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CHROの評価指標~信頼できる柱が欲しい経営者のための『プロパーCHRO』の育て方 Vol.1~

こんにちは。株式会社シンシア・ハート代表の堀内猛志(takenoko1220)です。
このシリーズでは、「信頼できる柱が欲しい経営者のための『プロパーCHRO』の育て方」について、50名から4000名まで成長した企業で、各ステージの人事組織戦略の遂行に人事役員として奔走した自身の経験をもとに、人事トップになるために実行したことや、意識していたマインド、経営や現場とのコミュニケーションのtipsなどをお伝えしていきます。

私の経歴詳細は以下からご確認ください。


CHROと人事部長の違いとは?

このテーマはよく議論になると思います。回答はシンプルに以下だと考えます。

CHRO:経営に資する取り組みを行う
人事部長:事業に資する取り組みを行う

人事部門の目標は「企業の業績を向上させること」です。これは人事に限らず、バックオフィスやミドルオフィスの部門が間違えてはいけないところです。自社の社員がお客様になる部門は、ついつい目線が中に向きがちです。ゆえに、「人事のための人事業務」を行ってしまいます。

人事のための人事業務とは、目的を見失った行動であり、具体的には以下のようなイメージです。

・「入社後に活躍するか」よりも「目先の採用目標達成」を追ってしまう
・現状の組織課題を考えずに、毎年定例的に行われている研修をそのまま実行してしまう
・「現場が運用可能か」を考えずに社会要請に沿って組織能力に合わない制度を作ってしまう

耳が痛いという人もいると思います。人事機能や自分の目標だけを見ている人が陥ることです。人事部門にいる一般メンバーがこうなるのは致し方ないことです。だからこそ、人事の責任者は常にメンバーに向けて自分たちの存在価値を伝え、メンバーの目線を上げ続ける言動をしなければなりません。

そして、自分自身も何に対して責任を持っているからこそ役職を与えられているのかを考える必要があります。それが、人事責任者がCHROなのか、人事部長なのかで視座が変わるだけのイメージです。

これは人事責任者のみならず、他の役員、特に経営者が持つべき視点でもあります。人事責任者、特にCHROの直接のレポートはCEOであることが多いと思いますが、CEOがこの視点を間違えていると、CHROの肩書だけを持った人事部長ができ上がってしまいます。

CEOは常に視座を確認しなくてはいけません。

toCHRO:企業価値の向上に資するミッションを持ち成果を残したか?
to人事部長:事業の業績向上に資するミッションを持ち成果を残したか?

特に部長や役員評価はザルで定性的、抽象的になっている企業が多く見られます。水は上から流れます。役員の評価が適当ならば、メンバーの評価も適当になってしまうことを覚えておいてください。

CHROの評価はどうすべきか?

人事に限らず、ミドルオフィス職種、バックオフィス職種はどこでも取り入れて欲しい評価があります。それは、現場責任者からの評価を入れることです。

人事を含めたミドルオフィス、財務経理などのバックオフィスのお客様は誰かと問われると、事業を行っている現場メンバーです。そうであれば、お客様からの評価をいただくのは当然です。つまり、「いかにお客様に貢献したのか」を問えばいいのです。

人事部門なら、採用、配置、人材開発、組織開発、文化浸透、制度、給与労務、などの機能があり、それぞれのメンバーが目標を持っているはずです。その評価を人事部門や経営で完結するのではなく、現場メンバーに評価してもらえばいいのです。

・「採用」は、あなたの部門の業績向上に貢献しましたか?
・「教育」は、あなたの部門の業績向上に貢献しましたか?
・「労務対応」は、あなたの部門の業績向上に貢献しましたか?

こういうイメージです。

想定できるのは、現場メンバーからの「わからない」という声です。僕はこの回答が一番ダメだと思っています。なぜなら、人事メンバーと現場メンバーのコミュニケーションがないということの表れだからです。これが社外のお客様と向き合う営業メンバーならどうでしょうか?お客様から「わからない」という声をもらうのは最悪ですよね?それを人事や管理部門のメンバーだからと言って緩めないでください。お客様に価値提供していないということと同義なのですから。

CHROの目標の定量化はどうやるのか?

機能についての目標は立てやすいですよね。よく、定量化することが難しいという声をいただきますが、すべての目標は定量化できると考えます。例えば以下のように整理できます。

①量:●名採用できたか?など
②質:●%改善できたか?など
③時間:●時間削減できたか?など
④コスト:●円削減できたか?など
⑤現場評価:「●●」について10段階でどの程度貢献できたか?など

お分かりの通り、なかなか定量できないものは全て⑤に集約してしまえばいいのです。

また、アウトプットではなくアウトカムで握ることで本質的な定量評価ができます。例えば「マニュアルを作る」というような目標を持たせている企業がありますが、マニュアルを作るだけの目標がアウトプットで、そのマニュアルを使う人がそのマニュアルのおかげでどれだけ生産性が上がったか、などを確認するのがアウトカムでの目標です。

アウトカムで目標を設定すると、現場の運用イメージを考えながら作成に励みますが、アウトプットを目標にすると誰にも使われないマニュアルが出来上がります。これだと時間もその目標を持たせた人材の報酬も無駄遣いです。ましてや使えないマニュアルを配布された現場メンバーは逆に生産性が下がることも考えられます。

そして、このように定量で目標を設定するのは人事責任者も同じです。そして、CHRO、人事部長のミッションの違いを上記のように考えると、評価期間が違うことにも気づけると思います。

CHRO:非連続的な目標を追いかけるために長期(1年~数年)で評価
人事部長:連続的な目標を追いかけるために短期(半年~1年)で評価

人事部長の目標は単年の業績にいかにヒットしたのかで考えればいいので、単年で評価できます。

・「採用」は業績にクリティカルヒットしたのか?
・「教育研修」は業績にクリティカルヒットしたのか?
・「配置転換」は業績にクリティカルヒットしたのか?

一方で、CHROは単年の業績ではなく、中長期的な企業価値(CV)に貢献したのかどうかを評価する必要があります。

・「人事戦略」は「企業ブランド」に影響を与えたのか?
・「人事戦略」は「人的資本経営」に影響を与えたのか?
・「人事戦略」は「経営人材の開発」に影響を与えたのか?

あくまでも例えですが、このように考えると整理できると思います。「人事戦略」「企業ブランド」など抽象的に丸めていますが、これが個別企業の現状、理想、組織ケイパビリティ、カルチャー、方針などに合わせて具体化していきます。

CHROの目標を見るとわかると思いますが、人事部長に比べて、経営、PR、ファイナンス、事業、がわかっていないと持てない目標になっています。これが、経営視点と経営能力を持つべきCHROと人事機能のトップである人事部長の大きな違いです。

繰り返しになりますが、水は上から流れます。役員が適切な目標を立て、適切に評価できる組織を作れば、自ずと一般メンバーの目標と評価も徹底されます。一般メンバーの目標が適当で、評価がザルであることに悩む経営者は、まずは自分の直下である役員の目標から見直してみると良いと思います。

それでは今回はこの辺りで。


自社で人事責任者を採用したい、育てたいがうまくいかない、という経営者の方はご連絡をください。CHRO採用とCHRO開発を承っています。
takenoko1220


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