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人類の永遠の問い"Well-being"(後編)~サステナブルタウンを目指して~

ウェルビーイングについて、特にまちづくりの視点から前編・中編・後編の3つに分けてお伝えしています。

後編のテーマは、「サステナブルタウン」です!

サステナブルタウンとは

私が目指す「サステナブルタウン」とは、地域に暮らす一人一人が環境・社会・経済にとって最良な選択を見つけられる”サステナブルな地域社会”です。

環境・社会・経済の調和

サステナビリティの業界では、環境・社会・経済をトリプルボトムラインと言います。とはいえ、トリプルボトムラインなどという専門用語や3つの要素を同時に考えることは、どう考えても「難しいこと」=「私と関係ないこと」となってしまうはずです。
そこで、弊社SUSTAINABLE TOWNでは、その3つの要素を調和的に考えられることが「自然」となる状態を目指しています。

たとえば、個人が経済にとって最良な選択を見つけること一つとっても難しいものですが、3つ同時に考えるよりは遥かに簡単なことと思います。しかし、経済は、環境や社会と複雑に高度に絡まり合っています。

ビールと環境・社会・経済の例

イメージしやすい身近な例として、「自分とビールの関係性」を考えてみましょう(ビール飲めない方は申し訳ございませんが、一つの事例として身近な方を想定してお読みください)。
一人がビールを一本買うことについて、さほど影響はないでしょう。
でも、それが毎日、毎年続いたら、一人の選択は大きなインパクトをもらたします。「自分と同じ行動をとる人が他にもたくさんいたら・・・」と考えると、そのインパクトは計り知れないものです。
サステナブルな選択をとるときに、このように水平的に垂直的に考える方法は、イメージしやすいものです。

さらに、シンプルに具体的に考えます。ビールの味は個人の好みがあるので一概には決して言えませんが、一緒に考えてみてください。

あなたは、大手ラガービールをスーパーやコンビニで日々買っています。
ある時、あなたのまちに、クラフトビールのブルワリー(醸造所)ができました。若者の醸造家が頑張っているようです。

<未来シナリオ
ブルワリーは物珍しさから最初は賑わったものの、いつものビールの2倍・3倍する価格にびっくり。いつもの飲み慣れたビールは費用も安く、いろんな場所で購入できることから、ブルワリーはしだいに顧客が減ってしまいました。
そして、数年後、ブルワリーは廃業してしまいました。

<未来シナリオ
ブルワリーの醸造家の「まちへの思い」に共感して、多少お金がかかっても応援する気持ちで多くの人がビールを購入。まちの人との対話から次々に地域の特産を活かした珍しいビールが誕生。「いつもの」に近い飲みやすいビールも、醸造家とお客さんの対話と実験でできあがりました。そして、どんどんまちの人がビールを購入することで、費用もちょっとした贅沢品くらいに収まりました。ブルワリーは忙しくなってきて、まちの高齢者や障がい者を雇用。クラウドファンディングで井戸の掘削プロジェクトに成功。ホップを育ててくれる農家も現れました。まちのふるさと納税にもラインナップされて税収は激増。ビール祭りの企画も生まれ、コミュニティが盛んになりました。このビールがまちのアイデンティティの一つになりました。

あなたはどちらの未来が「サステナブルタウン」だと思いますか?

ビールとサステナビリティの解説

もちろん、まちに大手ビールは必要だと思います。なので、一人一人が完全にまちのブルワリーのビールのみにすることは、ありえないでしょう。
そもそも、ビールの本来の魅力は「多様性」にあるので。

さて、同じ飲み物としてコーヒーの事例を紹介します。
アメリカで住みたいまちランキング1位として有名なポートランドは、サステナビリティで有名です。そのため、まちに「サードウェーブコーヒー」の文化が根付いています。
私も2017年にポートランドに10日ほど滞在し、「STAMP TOWN」をはじめとするサードウェーブコーヒー文化に触れました。
そこでは、一杯のコーヒーが作られる全過程に責任を持って考えています。
コーヒー農場の土壌や水質の改善、農場や流通の労働者の労働環境や福利厚生、環境に配慮した農薬の使用あるいは有機栽培や日陰栽培、流通時のエネルギー消費量や環境への負荷などなど、環境・社会・経済に配慮した視点で捉えられています。例えば、エシカルトレードやフェアトレードの仕組みを導入し、生産者の収益改善や農業のサステナビリティを支援しています。

