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#83『サクラサク、サクラチル』(著:辻堂ゆめ)を読んだ感想【読書日記】

辻堂ゆめさんの『サクラサク、サクラチル』

7月26日に発売された辻堂さんの最新作です。



読んだきっかけ

最近は文庫本を中心に読んでいることもあり、久しぶりに単行本を読みたいと思っていました。
そんな中で書店に行った時に、辻堂ゆめさんの作品は未読だったこと、あらすじに惹かれたことから手に取った1冊です。

このような方にオススメの本です

  • 将来について悩んでいる高校生

  • 青春ミステリーが読みたい

  • 生きるうえで大切なことについて考えたい

あらすじ

「絶対に東大合格しなきゃ許さない」
――両親の熱烈な期待に応えるため、高校三年生の高志は勉強漬けの日々を送っていた。そんなある日、クラスメートの星という少女から、自身をとりまく異常な教育環境を「虐待」だと指摘される。そんな星もまた、自身が親からネグレクトを受けていることを打ち明ける。心を共鳴させあう二人はやがて、自分達を追い詰めた親への〈復讐計画〉を始動させることに――。教室で浮いていた彼女と、埋もれていた僕の運命が、大学受験を前に交差する。驚愕の結末と切なさが待ち受ける極上の青春ミステリー。

双葉社より

感想

  • 高校時代に読んでいたらと思わずにはいられない

  • 染野と星さんの「復讐計画」の全貌に胸が高まる


本作を高校時代に読んでいたら、もっと力を抜いて生活できたかもしれない。

読了後このように思いました。

「人の常識とは、自分の家庭を基準にして醸成される」

本作で印象に残ったフレーズの1つですが、主人公の染野高志と星さんは歪んだ家庭環境により、自らの常識も歪んでいる状態になっている。
暴言、暴力、ネグレクト…。
でも、閉ざされた世界にいる場合はそれが常識だと思ってしまう。両親にひどい仕打ちを受けているのにも関わらず、気づかない高志の様子にぞっとしました。

「恵まれてるかどうか」はお金などの物質的な面を見がちで心の部分を軽視しやすい。高志のように罪悪感を抱く気持ちは仕方ないのかなと感じ、このような歪みは外からは気づきにくいなと思いました。

学歴、職歴による人の順位付け。それが高いか低いかで必ずしも幸せに結びつくわけではない。自分自身の生き方を誇れるかどうかが大事だと思います。これから生きていくうえでも大事にしたいことですね。


高志と星さんの「復讐計画」の全貌に胸が高まりました。
「あ~なるほど」と思った後の予想のさらに上をいく結末。これがミステリー小説の見どころであり、作家さんの凄いところですよね。前半から悶々とした思いを抱えていただけに、爽快な気分にもさせてくれました。

将来に悩んでいる高校生に、一歩踏み出す勇気をくれる1冊。

印象的なフレーズ

本やテレビの中で描写される"普通の家庭"のイメージが、自分を取り巻く現実とあまりに乖離していることに、うすうす疑問を覚えてはいた、ということだろう。
それだけひどいことを親にされていて、その状況が異常だと中学生になるまで分からなかったというのは、なかなか信じがたい話だった。けれど、たぶん、人の常識とは、自分の家庭を基準にして醸成されるものなのだろう。昔の人が天動説を支持していたのと同じことだ。地球上に住む人間は、誰か博識な人に教えてもらわない限り、宇宙の中心にあるのはこの地球なのだと、根拠もなく思い込む。

『サクラサク、サクラチル』

「身体の傷も、心の傷も、隠すのが癖になるんだよね。なんとなく、他人に知られちゃいけない気がして」

『サクラサク、サクラチル』

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