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知っておきたい科学のこと

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記事一覧

遺伝子で才能も性格もわからない

遺伝子で才能も性格もわからない

今週、毎日新聞が「ある保育園が子どもの遺伝子検査を仲介している」という独自ニュースを報じています。

実はこれ、今に始まったことではなくて10年以上前からずっとある問題です。子どもの遺伝子を調べて本当に才能がわかって、子育てや教育に活用できるのでしょうか。

結論から書くと、「意味がないどころか本当の才能を埋もれさせてしまう可能性がある」です。

10年前から変わっていないまやかし今回、毎日新聞が

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2024年度大学入学共通テスト「生物基礎」を解いてみよう

2024年度大学入学共通テスト「生物基礎」を解いてみよう

週末は大学入学共通テストが開催されました。生物系のサイエンスライターだし、せっかくなので生物科目の問題を解いてみることにしました。果たしてサイエンスライターと名乗るにふさわしい点数を獲得することができるのか!?(センター試験時代から13年連続使っている文章のコピペ)

文系志望が解く生物基礎この記事では、まず「生物基礎」にチャレンジします。この科目を選択するのは、文系学部志望の受験生です。

生物

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NewsPicksでスタートした、線虫でがんリスクを調べるとするN-NOSEの信頼性を問う連載について、社長に取材したことがある経験からの所感

NewsPicksで、線虫でがんリスクを調べるとするN-NOSEの信頼性を問う連載がスタートしています。

前々から医師が信頼性について疑問視する記事がちょいちょい出ていましたが、今回のは元社員などの関係者の証言も取り揃えており、かなり念入りに準備してきた記事のようです。

第2回の記事にあるように、このサービス誕生のきっかけとなったのが、サービスを提供するHIROTSUバイオサイエンスの社長で当

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対立構造をつくっても日本の研究環境はよくならない

対立構造をつくっても日本の研究環境はよくならない

NHKの『日曜討論』を見ました。テーマは「どうする“研究力低下” これからの大学は」。ちょうど2週間前に書いたnoteの内容に直結するテーマだから、早起きして見ました。

番組は9月17日までNHK+で視聴できます。

個人的に驚いたのが、経済財政諮問会議の議員の方が、「以前は運営交付金を国立大学に幅広く支給していて私立大学もサポートしていたから競争力の差が生まれにくかった、だから選択と集中を始め

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Newton2023年8月号で「意識の謎はどこまで解けたか」を書きました

Newton2023年8月号で「意識の謎はどこまで解けたか」を書きました

タイトルの通りで、意識って何?どうやって研究すればいいの?みたいな記事を書きました。

これを読んでいる人は全員意識があるし、当たり前のことだと思うんだけど、では「意識とは?」という質問に答えようとすると、つまり定義しようとすると、途端に行き詰まってしまいます。つかみのようない意識というものをどう考えるのか、どう研究すればいいのか、ということを10ページにわたって紹介しました。

ご協力いただいた

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『水星の魔女』のトマトのメッセージはDNAバーコーディングの応用かもしれない

『水星の魔女』のトマトのメッセージはDNAバーコーディングの応用かもしれない

『水星の魔女』第22話「紡がれる道」で、かねてから育てていたトマトの遺伝情報の中に、ミオリネママからメッセージが込められていることが判明しました。

これを見た瞬間、「コドンを使った暗号じゃん!」と思ったわけです。

DNAに暗号化されている設計図遺伝子といえばDNAですが、体には筋肉だったり酵素だったり細胞骨格だったり、赤血球の中で酸素を運ぶヘモグロビンだったり、いろんなタンパク質があります。こ

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ChatGPTは「可能性を広げる」ツール

ChatGPTは「可能性を広げる」ツール

東京工業大学で非常勤講師として生命理工学院のM1向けにバイオアカデミックライティングという講義を担当しています。いわゆるサイエンスライティングの講義です。僕のコンセプトとして、「センスではなくテクニックを使う」ことを挙げていて、相手に伝わるような文章を書けるテクニック、つまり誰でも習得できて活用できる方法論を身につけることを目的にしています。

