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十一話 妖怪 銭置行(ぜにおいていけ)

小銭を落とすと、手の届かない所に転がっていく

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ある時、自動販売機でジュースを買おうと小銭を出したら誤って落としてしまった。慌てて拾おうとしたが、勢いよく転がって、あっという間に自動販売機の下に潜り込んでしまった。落としたのが10円玉だったらあきらめがつくが、100円玉である。地面にはいつくばるのには勇気がいったが、意を決して自動販売機の下をのぞいてみた。すると、小銭は手が届くか届かないか微妙な距離に落ちていた。ちょっと迷ったが、もう後には引けないと思い手を伸ばした。すると、あらぬことか指先で100円玉を押してしまい、更に奥に行ってしまった。
「なんで!」
数分間格闘したが、結局、落とした100円玉を拾うことはできなかった。頑張った努力は報われず、虚しく思いながらも服に着いた泥を払い落とし、新しい100円玉を財布から取り出すのだった。

このように、自動販売機やスーパーのレジなどで小銭を落とすと手の届かない隅に転がってしまうことがよくある。だが、それは妖怪銭置行」のしわざかもしれない。昔は釣り堀で釣った魚を横取りしていたのが、今はお金に執着する人間が増えたことで生み出されたそうだ。

どんな妖怪だった?

置行堀(おいてけぼり)
本所付近の水路で魚がたくさん釣れたので持って帰ろうとすると、堀の中から「置いていけ」という恐ろしい声がした。逃げ帰って魚籠を覗くと、魚が一匹も入っていなかった。

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この物語は、無料マガジン『社会の闇にうごめく二十六妖怪今昔物語』に掲載されている第一話です。良かったら、他の物語も読んでみて下さい。



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