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六話 妖怪 フローリング埃渡り(ふろーりんぐほこりわたり)

いくら掃除をしても、ホコリはどこからともなくやってくる

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フローリングに掃除機をかけて戻ってくると、さっき掃除したばかりの床に毛玉のようなホコリが落ちていることがある。「何で?」と思いながら、もう一度掃除機で吸い込むのだが、この現象は、フローリングなどツルツルした床の隅に多くみられる。

いくらきれいに掃除をしても、どこからともなくやってくるホコリのかたまり。その正体は妖怪フローリング埃渡り」である。彼らは家の中でも奥まった暗がりが好きで、例えばタンスの中やベッドの下、キッチンやお風呂のマットなどにたむろしている。そして、空中に舞い上がり、ある程度のかたまりに成長すると下に降りてきて、フローリングを縦横無尽にかけ回るのだ。

しかし、天敵である掃除機がやってくると、一目散に空中へと逃げていく。舞上がった妖怪フローリング埃渡り」は、掃除機がいなくなるや否や、再び床へと戻ってくるのだ。

人間はこのイタチごっこを何度も繰り返さなければならない。残念だが毎日掃除機をかけるしか今のところ手立てはない。

どんな妖怪だった?

煤渡り(すすわたり)
黒くて丸い毛玉状のからだで、真ん中に二つの目がついている。無人の古い家に好んで住みつき、奥まった暗がりにたむろして、長く居るとススとホコリだらけにしてしまう。

あとがき

床のほこりの生態は興味深い。埃やゴミがいつのまにか発生して、その存在が気になってしょうがなくなる。そして引力を持つようになり、ブラックホールのように、通るたびほこりに意識がどんどん吸い込まれていく。

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この物語は、無料マガジン『社会の闇にうごめく二十六妖怪今昔物語』に掲載されている第一話です。良かったら、他の物語も読んでみて下さい。


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