアブラゼミ。 僕は一切手を加えたりしていないが、もしかしたら、どこかのいたずら者の仕業かもしれない。
聖実(せいみ)さんと知り合ったのは、一週間ほど前だ。 会うのは3回目だが、もう別れたいという。 厳密に言えば、「別れたい」ではなくて「別れなければならない」なのだ…
2024年10月1日 07:56
古民家というほどノスタルジックではないが、昭和っぽい木造の二階家だ。庭は無く、道路からちょっと奥まった所に、引き戸の玄関がある。玄関の前を通る時に、スキンヘッドの男をよく見かける。大駱駝艦みたいな、舞踏集団でも住んでいるのだろうか。スキンヘッドの男が入っていくのを見ることはしょっちゅうなのだが、しかし、出てくるところを見たことは一度も無い。スキンヘッドを吸い込む、スキンヘッドホイホイ
2024年9月27日 08:14
近所の用水路には、よくサギが出没する。アオサギ、ゴイサギ、チュウサギも、たまに見かけるが、よく見るのはコサギだ。優雅な白い曲線が、くいっくいっというコマ飛びの動きで、ザリガニを取っていたりする。見事なその様が、美しくて面白いので、立ち止まって眺めていることもしばしばだ。見る時は、静かに、できるだけ動かずに、じっと見守らなければならない。サギは目がよい上に、警戒心も強いので、かなり離れてい
2024年9月24日 08:22
インドア派というのか、引きこもりというのか、自然の光を見ることはあまりなかった。ところが、今年の夏は違っていた。日を浴び、風にさらされることが多くなった。きょうも外に出た。公園脇の道は樹木が多く、人通りが少ないので、日盛りでも涼しい。時折、木漏れ日に弄ばれながら、ゆっくりと進んで行く。公園脇から用水路沿いの道に入り、少し行くと駅前通りに出る。急に人が多くなる。今の時間だと、行
2024年9月21日 07:46
徳大寺君は、物を失くす癖がある。しょっちゅう、あれが無い、これが無いと、探し回っていた記憶しかない。5年ぶりで会っても、あまり変わりは無かった。徳大寺君とは、武田理沙さんのライブで知り合った。たまたま席が隣り合って、なんとなく話しているうちに、親しくなってしまったのだ。徳大寺君は当時、某国立大学工学部の大学院で、何やら小難しい研究をしているらしかった。音楽の好みが重ならなければ、ほか
2024年9月18日 08:07
朝鮮人参のような、大きな根っこのお化けを担いだ面々が、静かに練り歩いている。根っこのお化けは作り物のようだが、形や色はまちまちだ。担ぎ手は皆、漆黒の長衣を頭からまとっている。黒い闇が体型をぼかしているのではっきりしないが、老若男女が入り乱れているように見える。人神様(にんじんさま)の例祭だ。根之坪神社の祭神が人神様だ。本堂の奥に祀られていて、そのお姿は、複雑に縺れ絡まった巨大な根っ
2024年9月15日 07:45
鳩が来る。マンションの最上階、5階の廊下だ。僕は5階の角部屋に住んでいる。エレベーターから一番遠い奥だ。玄関の前の手すりに鳩が一羽、いつも、ちょこなんと止まっているのだ。人を襲ったり、物を壊したり、大声で騒いだりするわけではない。フンを垂れ流すのが、ちょっと迷惑なくらいだ。そもそも僕は、鳩や鳥が嫌いではない。面倒臭いけれども、気が付いたら掃除しておけば済むことだろう。…と軽
2024年9月12日 08:10
昼下がりの街はゴーストタウンだった。住宅街とはいえ、道行く人には誰ひとり逢わない。緑の無いことに気が付く。建物は昭和か、ひょっとしたら、もっと昔からあるようなものまであるのだが、人の息吹や歴史を感じさせない。無機的で、妙に作り物めいている。歩けば歩くほど、暗い方へ暗い方へと妄想に引きずられる。心が崩れそうになった時、向こうから水色の人影がやって来た。ブルカだろうか。水色が全身を
2024年9月9日 07:53
