あさがすきなひとへ。
高校生になって、朝がすごくすごく早くなった。
冬は本当に真っ暗で、真夏になると明るくて、
初夏の今は電気を付けなくても部屋の中が見渡せるくらい。
5:30 am。
入学したての頃は目覚まし時計の鳴るこの時間が
鬱陶しかったのだけど、今はちょっと好き。
どうしてこんなに早起きなのかかというと
朝型の人を目指してるとか
にわとりと牛の世話をしているとか
そういうことではなく
バス通学生だというただそれだけ。
私を毎日学校まで送り届けてくれる「しまバス」は
奄美大島唯一の路線バスで、
運転手さんたちのお揃いの大島紬柄シャツがかわいい。
6:30 am。
バスに乗ってしゅっぱつ。
毎日同じ速度で、同じ田舎道を、
顔馴染みの運転手さんと一緒に通学する。
たいていの高校生は寝てしまうのだけれど
起きているとちょっといいことがあったりして。
バス停を発車して10分。
内海の港が見える。
しーんとした水面が好きだ。
港の中に舟漕ぎ大会の折り返しブロックがみえて、
夏休みが楽しみになったりする。
それから15分くらい走る。
山を抜けて開けた空に、朝焼けが見えたりする。
奄美で人気のホームセンターはまだ開店前で
その大きくて平たい建物の上に
広がっているオレンジ。
それでそれで…
7:00 am。
気がついたらもう市街地にとうちゃく。
ちょっとだけ眠っちゃってた…って内緒。
市街地に着いたら、奄美の中では長い、海に架かる橋がある。
バスはこの橋を渡らないで、
学校のある街中に進んでいく。
でも少し離れたところから見るのも好き。
さっきまでは奄美の朝の無音感がすてきだったけど
ここからはイヤホンをオンにする。
大都市で見られるかっこいい高速道路や強そうな橋はなくても、
ぴかぴかの海に架かる橋を見ながら音楽を聴くと
ちょっと良い高校生の気分になれる。
7:15 am。
ここでバスは降りる。
学校まで少しだけ歩く。
友達と眠いねって言い合いながら
学校近くの川の横を通ると
「ぬし」に会える。
真っ黒でにょろにょろでかわいいぬし。
たぶんおっきいうなぎ。
食べられるとか食べられないとか。
すぐ料理しちゃおうとするのも奄美だなって思う。
こういう意味の分からない生き物に会えるのも好き。
もはやいろんな生き物に囲まれすぎて
「ぬし」は「ぬし」のままにしておく。
それから学校の門をくぐって
こんな蒸し蒸しの奄美にぴったりの校舎だとか
でも虫虫でちょっとやだとか
びっくりするくらいどうでもいいことを話し
ながら教室に着いてこれで私の朝はおしまい。
島では車がないと生きていけないっていうのはほんとうだけど、
こんな風にバスに乗ったり歩いたりするのは
きっと今だけ。だからこの時間を好きでいる。
7:30 am。
おはよう。
みなさんもいいあさを。
きくらげより
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?