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知っておきたい科学のこと

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#科学

遺伝子で才能も性格もわからない

遺伝子で才能も性格もわからない

今週、毎日新聞が「ある保育園が子どもの遺伝子検査を仲介している」という独自ニュースを報じています。

実はこれ、今に始まったことではなくて10年以上前からずっとある問題です。子どもの遺伝子を調べて本当に才能がわかって、子育てや教育に活用できるのでしょうか。

結論から書くと、「意味がないどころか本当の才能を埋もれさせてしまう可能性がある」です。

10年前から変わっていないまやかし今回、毎日新聞が

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『Dr.STONE』は「失敗する科学」を描いているのがいい

『Dr.STONE』は「失敗する科学」を描いているのがいい

アニメ『Dr.STONE』の第3期が始まりました。

たまたま第1期の初回放送を見て、「あれ、これめちゃくちゃ面白いんじゃね?」と思って、ずっと見ています。

『Dr.STONE』とは

全人類石化によって文明が滅んだ世界で、科学少年が知識と知恵を使って文明を取り戻していく、というストーリー。最初は石器による木材加工から始まり、火薬、抗菌剤、電話、気球などを作っていきながら科学文明を築き上げ、現在

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Newton2023年4月号で「最良の睡眠」を書きました

Newton2023年4月号で「最良の睡眠」を書きました

タイトルの通りです。30ページいっぱい書きました。

筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の櫻井先生のご協力のもと、最近の睡眠研究成果を紹介しました。おすすめの入眠法、ひらめきを生むかもしれないうたた寝の効果、人間以外の生き物の睡眠研究など、調べていく上で睡眠の奥深さというか訳分からなさをよけいに実感しました。中には夢に介入する研究も。それ『インセプション』じゃね?

とりあえずこの記事の制作中は夜

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【2022年ノーベル生理学・医学賞】3行と300字で簡単に、4600文で詳しくわかる解説

【2022年ノーベル生理学・医学賞】3行と300字で簡単に、4600文で詳しくわかる解説

2021年のノーベル生理学・医学賞は、ドイツのマックス・プランク進化人類学研究所所長・沖縄科学技術大学院大学(OIST)教授のスヴァンテ・ペーボ氏(Svante Pääbo)に授与されることが発表されました。

受賞理由は「絶滅したヒト族のゲノムと、ヒトの進化に関する発見(for his discoveries concerning the genomes of extinct hominins

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『ニュートン2022年5月号』で記事を書きました、とそのリファレンス

『ニュートン2022年5月号』で記事を書きました、とそのリファレンス

『ニュートン2022年5月号』で「合成生物学はここまで来た」を書きました。

合成生物学っていう言葉は聞き慣れないと思いますが、この記事では「ゲノムを人工的に作って思い通りの性質をもつ細胞や組織をつくること」というスタンスで書きました。実際のところ、合成生物学って定義があるようなないような、ちょっとバズワードっぽくなっているのが事実です。

とはいえ、試し読みのところにもあるように、ゲノム編集(特

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大学入学共通テスト「生物基礎」を解いてみよう——これを高校卒業生が解くっていい時代

大学入学共通テスト「生物基礎」を解いてみよう——これを高校卒業生が解くっていい時代

週末は大学入学共通テストが開催されました。生物系のサイエンスライターだし、せっかくなので生物科目の問題を解いてみることにしました。果たしてサイエンスライターと名乗るにふさわしい点数を獲得することができるのか!?(センター試験時代から11年連続使っている文章のコピペ)

文系志望が解く生物基礎この記事では、まず「生物基礎」にチャレンジします。この科目を選択するのは、文系学部志望の受験生です。

生物

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新作『イラスト図解 遺伝子の不思議としくみ入門』発売記念で音声配信します

新作『イラスト図解 遺伝子の不思議としくみ入門』発売記念で音声配信します

12月20日に紙の書籍としては8年ぶりの新作『イラスト図解 遺伝子の不思議としくみ入門』が発売されます。ぱちぱちぱちー

遺伝子の視点から、性格(具体的には神経伝達物質やその受け取り方)、食事、病気、そして生命全般のことについて紹介する本です。今年の夏はこの本にすべてを注ぎました。がんばりました。

例えば、

好みの異性は「匂いの遺伝子」で選んでいる?

