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短歌(和歌)と散文

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#今こんな気分

【エセー】軽やかな心で

【エセー】軽やかな心で

今週、久しぶりに髪を切りました。

本当は先月がいつものタイミングだったのですが、演奏の撮影とその後の発表という大きな仕事を抱えたままでは、のんびりと髪を切るような気分にはとてもなれませんでした。

よく願掛けで、願いが叶うまで好きなものを断つ、というような話がありますが、今回私もそんな気持ちでした。

大切な事柄をすべて何とか終えて、やっと落ち着いて髪を切れるようになったと思えば、今度は美容院の

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朝、床の中で目を覚ますと、しっとりした空気の中、雨の音が聞こえました。そのときの気持ちを詠みました。

妖気充つ 春の心をなぐさむる 花の雨こそ あはれなりけれ

(不穏な気配に充ちた春の落ち着かない心を和らげてくれる、そんな桜の季節に降る雨こそは本当に趣深いものだ)

【今日の短歌】令和5年6月5日

【今日の短歌】令和5年6月5日

こうやって泳げと事も無げに説くあなたは私の海を知らない

血を流すように書いても本当に独りなんだな人は私は

第一首は、「踏みにじる土足の目には」の歌(今日の短歌 5月29日)と同様、私の心の最も深いところから生まれた歌です。

「事も無げに」の箇所は、当初は「責めるように」としていました。どちらでも歌としては成り立ちますが、それによって「私の海」の持つ意味がまったく変わってきます。

もし「責

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月

クリスマスの夜。今年中にどうしてもやり遂げたかった大切な仕事を終え、久しぶりの外食を楽しんだ帰り道、乗換えの途中でふと見上げた渋谷の空に、師走の十三夜月が浮かんでいた。

いつもは努めて避ける繁華街にそびえ立つ高層ビルの狭間でこうこうと光るその月は、おれには何か象徴的なものに見えた。

都心の空にも月はあるんだ——。

そんな思いを胸に一人家路を急いだ。

世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし/在原業平
(世に桜などというものが全くなかったならば、春の心は穏やかであろうに)

毎年桜の季節はとても心がざわつきます。満開の桜を見て今年もまた業平のこの歌を思い出しました。

https://note.com/soh_igarashi/n/naeb732d51873

【短歌】春風となって

【短歌】春風となって

きみだけに姿の見える春風となってあなたを抱き締めにゆく

昨年のちょうど今日、同じような桜の季節に、生暖かい春の風に誘われるようにして、空想のつばさを広げて詠みました。

推敲し切れていない感じがあり、どうまとめようか決めかねているうちに一年経ってしまいました。今は、一度詠んだものなのであえてこれ以上手は入れなくて良いかなと思うようになりました。

ふわふわと落ち着かない、春特有のそんな気分から生

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雑草と呼ばるる命ひとつびとつ名を確かめつためらひて摘む/五十嵐創

昨年発表した作品です。
https://note.com/soh_igarashi/n/nfe5a25206b7e

緑がいっせいに濃さを増すこの季節、「手入れの行き届いた」庭園を見る度に、こうした複雑な気持ちに駆られます。