マガジンのカバー画像

備忘録・後で読む

172
運営しているクリエイター

#教育

ヴィゴツキー「発達の最近接領域」再訪 ― 誰かに助けてもらいながら背伸びする経験をどう創るか ―

ヴィゴツキー「発達の最近接領域」再訪 ― 誰かに助けてもらいながら背伸びする経験をどう創るか ―

ソ連の天才的心理学者ヴィゴツキーが提唱した「発達の最近接領域(Zone of proximal development)」理論は、現在の教育改革を支える大切な概念の一つです。学習科学の基礎概念の一つである「足場かけ」の元ネタでもありますし、個人的には「主体的・対話的で深い学び」が「這い回る経験主義」に堕落しないための鍵概念でもあると思っています。教育学の講義では必ず触れられ、様々な教育の議論で引用

もっとみる

中国の教育事情と、国民性のようなものの関係

先日、中国人の奥様を持ち、すでに大きなお子さんがいらっしゃる、僕から見ればいわば大先輩のような方と話す機会がありました。

その時にたいへん興味深かったのが、「中国人の気質のようなものは教育によって作られている部分がある」というお話でした。ここにまとめておきたいと思います。

+++++

中国が教育大国であり、中国の学生と、子供を持つ親は大変だという話はよく耳にします。

日本と比べるとあり得な

もっとみる
学校も病院も行くことを禁じられた少女の壮絶な半生の回想『エデュケーション』/大原ケイ書評

学校も病院も行くことを禁じられた少女の壮絶な半生の回想『エデュケーション』/大原ケイ書評

ビル・ゲイツ、ミシェル&バラク・オバマらが絶賛して全米で130週以上ベストセラーリストにランクイン、400万部超を売り上げたノンフィクション、タラ・ウェストーバー/村井理子訳『エデュケーション――大学は私の人生を変えた』(原題:Educated: A Memoir)とはどんな本なのか? アメリカの出版事情に精通する大原ケイさんが紹介します。

よくアメリカは「自由の国」と言われるが、そもそもなんの

もっとみる
「大航海時代」は、すごいのか?  史料でよむ世界史 8.1.1 大航海時代

「大航海時代」は、すごいのか?  史料でよむ世界史 8.1.1 大航海時代

「大航海時代」というネーミングは適切か?

「大航海時代」を辞書で引くと、次のようにある。

大航海時代 15世紀から17世紀前半にかけて、ポルトガル・スペインを中心とするヨーロッパ諸国が地球規模の遠洋航海を実施して新航路・新大陸を発見し、積極的な海外進出を行った時代。バスコ=ダ=ガマのインド航路開拓、コロンブスのアメリカ大陸到達、マゼランの世界周航などが行われ、世界史上に、近代植民地体制の

もっとみる
史料でよむ世界史  15.3.2 アフリカ諸国の独立と苦悩

史料でよむ世界史 15.3.2 アフリカ諸国の独立と苦悩

サハラ以北の北アフリカでは、1951年に早くもリビアが敗戦国のイタリアから独立した。
そして1956年にはイギリスとエジプトの支配下にあったスーダン、そしてフランスの支配下にあったモロッコとチュニジアが独立する。

しかし、アルジェリアが独立するには、フランスと厳しい戦争を経る必要があった(アルジェリア独立戦争)。アルジェリアには、植民地化された1830年以降、すでにフランス人の入植者がたくさん暮

もっとみる
教育の今、子どもたちの未来~『質問する、問い返す』名古谷隆彦

教育の今、子どもたちの未来~『質問する、問い返す』名古谷隆彦

――主体的に学ぶということ (岩波ジュニア新書)

久々のジュニア新書。考え方や問いの立て方を子供にも読めるようにやさしく解説する本かと思ったら、やや毛色が違った。本書は、学校教育の現場を長年取材してきた記者による、子どもたちが自主的に考える力を養うための教育のあり方を豊富な事例とともに考察していくマイルドな教育論である。ジュニアを対象に書かれているわけではないが、それでもやはり読みやすく、若い世

もっとみる