で、今年度から新しいトピックとして、もちろんChat

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『夢の細胞農業 培養肉を創る』の編集協力をしました

『夢の細胞農業 培養肉を創る』の編集協力をしました

6月8日に発売される、羽生 雄毅さんの書籍『夢の細胞農業 培養肉を創る』(さくら舎)の編集協力をしました。

「ぼくがかんがえたさいきょうのSF」を実現する物語2023年2月、あるスタートアップ企業が、アヒルの肝臓細胞を培養してつくった「培養フォアグラ」の試食を公開しました。

普通、フォアグラはガチョウやアヒルに餌をたくさん食べさせて脂肪肝になった肝臓からつくります。

一方、今回の培養フォアグ

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『Dr.STONE』は「失敗する科学」を描いているのがいい

『Dr.STONE』は「失敗する科学」を描いているのがいい

アニメ『Dr.STONE』の第3期が始まりました。

たまたま第1期の初回放送を見て、「あれ、これめちゃくちゃ面白いんじゃね?」と思って、ずっと見ています。

『Dr.STONE』とは

全人類石化によって文明が滅んだ世界で、科学少年が知識と知恵を使って文明を取り戻していく、というストーリー。最初は石器による木材加工から始まり、火薬、抗菌剤、電話、気球などを作っていきながら科学文明を築き上げ、現在

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英語発音だとゲノムじゃなくてジーノムなんだよね

英語発音だとゲノムじゃなくてジーノムなんだよね

久々にシンポジウムなるものに現地参加しました。

スケジュール的にも余裕があったのと、そろそろ外に出る億劫さを払拭しないと今後のフッ軽にも影響が出そうなので、行ってきました。

内容は、東北大学の東北メディカル・メガバンク機構がスタートしたときから個人的にも注目していたことの最新版で、患者団体からの意見も入っていたのがバランスいいな、と思いました。あ、東北メディカル・メガバンク機構っていうのは、ゲ

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Newton2023年4月号で「最良の睡眠」を書きました

Newton2023年4月号で「最良の睡眠」を書きました

タイトルの通りです。30ページいっぱい書きました。

筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の櫻井先生のご協力のもと、最近の睡眠研究成果を紹介しました。おすすめの入眠法、ひらめきを生むかもしれないうたた寝の効果、人間以外の生き物の睡眠研究など、調べていく上で睡眠の奥深さというか訳分からなさをよけいに実感しました。中には夢に介入する研究も。それ『インセプション』じゃね?

とりあえずこの記事の制作中は夜

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胚培養士というお仕事

胚培養士というお仕事

風の噂で、生命科学のポスドク研究員だった知人が胚培養士をやっていると聞きました。人生おもしろいですね。

胚培養士というのは、不妊治療で採取した卵子や精子を取り扱い、最終的に受精卵(胚)を子宮に戻すまでの世話をする人のことです。不妊治療クリニックで働いていて、卵子や受精卵の凍結・融解を行い、体外受精や顕微授精を実際にやるのが胚培養士です。

国家資格はなくて、生物系や農学系の卒業生がなるという話を

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大学入学共通テスト「生物基礎」を解いてみよう——教科書をちゃんと読もうねという話

大学入学共通テスト「生物基礎」を解いてみよう——教科書をちゃんと読もうねという話

週末は大学入学共通テストが開催されました。生物系のサイエンスライターだし、せっかくなので生物科目の問題を解いてみることにしました。果たしてサイエンスライターと名乗るにふさわしい点数を獲得することができるのか!?(センター試験時代から12年連続使っている文章のコピペ)

文系志望が解く生物基礎この記事では、まず「生物基礎」にチャレンジします。この科目を選択するのは、文系学部志望の受験生です。

生物

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【2022年ノーベル生理学・医学賞】3行と300字で簡単に、4600文で詳しくわかる解説

【2022年ノーベル生理学・医学賞】3行と300字で簡単に、4600文で詳しくわかる解説

2021年のノーベル生理学・医学賞は、ドイツのマックス・プランク進化人類学研究所所長・沖縄科学技術大学院大学(OIST)教授のスヴァンテ・ペーボ氏(Svante Pääbo)に授与されることが発表されました。

受賞理由は「絶滅したヒト族のゲノムと、ヒトの進化に関する発見(for his discoveries concerning the genomes of extinct hominins

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