たこやまたこた
メモに残した夢を集めてみました。
遊び半分に写真俳句のコンテストに応募したところ、最優秀賞をいただてしまった。 調子に乗ってその後、 写真俳句 を書き溜め、「写句鳥虫」(しゃくとりむし) と題して一冊にまとめてみた。 その中の作品を中心に、少しずつアップして行こうと思う。
採用にならなかったり、世に出す機会がなかったり、まだ発展途上だったりして、未発表のまま埋もれている作品たち…
紙切れにいたずら書きした4コマ漫画もどきを拾い集めてみました。
自作の下手くそ8コマ漫画です。
今更ですが、「たこやまたこた」というハンドルネームのもとになった「たこやま たこたくん」という作品を転載します。絵本の仕事を始めて間もないころ、月刊絵本として世に出ました。雑誌扱いなので1回限りの発行となります。自分でも最も好きな作品の一つなので、できれば市販本にしてもらえないものかと願ってやまないのですが、いまだ実現していません… 1999年フレーベル館発行ころころえほん9月号
季節の無い町に住んでいる。 といってもまだ、住んで一週間に満たない。 お世話になり過ぎて頭が上がらない知人の、たっての願いを断れずに、急遽住むことになった。 その人の住んでいた賃貸マンションだ。 季節が無いというのは、春も夏も秋も冬も無いということではない。 1年を通して四季以外だということでもない。 今日が夏のようだったとすれば、明日は冬のようで、陽気が一定しない。 毎日ころころと、気候が変わるということなのだ。 引っ越してきた日は夏だった。 朝10時を過ぎると、気温は
どういうわけか僕はセミにモテる。 背が高くて、ぼうっとしていて、ウドの大木みたいだからだろうか。 よくセミに止まられたりするし、オスが止まると、そのまま鳴き出すこともある。 口吻をちくりと突き刺されることさえあった。
セミの抜け殻親子…ではない。 多分、上はニイニイゼミ、下はアブラゼミ。 僕は一切手を加えたりしていないが、もしかしたら、どこかのいたずら者の仕業かもしれない。
聖実(せいみ)さんと知り合ったのは、一週間ほど前だ。 会うのは3回目だが、もう別れたいという。 厳密に言えば、「別れたい」ではなくて「別れなければならない」なのだが、どちらにしたって早すぎる。 本当のお付き合いは、これからだというのに。 「素数ゼミって知ってる?」 彼女は意外に昆虫に詳しいのだ。 昆虫少女だったらしい。 「13年とか17年とかで成虫になって、大量発生するやつだよね。 13と17は素数だけど、日本のセミも確か、素数の7年で羽化するんじゃなかったっけ?」
猿回しがやって来た。 駅前広場の一角だ。 「スカイモンキーショー」と看板が出ている。 猿は空君というらしい。 空君のパートナーは若い女性で、空君とお揃いの青い法被を着ていた。 法被には、空という字が白抜きされている。 パートナーとのやり取りを中心に、竹馬や玉乗りなど、よくあるパフォーマンスが中心だが、バク転やジャンプなど、空中技が得意のようだ 人垣ができていたので、細かいところまでは見えなかった。 その翌日、始発電車に乗るために、午前5時前に最寄り駅に着く。 ほの明るく
駅前スーパーのトイレが、神様に占拠された。 地下1階の男子トイレの、二つある個室の一つだ。 神様を見た者はしかし、誰もいない。 個室はロックされているのだが、誰か入っている気配は無い。 ドア下の隙間から覗いても、誰かいるようには思えない。 上から覗けばはっきりするだろうけど、そんなことをする勇気のある者もいない。 バチが当たるからだ。 そう、いつしかその個室には、神様が有らせられることになっていたのだ。 そして、ドアを2回ノックし、合掌して祈ると、必ず願い事が叶うという噂が
頭のてっぺんに何か生えてきた。 ロゼット状の多肉っぽい奴だ。 パイナップルみたいで、なかなかカッコいいから、放っておいた。 そのうち花茎が生えて来て、ぐんぐん伸びる。 さすがに心配になって、植物に詳しい友人に相談した。 「これ、リュウゼツランじゃないかな? ちっちゃいけど、形から見たら間違いないよ」 「これから大きくなるのかな? 今でさえ結構大変なのに、でっかくなったら、俺、持たないよ。 まあ、大きさにもよるけど…」 「矮小化された新種かもしれないから、大きくなるとい