話は戻ります。ビールの原料は➊水、➋麦芽、➌ホップ、➍酵母です。なお、副原料としてレモンやオレンジピール、なかには栗やカキ、出汁など様々な食材も使われます。
サードウェーブコーヒー同様、ビールの水や麦、ホップがどこでどのように作られ、どのように輸送されてきたものなのか、考えてみたことってありますでしょうか? おそらく「ない」という人が多数派だと思います。
(ちなみに、麦芽とホップは海外から輸入のケースがほとんどです)

上記の例にあるように、地産地消化することで無駄なエネルギーやコストを掛けない販売・消費が可能です。まちの人がサステナビリティを意識することによって。
お金の使い方は投票券のようなものです。
まちの一人ひとりのお金を使って、自分のまちの産業と他所の会社のどちらを支援したいか? 自分のまちと他所の地域のどちらを支援したいか?
極端に言えば、こういった視点も必要と思います。

ビールとウェルビーイングの解説

ずいぶんとビールの話をしてしまいましたが、ついでに、「ビールとウェルビーイング」についても考えてみましょう。

私はクラフトビールの文化が大好きなのですが、その理由は、一言でいえばウェルビーイングだからです。
さぁ、前編で紹介した心理学によるウェルビーイングの考察“PERMA”を使ってクラフトビールの文化を考えてみましょう(そんな検証を行う人は世界初でしょうか!? 笑)

P (Positive emotion / 明るい感情)
嬉しい、面白い、楽しい、感動、感激、感謝、希望など
→クラフトビールは、その多様性と個性的な風味が人々に喜びをもたらします。まちでつくったクラフトビールや未知のクラフトビールを楽しむことで、人々は新しい体験や発見の喜びを感じることができます。

E (Engagement / 物事への積極的な関わり)
没頭、没入、夢中、熱中など
→クラフトビールの製造過程やその背後にあるストーリーに興味を持つことで、消費者はビールに対する深い関心や熱中を経験することができます。

R (Relationship / 他者とのよい関係)
援助、協力、意思疎通など
→クラフトビールは社会的なつながりを促進します。ビールを共有することは、友人や家族、同僚との絆を深め、新たな人々との出会い・交流を生む素晴らしい機会も生まれます。

M (Meaning / 人生の意義の自覚)
人生の意義、社会貢献、利他行為、宗教など
→クラフトビールは、その製造過程や原材料の選択、地域への貢献などを通じて、消費者にとっての意義を提供します。特定のクラフトビールを選ぶことは、個々の価値観や信念を反映することができます。
クラフトビールを通じてまちづくりやまちおこし活動をしていくことで、まちを生きる状態になっていくことができます。

A (Accomplishment / 達成感)
達成、成果、自己効力感など
→クラフトビールの世界は探求の余地が豊富で、新しいビールを見つけたり、特定のビールの風味を理解したりすること、そして、なにより一緒に作るトライアンドエラーは一種の達成感をもたらします。

簡単な検証でしたが、以上のように、クラフトビールは消費者のウェルビーイングを高める可能性を物凄く持っています。
それは、ビールそのものの「のどごし」や「キレ」「コク」といった楽しみだけでなく、それがもたらす経験や人間関係、意義、達成感によって、人々の生活にポジティブな影響を与えるからです。
ただし、適量を守り、楽しみましょう(笑)

個人が社会にとって最良な選択を行うこと

「サステナブル」や「SDGs」今度は「ウェルビーイング」などと聞くと、道徳的だと感じたり、上からの押しつけ感や社会からの要請を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
だから、クラフトビールの例で考えてみました。サステナビリティやウェルビーイングを自然なこととして受け入れてほしかったからです。

ウェルビーイングの追求

より良く生きる。
そのためには、個人と社会が共にウェルビーイングである必要があります。
個人だけでも、社会だけでもなく、そのどちらもよりウェルビーイングな状態を目指し続けていくことが大切です。

それは、前編で紹介した「まちを生きる」という状態、さらに適切に言えば「まちをより良く生きる」状態であると考えます。この感覚を持つ方が増えることがサステナブルタウンの実現に一番つながると確信しています。
つまり、まちと自分が重なり、自分のことがまちのことにつながっていて、まちのことが自分にもつながっている状態。まちの主人公として、まちで、まちとして、まちを生きていく心持ち。自主的や意識的ではなく、主体的で自然体として。
まちというのは一人一人の集まりからなるコミュニティであり、まさに環境・社会・経済そのものです。