祖父母の家だった。キジトラの愛猫、小百合と遊んでいたはずだった。眠ってしまったのか、失神したのか、それとも幽体離脱でもしたのだろうか。空白と闇があって、気が付いたら、孫の手になっていた。孫の手になっても、喋ったり動いたりできるなら、別に構わないのだが、そのどちらもできない。不便で仕方がない。僕はただ、置かれた場所に転がっているしかない。ばあちゃんが僕をつかむ。背中を掻く。ちょ
2024年9月6日 08:04
中折れ帽とダブルスーツで決めた小柄なおじさんだ。白黒のフレンチブルを連れているが、リードは付けていない。犬も人も小さいのに、どちらも偉そうだ。「そこの君、力を貸してくれんかね」突然声を掛けて来る。こんなおじさんに声を変えられる筋合いは無かったが、周りには僕以外に誰もいなかった。やはり僕を呼んだのだろう。「僕にご用でしょうか?」「ご用というよりお願い…いや、お誘いなんだけどね
2024年9月3日 07:45
「毛野原村には、佐久間が多いんです。人口は確か30人くらいだったかな…そのうち10人に9人は佐久間ですよ」佐久間君が言った。フレイムマンというアマチュアのダンスユニットのメンバーで、髪をオレンジ色に染めているから、どこにいても目立つ。毛野原村に来ていた。牛泉洞を観るためだ。洞窟が大好きで、折あるたびに全国の洞窟を尋ね歩いているのだが、中でも特に好きなのが、牛泉洞だった。日本三大鍾
2024年8月30日 07:43
小学生の僕の、数少ない散財は、プラモデルを買うことだった。わずかな小遣いから、十円とか百円単位の積立金を捻出し、月に一回くらいの割りで、五百円以下のプラモデルを買う。行きつけの小さなプラモデル屋は、本屋と文具屋も兼ねていて、品揃えこそ乏しかったが、プラモデルはすべて二割引だった。おかげで僕は、割引の計算だけは早々に、暗算で出来るようになったものだった。ジャンルで言えば、飛行機、船、車な
2024年8月27日 08:03
父が失踪した。置手紙があった。手紙など書く人ではない。家族には時々LINEで、ひとことふたこと言ってくるくらいだ。よっぽどのことなのだろう。読んでみると確かに、よっぽどのことだった。「私儀、この度一身上の都合により、本日をもって、父親を自粛させていただきます。」一身上の都合だから、理由は書いてなかったが、それと思われる事実は、すぐに判明した。会社の既婚の部下と不倫関係に陥り、に
2024年8月24日 08:07
季節の無い町に住んでいる。といってもまだ、住んで一週間に満たない。お世話になり過ぎて頭が上がらない知人の、たっての願いを断れずに、急遽住むことになった。その人の住んでいた賃貸マンションだ。季節が無いというのは、春も夏も秋も冬も無いということではない。1年を通して四季以外だということでもない。今日が夏のようだったとすれば、明日は冬のようで、陽気が一定しない。毎日ころころと、気候が変わ
2024年8月21日 10:55
どういうわけか僕はセミにモテる。背が高くて、ぼうっとしていて、ウドの大木みたいだからだろうか。よくセミに止まられたりするし、オスが止まると、そのまま鳴き出すこともある。口吻をちくりと突き刺されることさえあった。
2024年8月21日 10:46
セミの抜け殻親子…ではない。多分、上はニイニイゼミ、下はアブラゼミ。僕は一切手を加えたりしていないが、もしかしたら、どこかのいたずら者の仕業かもしれない。
2024年8月19日 07:57
聖実(せいみ)さんと知り合ったのは、一週間ほど前だ。会うのは3回目だが、もう別れたいという。厳密に言えば、「別れたい」ではなくて「別れなければならない」なのだが、どちらにしたって早すぎる。本当のお付き合いは、これからだというのに。「素数ゼミって知ってる?」彼女は意外に昆虫に詳しいのだ。昆虫少女だったらしい。「13年とか17年とかで成虫になって、大量発生するやつだよね。13と1