曲がりくねった坂道をジェットコースターのように、乱気流に捕まった飛行機のように、荒波に弄ばれる小舟のように、ゆらゆらがたがた疾走していた。 道は狭く、登ったり下ったりで、かなりのスピードが出ていた。 ノーズの運転は、うまいのか下手なのかよくわからないが、乗り物には特別弱いわけでもない僕でも、すっかり気持ち悪くなって、吐きそうになっていた。 中3の途中まで、伊豆の町で過ごした。 それから3年。 僕は遠い都市の高3だった。 久々に故郷に帰って、当時の親友に会うところだ。 ノー
サルスベリの紅い花が満開だ。 「本当に滑っちゃうような、お間抜けな猿なんているのかな?」 幸太郎君が言う。 「やってみれば?」 新次郎君が口を挟む。 「俺は猿かよ?」 「…みたいなもんじゃないか?」 「まあ、そうかもな。 まだ進化途上、猿の段階で、伸びしろしかないからな。 よし、やってみよう」 幸太郎君は、跳び付くようにサルスベリの幹に抱き付き、するすると登って行く。 お見事だ。 結構上の方まで行くと、そのまますぐ、するすると降りて来て、身長の高さくらいのとこ
蒟蒻を植えてみたという。 平成公園の一角を勝手に菜園にして楽しんでいるおじさんが、何も訊いていないのに、にこにこ顔で教えてくれた。 サトイモ科系の濃紫色の花だ。 水芭蕉みたいに、仏炎苞に包まれた中に花が咲いている。 面白い花だなと思って、近くを通るたびに見ていたが、いつしか花は消え、残った葉や茎も、そのうち無くなってしまった。 その蒟蒻のあった一画を歩いていると、 「すみませ~ん、ちょっとお話なんかしていいですか?」 ふにゃふにゃした女性の声で話しかけられた。 見ると、
マンションのエントランスで、羽毛田さんに呼び止められる。 「たこやまさん、すみません。 わたし、今月いっぱいで辞めることになりました」 羽毛田さんは、このマンションの管理人だ。 これまでの管理人とは違って、問題になるようなことは何一つなかったから、本人の個人的な事情なのだろう。 ちょっと残念な気はしたが、あまり詮索はしないことにして、素直に形式的なお礼を返す。 「そうですか、残念です。 短い間でしたが、お世話になりました。 ありがとうございます」 その数日後、やはりエ
高さは400~500メートルだろうか。 100階建てのマンションだ。 細くて高いビルを鉛筆ビルと称したりするが、このサンタワー元住吉は鉛筆そのものだ。 20平米以下のワンルームマンションが、1階の玄関フロアーの上に99個積み上がった造りなのだ。 上河内先輩の部屋は、この最上階にある。 以前勤めていた会社の先輩だが、ちょっとした企画仕事を頼みたいとのことだった。 部屋は六角形。 六つの壁の一つにドアがあり、ドアを開くとすぐエレベーター。 もう一つのドアは、3点式ユニットバ
グレープフルーツは柑橘類なのに、なぜグレープなのか。 やはり気になっていた。 味が葡萄っぽいからだろうと、勝手に思い込んでいたのだが、意外な事実を知った。 あの大きな実が、房のように集まって生るのだ。 たわわに生っている写真を見て、びっくりしてしまった。 その時、ふと思った。 世の中にある他の多くの果物も、日頃は単品でしか見ていないからわからないものの、実はグレープフルーツみたいに、房状に生っていたりするのではないかと。 例えばスイカ。 蔓に生って、地面をごろごろしているの
第一夜「モルセットたまがわ」という新築マンションが夢の中に出て来た。内覧会の席と思われるのだが、周りはなんだか鼻持ちならない連中ばかりだ。もしかしたら実在するのかもと思って、試しに検索してみたら、マンションは無かったのだが、こんな接着剤が…「モルタル補修材 クリートボンド樹脂モルセット」 第二夜ライブに行くとよく出くわす知人と、崖沿いの道を歩いている。「いざという時のために鍛えてるんだ」と言って、知人は崖の上り下りを繰り返してみせる。道の途中で太極拳の練習していた若い女性が
同じマンションの下の階に、ちょっと風変わりな女性が引っ越してきた。 いつもゴスロリ風のファッション。 年齢不詳。 目立つことは目立つのだが、とんがった感じではない。 動作はゆっくりしていて、なんだかふわふわしている。 風船みたいなのだ。 賃貸ではなく、オーナーらしい。 表札には、勅使河原真実衣(てしがわらまみい)とあった。 勅使河原真実衣さんと初めて言葉を交わしたのは、彼女が引っ越してきてから一カ月以上経った頃だった。 たまたまエレベーターで乗り合わせた時に、唐突に尋ねられ