中編で紹介したOECDのウェルビーイングを核とした「Better Life Index(より良い暮らし指標)」をはじめ、いま、広域自治体・基礎自治体でウェルビーイングを指標化・数値化していく動きもみられます。
それ自体は、人類の永遠の問いであるウェルビーイングを追求するためにとても重要なことと思います。
まちをつくる専門職にとって、数字は必要な物なので否定はしません。
しかし、住民はそのような数字を信じたり、当てにしたり、頼ったりはしまないことも事実です。あえて言えば、興味を持つことすら一生ないかもしれないくらいです。

では、どのように住民のウェルビーイングを考え、と同時に、まちをつくる専門職のウェルビーイングも考えていけばいいのでしょうか?

住民主体と生涯学習

・・・と問いかけてみたものの、今後のnoteにて少しずつ情報発信していきたいと思います。とてつもなく大きなテーマなので、ここから超重要なテーマ「住民主体」と「生涯学習」に絞って考えていきたいと思います。

まちづくりの主人公は、そのまちの住民。
だから、「住民主体」という考え方は、まちづくりにとって極めて大切です。

主体性とは、自主性とは異なります。

(自主性の説明)
(主体性の説明)

住民主体のまちづくりとは、まちに対して住民が主体的であることを指します。

まちづくり活動をしていくときに、そこに「学び合い」があるか否かで、その性質や成果は大きく変わってしまいます。繰り返しますが「学び」ではなく「学び合い」です。
たとえば、専門職と住民の学び合い。住民と住民の学び合い。団体と団体の学び合いなどなど。
どんな首長だって全知全能な人はいません。みんながお互いに得意を活かし合える関係性(D&I)がなくては、まちの持続的な発展は望めません。

これまでの人生で学んできたことを学びほぐし続けていくサイクルを生涯学習といいます。サステナブルなまちづくりにとって、生涯学習は大きな原動力となります。しかし、残念ながら、真の生涯学習に本気な自治体はあまりないのが現状です。
小手先の事業や施策ではなく、時間はかかりますが、学び合い、育み合うまちの文化ができることが、最もまちをサステナブルなものにしていく着実な道となります。
なお、2022年「世界の公的教育支出・教育費の対GDP比率 国際比較統計・ランキング」では、179か国中、日本は121位となっています。このことはウェルビーイングと深く関係しているはずです。

サステナブルなまちづくりの専門家

サステナブルなまちづくりの専門家として、様々な分野において適切な手法を用いて、私はサポートをしてきました。
➊市民、➋自治体職員、➌民間の3領域でまちづくりに十数年携わってきた経験から、その間に立てる強みを持っています。
あなたのまちをサステナブルに育みたい。
ぜひ、弊社SUSTAINABLE TOWNにお仕事のご依頼をいただければと思います。

サステナブルタウンを追い求めて

今回、「サステナブルタウン」という、持続可能な社会を形成するための理想的なまちのビジョンを共有しました。

個人のウェルビーイングは、健康、幸福、そして、充実した人生を追求することを意味します。これは、心身の健康、教育、文化的な活動、そして社会的なつながりを通じて達成されます。
サステナブルタウンでは、これらすべてがまちにとって必要なことと重視され、個々の住民が自分自身のウェルビーイングを追求することが文化となります。

一方、社会のウェルビーイングは、公平性、社会的なつながり、そして、環境の健康を重視します。これは、社会的な包摂性、持続可能な環境マネジメント、そして、協働的な経済活動を通じて達成されます。
サステナブルタウンでは、これらすべてが重視され、全体としての社会がウェルビーイングを追求することが文化となります。

サステナブルタウンを実現するためには、住民主体のまちづくりとその原動力となる生涯学習が重要な役割を果たします。
これは、福祉、防災、環境、学校教育、社会教育、都市計画、建築、交通、そして、公共サービスなど、さまざまな要素を組み合わせて一体的に考えることが必要です。

サステナブルタウンの追求は、個人と社会が共にウェルビーイングであることを目指すものです。
そして、その先に、地域に暮らす一人一人が環境・社会・経済にとって最良な選択を見つけられる”サステナブルな地域社会という未来が必ず実現できると信じています。


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