遺伝子で顔はどこまで決まる?

遺伝子操

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2021年ノーベル生理学・医学賞のこと 〜hot and touch〜

2021年ノーベル生理学・医学賞のこと 〜hot and touch〜

2021年のノーベル生理学・医学賞は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校教授のデヴィッド・ジュリアス氏(David Julius)と米スクリプス研究所のアーデム・パタプティアン氏(Ardem Patapoutian)に贈られることが発表されました。受賞テーマは、「温度と触覚の受容体の発見(for their discoveries of receptors for temperature and

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『ニュートン』5月号で記事を書きました、とそのレファレンス

『ニュートン』5月号で記事を書きました、とそのレファレンス

noteを書くクセをつけないと思いつつ、忙しさにかまけて書かないのはまずいと思い、新シリーズを立ち上げました。

「書いた記事のレファレンスはこれです」シリーズです。

レファレンス(reference)
「参考文献」という意味。記事や本を書いたときに「この文献(書籍、論文、報道記事など)を参考にしました」として記載するもの。記事内容に根拠があること、詳しく知りたい人はこれを読んでね、ということで

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「超加工食品は危ない」本当の理由を探してみよう

「超加工食品は危ない」本当の理由を探してみよう

この記事は「今年読んだ一番好きな論文2019大人版 Advent Calendar 2019」の21日目です。

* * *

去年(2018年)ごろから、「超加工食品を食べると体重が増える、死亡率も上がる」という研究成果が発表され続けています。超加工食品とはどんなもので、本当に危険なのでしょうか。研究成果を紐解きながら、食と健康について考えてみましょう。

異議もある超加工食品という分類ただの加

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「妊娠を前提としたヒトゲノム編集は禁止すべき」国際会議で声明発表

「妊娠を前提としたヒトゲノム編集は禁止すべき」国際会議で声明発表

(2015年12月18日作成のものを再掲)

遺伝子を簡単に改変できる技術「ゲノム編集」が基礎研究を中心に幅広く使われています。しかし、ヒトの遺伝子をどこまで編集してよいのか、そもそも編集してもよいのか、その議論は十分とはいえませんでした。

ヒトへのゲノム編集について、12月1日から3日間にわたって国際会議が開かれ、妊娠を前提とした生殖細胞・受精卵へのゲノム編集は禁止すべきという声明が発表されま

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NHKドラマ『デザイナーベイビー』で登場した救世主兄弟とは?

NHKドラマ『デザイナーベイビー』で登場した救世主兄弟とは?

2019年5月25日追記
『インハンド』第7話で救世主兄弟というキーワードが登場しました。この記事とは背景が違いますが、「救世主兄弟 is 何?」という疑問にはお答えできます。

(2015年10月22日作成のものを再掲)

NHKで火曜日22時から放送されている『デザイナーベイビー』は、新生児誘拐事件と生殖補助医療を絡めた医療ミステリドラマです

27日に放送される回の予告で、誘拐された赤ちゃん

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噂は本当だった ヒト受精卵の遺伝子を改変した研究成果が発表

噂は本当だった ヒト受精卵の遺伝子を改変した研究成果が発表

(2015年4月27日作成のものを再掲)

先月「ヒトの受精卵の遺伝子を改変する実験が行われているらしい」という噂が飛び交いましたが、噂は事実でした。4月18日に論文が発表され、研究者間の議論が加速するだけでなく、社会を巻き込んだ論争になると見込まれます。

メジャー学術誌に掲載拒否された論文を無名学術誌が掲載3月に「ヒト受精卵の遺伝子改変実験をまとめた論文が査読(第三者の専門家による審査)に出回

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ヒト生殖細胞や受精卵のゲノム編集研究はストップすべき? 海外で一大論争に

ヒト生殖細胞や受精卵のゲノム編集研究はストップすべき? 海外で一大論争に

(2015年3月10日作成のものを再掲)

遺伝子を自由に改変させた子ども、いわゆる「デザイナーベビー」は多くのSFで登場しますが、あくまでフィクションであり、現実的ではないという認識でした。

ところが、新たな遺伝子改変技術「ゲノム編集」によって、一気に現実味を帯びています。すでに、一部の研究機関や企業ではヒトの精子や卵子、あるいは受精卵の遺伝子改変を視野に入れて研究している、もしくはすでに実行

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